その61 二人の違い
俺は、少し思考にリソースが割かれていた。
感覚で迎撃しないと防げないと学んだはずなのに。
視界の端に、光が見えたはずだった。
だが、俺は反応が遅れた。
ドッゴォッ!
俺の体は、ゴミのように吹き飛んだ。
「がッ…ッは…!」
周囲が、血の匂いで満たされる。
吐血したんだ。
遅れて、体に衝撃が伝わってくる。
左半身、特に腹部が強く痛む。
立つのがやっとだ。
なにが、起きた?
・・・いや、頭ではわかってる。
横から出てきた腕を認識するのが遅かった。
防御もできずに、無防備なところに喰らった。
・・・まずいな。
すぐに追撃がくるだろう。
備えないと…
「ッぐ…」
脇腹が激痛を訴えてくるが、無視して俺は刀を構える。
その直後、アルトが現れた。
「もう限界かぁ?まあ当たり前だ。相当戦闘してるもんなぁ?」
アルトは、追撃もせず話しかけてくる。
「ああ…楽しいなぁ…これで、俺はまた価値を証明できる…強者を、打ち倒すことで…」
チッ。
どんな考え方してんだよ?
強くなきゃ、強い奴に勝たなきゃ、価値がないとでも言う気か?
・・・わからないな。
「最初は接戦を演じるため、手加減して正解だったな…最初から本気だったらすぐに決着がついてしまって味気なかった。」
「現実離れし過ぎた強者は、どうもそこまで人気がないみたいでなぁ…やりにくい。」
「・・・だが、おまえは強い、俺が本気を出していい相手だ。」
・・・やっぱり、コイツと俺は違う。
アルトはどこまでも自分勝手で、自分のために戦う。
でも、俺は違うんだ。
そのために戦ってるんじゃない…
「あのガキくらいか…他にマシだったのは。それでもマシだっただけの雑魚だったが。」
ッ!
コイツ!
やっぱり、翔のことを!
アルトと戦った中で見た目が子供なのは、翔だけだ!
・・・舐めるなよ…!
アルトに、思い知らせてやる!
俺たちの、強さを!
そう、俺が考えていると。
前方に、今までより明るく、大きな光が現れる。
まさか…
俺は身構える。
そこに現れたのは、巨大な…巨大すぎる腕だった。
あの腕のサイズより、さらに大きくできたのか…!?
「・・・終わりだ。ユウキ。まあ、楽しめたぞ?」
巨大な腕が動き出す。
だが俺は、迎撃に動くでも、回避しようとすることもなく、ただ、深呼吸をした。
・・・ふぅぅ…
ミシッ…ミシミシ…
なにかが軋むような音が聞こえる。
結局、こうなるのね。
反動が嫌で、いつか翔も巻き込んで、怪我させてしまいそうで、使わないようにしていた。
言い方を変えれば、手加減ともいえるな。
その点で言えば、アルトと俺は同じだ。
・・・ただ、俺はあんな目的のためじゃない。
翔のために封印してたんだ。
空間の裂け目。
また、使おう。
バギッ!バリバリバリィィン!!!
空間が割れ、終わらせる音が響く。
そこには、大きな空間の裂け目が出来上がっていた。
アルトの使う拳ほど大きなそれを、俺を守るよう前方に作り出した。
「ッ!?」
異様な雰囲気を感じたのか、あの腕は止まる。
アルトにダメージは…通ってないな。
でも、腕にはひび割れっぽいのは出来てる。
腕自体には効いてるってことだ。
つまり…アルトの近くはなにかに守られてるんだろう。
でも、この前の試合で投げナイフがアルトの頬を傷つけてたんだよな。
これは勘だけど、アルトの近くだけ重力とか、次元属性とか一部の攻撃は効かないんだと思う。
少なくとも、俺はそう思う。
・・・だけど、それを付与した直接攻撃ならどうかな!?
俺は、躊躇いなく刀を裂け目に入れた。
もちろん、腕ごとだ。
「・・・ふっ…」
激痛を訴える箇所が増える。
だが、もはやこれは誤差だ。
今はただ、勝つことだけを…
俺は腕を引き抜く。
青く、煌めく腕と刀。
俺はそれに満足し、飛び上がる。
そのまま、重力磁場で静止する。
空中の方がやりやすい。
だって、本体を狙いやすいから…!
俺はアルトに狙いを定め、腕を振り上げる。
「逃がさん…!」
アルトは、俺が逃げようとしてるとでも思ったのか、腕を動かして俺を狙う。
その時、俺の狙いの軌道上に、腕が重なり、止まった。
それなら…
真っ正面から力比べと行こうじゃないか。
「これで、死ねぇぇ!」
アルトは声を張り上げ、巨大な腕は俺を殴ろうと動き出す。
はぁぁ…
息を吐き、目を閉じ、集中する。
刀が最もパワーを出せる位置まで、待つ。
イメージしろ。
一刀で、全てを両断する。
勝って、翔と賞金を持って帰る。
・・・今だ!
刃烈波!
振り下ろされる魔鱗刀は、俺が最も力を入れられる角度で巨大な拳と接触する。
ガギャァ───
そして、重力磁場最大出力!
全ッ力で、刀を振り下ろせ!!
「はぁぁぁぁ!!!」
ギィン…ギィン───
「優樹。」
なぜか、頭に翔の声が響く。
勝て。
そう言われた気がした。
・・・ああ、そうだな。
俺は、勝つ!
───ッズッバァァァンッッ!!!
・・・斬った…
そう思った瞬間、俺は地面に落ちた。
それと共に…
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
この世のものとは思えないほどの痛みが俺に襲いかかってきた。
反動だ。
だけど、ボロボロの状態で使ったせいで、痛みが酷い。
・・・立てるわけが、ない。
だが、俺は地面に這いつくばった状態で、ほぼ真っ白な頭を回す。
「ぐううううう…」
動、け…!
白飛びする視界の中、巨大な腕が真っ二つに割れている様子を最後に見たからだ。
これで…アルトは、もう抵抗できない…
なら、もう終わりか?
・・・まだだ。
トドメを、刺さないと。
そこまで、耐えろ…俺…
見えなくても、進め…!
あと、一撃を…!
「決──────者───ユ──────」
なにか、雑音のようなものが聞こえ───
俺は───




