その60 魔鱗刀
なんだ…?
この刀…?
急に上から降ってきたけど…
アルトの攻撃…ってわけじゃないよな。
そもそも、このタイミングで降ってくるわけがわからない。
俺は刀に近づく。
・・・これは…
・・・綺麗な刀だ。
第一印象は、それだけだった。
片刃で、反りのある刀身。
その刀身は反射光で煌めいている。
刃は薄く、切れ味は想像もできない。
鍔はないが、柄が少し長めで、両手で振るうのに十分なほどだ。
「ん?」
ふと、刀の柄に紙がついていることに気づく。
・・・え!?
これって…!?
そこに書いてあったのは…日本語だった。
まさか…!
「翔…?」
もし本当にそうなら、と俺は懐かしい文字を読む。
そこには、こう書いてあった。
『優樹、使って!』
そう、これだけだ。
たったこれだけ。
だけど、俺には十分だ。
・・・翔、伝わったぞ。
この刀、使わせてもらおう!
俺は、刀の柄を掴む。
そして、鑑定を発動した。
鱗魔の剣
武器名:なし
作成者:ミリル・マデリミア及びガルダ
ステータス
耐久力:11075/11075 攻撃力:8328 防御力:23924 魔力伝導力:1647
技能
{断裂属性}{貫通属性}{重力属性}{耐久力大強化}{攻撃力大強化}{防御力超強化}{攻撃転換}{防御転換・極}
久々に見る画面。
それは、鱗魔の剣だったのだ。
ああ…なるほど!
わざわざ、持ってきてくれたのか…
・・・ありがとう。
俺は刀を構える。
右側前方に、光が見えたからだ。
でも、もう弱気じゃない。
やってみせる。
まず初撃、横薙ぎに刀を振り、拳を逸らす。
そして、全力で振り下ろす!
ガガガガガッッ!!
今までとは明らかに違う、食い込む感触。
このまま…!
もう一度、俺は腕を振り上げる。
今度こそ、両断するために。
刃烈波!
ズガガガッッ───
行ける…!
───ドッッガァン!!
巨大な腕が、宙を舞う。
少し時間を置き、血が溢れる。
俺が、腕を切り飛ばしたんだ。
だが、そんな状況で、俺は別のことを考えていた。
名前がないのも、さすがに味気ないな。
今、やっと俺の元に帰ってきたわけだ。
名付けようじゃないか…
『魔鱗刀』
そう、俺は名付けた。
血飛沫が舞う中、その名付けに、魔鱗刀は静かに応えていた。
・・・よし。
これで俺は万全!
これなら、勝てる!
そう思った瞬間。
「・・・ははははッッ!!」
笑い声が聞こえた。
「楽しいなぁッ!俺が求めていたのは!こういう戦いだよ!」
アルトだ。
その姿は、一方の腕がない状態だった。
あの腕の損傷は、本体に反映されるのか。
なら、だいぶ有利になった。
まあ、それはそれとして。
コイツ、急に饒舌になったな?
自分が劣勢なのわかってるのか?
腕一本斬られてるんだぞ?
・・・いや、劣勢だからこそか。
わかるぞ、不利な状況を覆した勝利が気持ちいいの。
「ユウキ…だったか?おまえもそうだろう?雑魚共に価値なんかない!そんなことより、強者との戦いにそそられる!」
それは、そう…
だけど。
俺は口を開く。
「・・・そうかもしれないな…」
「そうだr ───」
アルトの言葉を遮り、俺は続ける。
「けど、俺はおまえとは違う。」
「ッ…!」
俺の体は、静かに怒気を撒き散らしていた。
理由?
そんなのわかり切ってるでしょ?
こいつの言う雑魚共、それにはたぶん翔も含んでる。
翔を雑魚扱いするなんて、許せない。
それに、こいつは雑魚に価値なんかないと思ってる。
俺は、拳を握り締める。
翔に、価値がないだって?
なにも知らないくせに…!
・・・たしかに俺は、楽しんで戦っている。
それは否定しない。
けどな。
俺は今、翔のために戦ってるんだ。
戦う理由、その人を否定されたら、キレるのは当たり前だろ。
「・・・そう言うなら、俺に勝ってみせろよ!?出来るものならなぁ!?」
・・・言われなくとも!
俺はアルトに向かって走り始める。
だが、視界内にあの光が見える。
ガギィン!
俺は、即座に足を止め迎撃する。
すると、またすぐに光が見え、腕が現れる。
おー、ペースあげるねぇ。
ガギィン!
さらに弾く。
・・・?
・・・なんだ…?
ガギィンガギィン!
腕の出てくる速度が、上がって…!?
なんだ!?
なにをした!?
アイツもう腕一本しかないんだぞ!?
それなのに、二本の時より早い!
再生でもしたのか!?
そう思いアルトを見るが、腕は一本のままだった。
違うのかよ!
じゃあ、なんで!?
考え続け、一つの答えが出る。
・・・手加減してた…?
でも、なんのために…?
俺は、アルトに得体の知れない恐怖を感じた。




