その59 逆転の糸口
ドゴォォォン!
轟音と共に、砂埃が舞う。
「おおっとぉ!アルト選手の『腕』だぁ!ユウキ選手…まさかやられてしまったのかぁぁ!?」
司会の実況と、観客の歓声。
それが響く中、視界が晴れる。
そこには、巨大なクレーターと…
「ユウキ選手だぁぁ!・・・なんと!無傷、無傷です!あの『腕』を耐えたというのか!?」
優樹が立っていた。
「はぁ、はぁぁ…」
危なかった…
拳が見えた瞬間、考えを打ち切って即迎撃体勢に入ってよかった。
それでも、逸らすのがギリギリだった…
マジでどんな威力だよ!?
リミットブレイクしてないとはいえ、重力磁場を最大出力で載せた剣だぞ?
それなのに、ちょっと軌道を逸らしただけって…
あのステータスで出来る芸当じゃない。
絶対なにかある。
でも、それを考えるのは今じゃない。
先にやるべきは、どうやって勝つか、それだけだ。
唐突に、後ろから巨大な腕の気配を感じる。
空間感知だ。
即座に振り返り、剣を振る。
ガッギィィン!
剣と拳のぶつかり合う音が響く。
あっぶねぇ!?
ギリギリ逸らせた!
ほぼ勘だぞ、今の俺の反撃。
攻撃されたのをほぼ視認できてない。
それでギリギリってことは…
勘じゃないと防げない…ってこと!?
そら翔が勝てないわけだわ。
攻撃が、早すぎる。
考えてる暇なんかない。
感覚で───
ガギィィン!
防ぐ。
これしか方法がない。
ガギィン!
繰り返される攻撃。
思考の大半がその対処に割かれ、この状況を打破する手を考えることすらできない。
・・・ッ!?
防戦一方の中、二つ、腕の気配が生ずる。
二本目…!
同時に来る気か!
なら…こうだ!
剣戟球!
ガギギギィィィン!!
はぁ…!
危なかった…
クソ、一息つきたいのに…
ガギギギ───
攻撃は終わらない。
防御しかできない。
このままだとまずい。
どこかで攻撃に転じないと…
手数で押し切られる。
なにか、逆転の糸口は…
一瞬、思考する。
その思考で得られたのは、なにも思いつかないという事実。
ただそれだけだった。
・・・ああもうめんどくさい!
もうなんでもいい!
重力磁場!
「リミットブレイク!」
さらに、抜刀!
剣が、二本の腕と同時に接触する。
ガギギギギィィ───
これで、二本とも弾く!
え!?
そっからどうするんだ、って!?
知らん!
なんとかする!
おおぉぉぉりゃぁぁぁ!!!
───ガァン!!!
よし!二本とも弾き飛ばした!
ならこのまま…
俺は、前を見る。
すると、俺の真正面から拳が迫ってきていた。
ドゴオォォン!!
闘技場に、衝撃が響く。
これは、まずい…
ドガァン!
俺は、壁に衝突した。
「カハッ…!」
口の中に、血の味が広がる。
咄嗟に防御したけど、勢いを殺しきれなかったんだ。
ただ…
見えたぞ…!
俺は、ニヤリと笑う。
俺の眼が、あるものを捉えた。
あの腕が現れる少し前、空色の光が見えた。
かなり小さくて、気のせいじゃないかと思うほど暗い光だったけど、俺は見つけた。
魔孔眼で、魔力を見たんだ。
そしてその直後、光の位置から腕が現れた…
つまり!
空色の魔力が見えたら、そこから腕が出てくるってことだ!
この情報はでかい。
相当楽になるぞ。
どこから腕が襲ってくるのかわかるんだから。
めちゃくちゃ余裕ができる。
攻撃するのも難しくないぐらい!
勝てる、勝てるぞこの戦い!
俺が、一人で興奮していると。
パキ…
なにかが割れたような音がした。
・・・ん?
なんだ、この音。
俺は、音がした手元を見る。
すると…
「・・・え?」
剣が、真っ二つに割れていた。
な、なんで…
・・・いや、当たり前か。
負荷をかけ過ぎた。
リミットブレイクもした。
防御した状態で俺が吐血するレベルの攻撃。
それを、真っ向から受けた。
だから、壊れても当然ではある。
ただ、ここで壊れるか…
タイミングが悪い。
こんな、これから逆転できるって時に…
あーあ、鱗魔の剣があればなぁ…
あれは、俺の全力を受けても耐えられる。
でも、武器屋のオヤジに託してるもんなぁ。
・・・ダメだ、たらればで話すのはやめよう。
でも、こっからどうやって勝つんだ?
今から武器を作れるような余裕はない。
だけど、武器なしで勝てる相手じゃないぞ…
え?
もしかして…詰み?
ここまできて!?
・・・いや、負けるわけにはいかない!
翔のためにも!
もうヤケクソだ!
武器なしで突っ込んでやる!
・・・よし、いくぞ!
そう、俺が気合いを入れた瞬間…
空間感知が、上から落ちてくる「なにか」を捉えた。
即座に地面を蹴り、離れる。
攻撃に備えるためだ。
だが…
落ちてきたのは、一本の刀だった。




