その39 託されたもの
ここ…どこだ…?
俺は…何を…?
わからない…
ただひたすら…
冷たい。
そして、寒い。
どうしたらいい…?
頭が回らない…
俺は…死んだのか…?
・・・いや、そんなはずは…
「──。」
・・・?
今…
何か…
「─樹。」
俺、呼ばれてる…?
誰に…?
「優樹。」
ああ…
翔か…
すぐ近くに翔がいることに気がつく。
そして、俺の体が徐々に暖かくなって行く。
翔が暖めてくれたのか…?
そして、翔は離れて行く。
俺の、手の届かないところまで…
待ってくれ、行かないでくれ…
ここはどこなんだ、なんでここにいるんだ…
翔…
完全に翔が見えなくなる。
ああ…
また、体が冷たく…
・・・ん…?
なんか、どんどん暖かくなって…?
「優樹。」
また、翔の声が聞こえた。
でも、近くに翔の姿は見えない。
どこにいるんだ…
「信じる。」
信じる?
なんの話…
ん!?
カッと、体が熱くなる。
それと同時に、今までのことを思い出す。
ああそうだ。
俺は…
「はっ!」
目が覚めた。
そして、「二つ」の気配を感じる。
俺は、寝起きの体に鞭を打ち、気配のところへ向かう。
急げ!
手遅れになる前に!
たぶん、あれだな。
一瞬で目的の場所に着く。
翔!と、風王龍…!
そこでは、今にも翔が風王龍に叩き潰されそうになっていた。
「させるかぁあ!」
ガギィィィィイン!!!
翔と風王龍の間に割り込み、攻撃を受け止める。
「翔!遅くなった!」
「優樹…」
翔がへたり込むのがわかる。
どれだけ綱渡りの戦いだったんだ…
翔、ボロボロだもんな…
「後は、託した。」
「・・・おう。任せて。」
翔、大丈夫かな?
まあ離れて戦闘しよう。
さあ、風王龍。
第二ラウンド、開始だ。
「グルルルルルル…」
風王龍が唸る。
翔との戦いでかなり消耗したんだろう。
腹に槍、突き刺さってるもんな。
対する俺はなかなか回復…てか傷、なくね?
俺、腕ボロカスになったあと、かなりの高度から叩き落とされたよね?
なんで…って、そうか。
・・・翔か。
ほんとに翔には頭が上がらない。
俺を何回も助けてくれて…
その翔に託されたし、この戦い、負けるわけにはいかない。
そう考えていると、風王龍が突進してくる。
相当速度落ちてるな…
俺でも見える速度だもんな。
まだ相当早いけど。
突進に合わせ剣を振る。
ガギギギィィィィィン!!!
つっよ!?
翔を守ったときの攻撃より、断然重いぞ!?
とりあえず衝撃を流す。
それにしても、なんで急に強くなった?
もしかして、翔にだけ手加減してた…?
いや、それはないな。
全く意味がない。
じゃあなんで…?
って、そんなこと考えてる場合じゃない!
風王龍が翼を広げる。
また上に上がる気だ。
なんとか阻止しないと!
またあの戦いはしたくない!
でもどうする?
・・・そうだ。
翼を切り裂けば!
なら…刃烈波!
力を込め、剣を振り下ろす。
ブオン!
刃烈波の飛ぶ斬撃と、オートで発動できるようにした波動、それらが重なり、斬撃が加速する。
ズッバァン!
よし!
斬れた!
これで…!
「グオオ、グオオオッ!」
計画通り…!
飛べなさそう!
これであの不利すぎる空中戦をしなくていい。
助かった。
これで地上戦に持ち込める。
地上戦だとさすが俺の方が強い…といいなぁ…
風王龍が翼を奪われ、なんとか飛ぼうと足掻いている中、先に攻撃を仕掛けたのは俺だった。
魔人化とリミットブレイクを使い、風王龍の胸、心臓のあたりを攻撃しようと動き出したのだ。
なんで空間の裂け目を使わないんだって?
また反動を受けて動けなくならないようにだけど?
もう一度あの反動で動けなくなって敗北、なんて翔に申し訳が立たないから…
「ふっ!」
走って…跳ぶ!
体を回して…剣を胸に、突き刺す!
地鳴剣・体!
ガギギッ、ガガガッガガガガガ───
っく!
王鏡鱗貫通出来なかった!
まあ仕方ないか。
貫通攻撃のレベル低いし。
俺は反射と反撃を恐れ、即座に重力磁場で離脱する。
そして、攻撃に来てないことを確認するように後ろを向く。
「グオオォオ!」
そこには、突進してきて前足を振り上げている風王龍がいた。
うおおお!?
まずい!
横に、跳べ!
ギリギリ、ギリッギリ回避成功!
ここで追撃されると辛い…から来ないで…
そう考えたすぐ後、風王龍の尾が振り下ろされる。
まあそらぁ来るでしょうね!
回避は…
出来ないな。
受け止めるぞ。
抜刀!
ガギギギギギギギ───
重い…!
弾けないし、流せない…!
攻撃ステータスでは勝ってるはずなのに…!
俺が、単純な質量で押されてる…!?
こんなこと今までなかった。
仕方ない。
空間の裂け目…使うか。
位置は…風王龍の尻尾の近く!
ミシッ…バリバリバリィン!
「グオオオオオオオッ!!?」
よし!尻尾どいた!
バックステップ!
撤退!
かなりの間投稿してませんでした。
ごめんなさい。
連日投稿の予定です。




