その38 俺はまだ本気を出してないぜ?
なっ…!?
なんだこれ…!?
全方位から突風が吹き荒れ、俺の体にぶつかる。
空気に…殴られてるみたいだ…!
風が、強すぎる!
立っていられない!
「ゴハッ!」
全身に衝撃を受けて、俺は吹き飛んだ。
嵐の範囲外に出るが、勢いが収まらない。
ドゴン!
壁に衝突して、ようやく俺の体は止まった。
「優樹!?大丈夫か!?」
翔の姿が、すぐそばに見える。
翔の近くまで飛ばされたみたい。
「ケホッ!だ、大丈夫。軽症。」
「それならいいけど…あの嵐に飛ばされたのか?」
「ああ。あれ、どうやって戦うんだ…?」
風王龍はいつの間にか嵐の上空に陣取っていて、降りてくる気配はない。
ただ、これ以上追撃をしてくる気配もない。
しばらく膠着状態だ。
嵐の中心にいるみたいだけど、高度が高すぎる。
攻撃を当てるには、重力磁場を使ってジャンプするしかないけど、嵐に入ったら吹き飛ばされるし…
どうしたもんやら。
「優樹、俺に任せてくれないか?」
「え?」
「あの嵐の中でも動きを制限されないよう、俺が風の動きを妨害する。だから優樹、行ってくれないか?」
「それをやってくれるなら、もちろん行く。」
「わかった、しばらく準備するね。」
翔がなんとかしてくれるらしい。
それなら、重力磁場を使って空中戦出来るかも。
でも、ほんとにあの、荒れ狂う嵐をなんとかできるのか?
そろそろかな?
「翔、用意出来た?」
「出来たよ。いつでも行ける。」
よし。
「翔!やってくれ!」
「わかった!」
ゴゴ、ゴゴゴゴッ…
おお?
嵐が、裂けて行く…?
「優樹!今だ!行ってくれ!」
「おう!わかった!」
俺は走り出し、翔が作り出した嵐の裂け目に入る。
おお…!
さっきとまったく違う…!
風は吹いてるけど、突風じゃないし、動きに影響はない。
ここまで風を抑制するなんて、翔はやっぱりすごい。
これなら余裕で戦える!
まず、風王龍のところまで行かないとな。
重力磁場で無重力にして、思いっきりジャンプ!
ビュン!
一瞬で上空を旋回していた風王龍の眼前に迫り、剣を振る。
ガギャァン!
くっそ、弾かれた。
魔人化と重力磁場でも破れないか…
硬すぎない?
たぶん、王鏡鱗のせいだな。
王鏡鱗: 表皮に強力な鏡の鱗を隙間なく生成する。鱗は衝撃を吸収、増幅し、その後解放する。魔法攻撃を受けた場合、増幅し、反射することが可能。
単純な鏡鱗の強化スキルだな。
こっちの攻撃を増幅して反射するとか、無法すぎる。
ま、鏡鱗の対策はもうある。
通用するだろ。
いつも通り、鱗を落とす!
剣を鱗と鱗の間に…
間…
隙間なくね?
え?
どうすんの?
そんなことを考えている間に、風王龍は動き出していた。
「ッ!?」
ガギギギギィン!
風王龍の、その大きな爪で俺に攻撃を繰り出してきた。
咄嗟に剣で防ぐが、空中で勢いは殺せず、吹き飛ばされる。
ドゴォン!
また、壁に衝突する。
くっ!
結構飛ばされた!
運良く嵐には突っ込まないで済んだ。
すぐ戻らないと!
重力磁場で風王龍のもとに戻る間に、考える。
王鏡鱗を破る方法を。
鱗落としは出来ない。
隙間がなくて、剣を入れ込めないから。
つまり、真正面から突破するしかない。
そのためには…
まぁ、リミットブレイクだろうな。
これがないと戦えない。
「リミットブレイク。」
とりあえず、リミットブレイクをしておく。
これでも火力が足りない可能性もある。
空間の裂け目、使うか。
よし。
ミシミシッ…バリバリバリィン!!
空間の裂け目を作り出し、腕ごと剣を入れる。
「ぐううううっ…」
痛い…
だけどこれを使わないと…
勝てない。
痛みを堪え、裂け目から腕を引き抜く。
「はぁ、はぁ…」
これで…完璧。
通用、するはず。
行くぞ。
風王龍のところに、そろそろ着く。
攻撃の用意だ。
なにがいい?
抜刀か、一閃か?
それとも剣戟球?
いや、これだ。
風王龍が見え、俺は剣を振り上げる。
「ふぅーー。」
深呼吸をして、思いきり剣を、振り下ろす!
刃烈波!
刀剣術Lv10:刃烈波
刃烈波:剣を大上段に構え高速で振り下ろし、高火力の斬撃を飛ばす。
俺の前方に斬撃が高速で飛び、風王龍に命中する。
ズゴガァン!
「グギャオオオォォン!!」
右の後ろ足が切り飛ばされ咆える。
効いてる…!
これならいけ───
「くっはっ!?」
!?
なんだ、これ…!?
腕が…痛い…!
空間の裂け目に入れた時より、もっと…!
何だ?何をされた?
それを知るために風王龍を見るが、痛みに苦しんでいる様子しか見えない。
何も、されてない?
じゃあ、何が…
まずい。
何も思いつかない。
何か、何か情報は…
俺は今、何をした?
魔人化、リミットブレイク、空間の裂け目、その他強化スキルを併用して…
・・・ああ、一つ思いついた。
反動だ。
俺の、攻撃力が高すぎて、体がついてきてないんだ。
攻撃力は実質三万越え、もはや四万に届きうるほどなのに防御は一万、どれだけ強化しても一万二千止まり。
反動が出るのも当然だろう。
そういえばリミットブレイクと空間の裂け目の併用はしたことがなかった。
だからだろう、これに気づかなかったのは。
めちゃくちゃ痛い…
動けない。
と、俺が激痛に動けないでいると、風王龍が、動き出した。
「グオオオオオォン!」
っ!
まずい!
風王龍が突進して来てる!
なんとか、防がなきゃ。
「あああああああ…」
痛みに声を上げながら、剣を構える。
ガギィン!
「っくあっ…」
…
はっ!
一瞬意識飛んでた!
痛みが限界突破してたからだと思う。
まだ、体が上手く動かない…
そんな状態の俺に、無慈悲にも上から爪撃を叩き込んでくる風王龍。
俺の体は、無防備に攻撃を受け墜落する。
「ぐはっ!」
痛い、痛いよ…
でも、まだ復帰できる。
重力磁場で重力を反転すれば…
っ!?
重力磁場を操作しようとしていた俺の視界に最後に映ったのは、巨大な龍の尾だった。
ドッゴォォォォォン!!!




