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最狂最悪の魔王の孫に転生しました。  作者: 暇凡人T
一章 迷宮編

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K-その4 「ヒーロー」


 「翔。」

 

 父さんに呼ばれて振り向く。

 

 「私たちは少し、おばあちゃんとお話しするから、公園で遊んでおいで。場所はわかるね?」


 俺、いや、「僕」は頷く。

 

 「しばらくしたら帰っておいで。」


 僕は祖母の家から外へ出る。

 あまり見慣れない風景の中歩き出す。

 それから、何度か訪れた公園へと辿り着く。

 その何度かは祖母と一緒だったことを思い出しつつ、一人、ブランコで遊んでいた。

 


 しばらくすると、他に小学生らしき子が集まってきていた。

 集まる約束でもしていたのだろうか?

 そう思いながら、まだブランコに揺られていた。

 その小学生の集団が近づいてくる。

 集団の中の一人が口を開いた。


 「おい!ちょっとそこどけよ!」

 

 急にそんなことを言われたものだから、咄嗟に首を横に振ってしまった。

 

 「ああ!?なんでどかねーんだよ!」

 「そこはいつも俺らが遊んでんだ!」

 「そーだそーだ!」

 

 集団に詰められ、気づいたらブランコから降りていた。

 いや、「降ろされた」というのが正しいか。

 

 「おい!おまえのせいで遊ぶ時間減ったじゃねーか!どうしてくれるんだよ!」

 「おまえ、俺らのこと舐めてんの?」

 「おーい!みんな!こいつボコボコにしようぜー!」

 

 周囲を囲まれ、暴言を浴びせられ、僕は泣いてしまった。

 殴られそうだと思い、しゃがみ、俯いていた。

 早く帰りたい、なんて考えていると。

 

 「弱い者いじめはやめろよ。」


 誰かの声がした。


 「なんだよ、こいつが──」

 「なんかしたのか?」

 「・・・してないけど。」

 「ならやめろ。」

 「やーだねー!」

 「遊び入れてやんねーから!」

 「お、おい!」

 「くっそ、あ、大丈夫?」

 「グスッ、うん。」

 

 顔を上げた。

 そこには、幼い優樹が居た。

 ・・・いや、ここで知り合ったんだったな。

 優樹は忘れてたけど。

 

 「なんでいじめられてたの?」

 

 優樹が問う。


 「ブランコに乗ってたらどけって言われて、、、」

 「あー、もうわかった。大丈夫、君は悪くない。」

 「そうなの?じゃあ僕も聞いてもいい?」

 「いいよ。」

 「なんで助けてくれたの、、、?あの子たちと友達じゃないの、、、?」

 「友達。だけどいじめるのはダメだからな!」

 「それだけ、、、?」

 「そうだけど?」

 

 ああ、そうだったな。

 ここで優樹に憧れたんだ。

 懐かしい。

 まるで物語のヒーローみたいに見えたものだった。

 

 「君、一人で遊んでるんだったら一緒に遊ばない?」

 「え?」

 「しばらくあいつらも戻って来ないだろうし、俺も暇なんだ。嫌だった?」

 「全然。でも、いいの?」

 「おう!なにする?」

 「じゃあ───」


 視界が白くなっていき、場面が切り替わる。



 

 ざわざわ、、、


 ここは、、、中学の入学式か。

 入学式が終わって、教室へ移動し始めたぐらいかな。

 ということは。

 いた。

 優樹だ。

 

 「よろしく!」

 「えっ、あ、よろしく。」

 

 話しかけてみるが、あまり芳しくない反応を受け取る。

 当たり前だ。

 優樹は僕、いや、「俺」のことなんて覚えていなかったのだから。

 当時はショックだったけどな、、、

 ここから、優樹と俺は本格的に関わり始めた。

 最初は、心の中で肥大化していた「ヒーロー」の虚像に振り回されて、現実の優樹との乖離に失望していたけど、優樹はそこまで変わっていたわけじゃないと思う。

 俺が過度に期待しすぎていたんだろう。

 だが、憧れはかなり薄れていた。

 優樹と行動を共にする中で、俺とはかなり違う思考なんだろうと気づいていた。

 ただ、俺は気づいた。

 優樹は、俺に足りないものを持っている。

 例を上げると、緊急時の判断力や、決断の早さ。

 特に、やることを考えてから行動に移すまでがとても早い。

 それで問題を解決したときもあったな。

 今考えると、俺が助けられたときも、俺が囲まれて泣いているのを見て、反射で動いたんじゃないだろうか。

 俺には、それが足りない。

 何をやるにも考えすぎてしまう、とよく言われる。

 それが役に立つときもあるんだろうが、そこまで実感はできない。

 自分にできないことを感覚で出来る優樹に、また憧れるまで時間は掛からなかった。

 


 優樹を助ける。

 それが目標になるくらいには憧れがあった。

 親友として行動する中で多く助けられて、その度気持ちが大きくなる。

 そんな生活を送っていた。

 すると、転生した。

 両親のこととか、原因とか、考えるべきことは沢山あったはずなのに、転生後、最初に思い浮かんだのは優樹のことだった。

 転生してからは、この世界でも優樹と出会うことを目指して動いていた。

 でも、もう無理だろうな。

 せっかくのチャンスを捨てたようなものだ。

 転生して優樹に頼られることができると思ったのに。

 会うことすらできず、か。

 ああ。

 そうか。

 これは、走馬灯なんだな。

 こんな後味の悪い走馬灯、見たくなかったけどな。

 そろそろ目を開けよう。

 現実を見よう。

 だって、幻想を追うのは違うだろう。

 だから、、、


 「翔!」


 優樹、俺を呼ぶな、、、


 「翔!!!」


 走馬灯が途切れる。

 無理矢理に目を開ける。

 そこには、、、

 大蛇の尾に剣を突き立てている、人影が見えた。


 「翔!!!!!」


 おかしいな。

 走馬灯は終わったのに、俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。


 「優樹、、、か、、、?」


 ああ、口に出してしまった。

 こんなところに優樹がいるはずもないのに。

 だから、これから先のことは、俺の妄想だろう。


 「ああ!助けに来た!」

 

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