Y-その3 いつも通りの一日
俺はいつも通りに学校に着いた。
「おっす颯太。」
「おっす。昨日勉強した?」
「いやそんなに、なんで?」
「今回のテスト範囲教えてくれないかなって。勉強しろって親に叱られてさぁ、、、」
「あーいいよ、確か、、、」
たわいもない会話。
チャイムが鳴ったことで、それに終止符が打たれる。
「もうこんな時間か、もう先生来そうだし後でな!」
「へいへーい。いつでも待ってるぜ〜。」
先生が来て、ホームルームも終わり、授業が始まる。
「ここの公式が───」
授業を受けていると、眠くなるものだ。
うとうととし始めたので、他に目線をやる。
皆それぞれ授業を受けている。
こっそり話をしている颯太。
そこだけ聞くとクラス全体が不真面目なのかと思われるかもしれないが、そんなことはない。
しっかり話を聞いている人も、、、
うん?
あれは、、、スアン?
なんでここに───
目が覚めた。
前世の夢、か。
転生してから数年は何回も見たけど、最近は見なくなってたのにな。
ただ、前世の夢にスアンが出てきたのは初めてだな。
俺もこっちに染まってきてるってことなのかな。
って、そんなこと考えてる場合じゃない。
もうこんな時間だ。
今日も訓練があるんだからさっさと訓練場に行かないと。
訓練場に着いた。
見ると、スアンが待っている。
「おはようございます、ユーリオン様。」
「ああ、おはよう、スアン。」
「本日も戦闘訓練を行います。昨日お教えしたことを覚えていますか?」
「えっと、命闘法、魔闘法、技闘法だよね。」
「仰る通りです。昨日は習得のみで訓練を終えましたが、本日は活用法についてお教えしたいと思います。」
「わかった、お願いします。」
「まず、これらの闘法は、攻撃、防御、速度のステータスを上昇させる効果を持ちます。」
「そしてそのかわりに、命闘法なら生命力、魔闘法なら魔力、技闘法なら技力を、それぞれ消費します。」
「この消費が激しいため、常時発動させるには向きません。」
ふむふむ。
つまり、、、
「ここぞ!という時に使えばいいんだね。」
「仰る通り。ですが一つ、注意点がございます。」
なんだろう?
「命闘法と、魔闘法技闘法では、使い方が少し異なります。」
「命闘法は、生命力を任意の量消費して、五分間、その分ステータスを上昇させます。」
「ですが魔闘法と技闘法は、継続的に魔力や技力を消費し、ステータスを上昇させます。」
「つまり命闘法は自身で使用量を決められますが、魔闘法と技闘法は固定だと言うことです。」
なるほど?
説明を聞く限り命闘法の方が小回りがきくけど、他二つには安定感があるってこともありそう。
「この違いを意識して使用しないと、痛い目を見ます。」
「実際私は一度、これのせいで死にかけています。」
え?
「大丈夫だったの?」
「ええ、なんとかなりました。」
なんとかなったって、、、
「そんなことより、訓練です。実際にこれらを使用して模擬戦を行いましょう。」
「今回も、お相手させていただきます。」
「ああ、よろしく!」
カン──カカン───
訓練場に、剣と剣がぶつかり合う音が響いている。
「ふっ!はっ!」
ガァン!
「っ!」
よし!スアンの体勢が崩れた!
ここで、、、
命闘法、魔闘法、技闘法発動!
横薙ぎに!
「はあぁあ!」
ガガン!
よし、手ごたえあり!
!?
いない!?
ドゴッ!
「いっつ!」
足に衝撃が走る。
バランスを崩し、倒れる。
顔を上げると、木剣を突きつけられていた。
「降参!もう無理!」
「承知しました。早く!ユーリオン様に治療を!」
訓練場の近くに控えていた祈祷魔法使いが近づいて来る。
「治療させていただきます。」
足の痛みがだんだんなくなっていく。
「ふぅ、ありがとう。」
「もったいないお言葉です。」
いや、しかしなんで負けた?
手ごたえはあったのになぁ。
「ユーリオン様、油断、しましたね。」
「え?なんのこと?」
「横薙ぎに切ったときに手ごたえがなければ、そのまま振り下ろしに繋げるつもりだったはずです。」
図星だ。
そうしようと思ってた。
「うっ、そうだけど、なんでわかったの?」
「ユーリオン様の体の動きから予測しました。」
そんなことできるのか、そりゃ勝てないわけだ。
「油断は褒められたものではありません。あの状態なら振り下ろしも行っていれば、私は対応の幅が狭まっていました。」
「とにかくです、些細な油断が負けに繋がることを実感されましたか?」
「うん、わかったよ。」
「これでまた、勇者に近づきましたね。」
これだけのことで勝敗が決まるとはなぁ、、、
やっぱり戦闘は難しい。
「それでは、本日の戦闘訓練は終了とさせていただきます。お部屋へお戻りになってもよろしいですよ。」
「わかった、じゃあ先に戻るね。」
「承知しました。」
訓練場から自室へ向かう。
その途中で、思いがけない人物と出会った。
「ん?あれは、、、颯太か?」
使用人らしき人と歩いている颯太を見つけた。
颯太を呼ぼうとして、思い止まる。
俺たちは転生したことを思い出したからだ。
とりあえず名前だけ注意して接しよう。
「クルド!」
「うん?ユーリオン様、ご機嫌よう。」
なんかよそよそしいな。
「ユーリオン様だなんて、呼び捨てでいいのに。口調もなんか変だぞ?」
「・・・少し、二人っきりでお話ししませんか?トランはここで待っておいて。」
「ですがお坊ちゃま───」
「待っておけ。」
「・・・承知しました。」
しばらく歩き、誰もいない自室へたどり着いた。
「ふぅ、でなんで颯太そんなよそよそしいの?」
「あのなぁ、、、今の自分の立場わかってるのか?」
んん?
「どういうこと?」
「わかってないみたいだな。おまえは現女王の息子であり勇者の子、俺は一公爵の息子、しかも末っ子だ。」
「それが一度会ったぐらいで気安く話していいと思うのか?」
そういうことか。
前世の感覚があるからわかんなかったな。
それより。
「・・・颯太ってそんな頭回ったっけ?」
「いやでも考えるようになるだろ、こんな環境。」
「それもそうか。」
なにか、自然に接せるようになる方法はないかな?
・・・あ!
「というか、一度会っただけなのがダメなんだったら、関係を深めればいいんじゃないか?」
「というと?」
「颯太に城に来てもらって、俺の訓練に付き合うとかどう?」
「うーん。悪くないかも。」
よし!
「じゃあ明日から、この時間に来てくれ。」
「わかった、口調気をつけろよ!」
「わかってるってば。」
「じゃ、また明日。」
「おう。」
疲れでベッドに寝転がる。
転生すると性格が変わる、というのはあながち間違ってないかもしれないな。
環境の変化と不安で、適応しようと必死になるから。
颯太もそうなんだろう。
じゃあ、俺も変わってるんだろうか、、、
この世界に適応した方が勇者に近づけるだろうけど、そう変わったらそれは俺なのか?
答えは出ない。
このままだと変わりきれない。
中途半端だ。
こんな状態で勇者になれるのか?
なったとして、期待に応えられるのか?




