Y-その2 1人目
儀式から数週間が経った。
俺が自室でくつろいでいると、俺の部屋にすごい速度で近づいてくる気配を感知した。
ガチャ!
「ユーリオン様!条件に当てはまる方を発見しました!」
「本当か!?」
どうやら俺と同類かもしれない人が見つかったみたいだ!
「それで、その人は?」
「はい!えー、どうやら貴族の方のようで、最近鑑定の儀を行ったらしく、参加していた方たちから、『神名が奇妙だった。』との情報が入ったのです。」
「その方について調べた結果、『転生真導』という神名だと言うことがわかりました。」
ん?
奇妙だった?
そうか、俺の儀式に出た人が行ったわけじゃないのか。
神名に転生がついていても俺との関係があるかは分からないだろうしな。
俺はそこが同じと見て調べてもらってるけど、そこが違ったら、どう調べればいいんだよ。
「うん。で?」
「ステータスも異常な程高いとのことで、ユーリオン様と似ていると感じた者が大勢いるそうです。」
ああ。
ステータスがあったか。
普通はそこで見るんだろう。
「その方の名は────」
「クルド・ヴェルノートと申します。以後、お見知りおきを。」
この子か。
発見してから対談まですぐだったなぁ。
この子本当に5歳か?
所作が貴族のそれなんだけど。
まあこっちの世界ではよくあることらしいから、これだけで転生者か判断はできないな。
早く確かめたいんだが、それに立ちはだかるのは────
「ユーリオン・ダルコ・ウェルネスだ。よろしく。」
「頭をお下げになる必要はございません!こんな愚息に会って頂けるなど光栄の際みでございます!ユーリオン第三王子殿下!」
この人だ。
何故か呼んだ子の父親も来てるんだよ。
本当なんで?
「いや、俺が呼んだんですから頭下げるのが礼儀だと思いますが。ヴェルノート公爵閣下。」
「そんなこと関係ありません!あと、出来れば畏まらないでいただきたい。軍人上がりの身の上、粗雑に扱っていただくことの方が慣れているのです。」
ケイン・ヴェルノート公爵。
ほぼ平民と同じ下級貴族の次男に生まれ、軍隊に入り功績を挙げ、ヴェルノート家に婿入りし今に至る。
義理堅い人だと聞くけど。
「わかった。ヴェルノート卿。」
ヴェルノート公爵はまだ若干不服そうな顔で口を開いた。
「では、本題にいきましょう。何故、愚息をお呼びになったので?」
来た。
いきなりあなたは転生者ですか、なんて聞けるわけない。
だから、建前は考えておいた。
でもこんな大物を騙すような予定は無かったんだが。
無理かな。
「あー、それは、友になるためだ!」
「・・・は?」
やばい。
実際に言ってみると無理がある。
「城内には気安く会話できる友が居ないんだ。そんな時にクルド君が俺と似ていると言う話を小耳に挟んだのでな。会ってみようと思った次第だ。」
無理しかない。
すぐ転生の話に移るつもりだったからよく考えてなかった。
どうにかならないかな。
ならないだろうな。
「ふむ、なるほど。この愚息でよろしいのかは甚だ疑問ですが、殿下が望むのであれば息子を殿下につけましょう!」
あれ?
なんとかなってる?
なんでかわからないけどダメ押しだ。
「ありがとう。クルド君のことをよく知りたいのだが、しばらく2人だけにしてくれないか?」
「承知しました。」
「では、後ほど。」
ガチャ。
・・・よし!
思わぬ妨害があったけど、やっとこれでこの子が転生者かどうか確かめることができそうだ。
「じゃあ、改めてよろしく。さっそくだけど、『この言葉はわかる?』」
確かめる方法、それは言語理解のスキルを切っても言葉がわかるかどうかを見ればわかる、はず。
だって、もし一方に言語理解があるだけで会話できるなら、魔物の言語とかもわかってしまうはずだし。
この仮説は合っているだろう。
でも切ってすぐ戻さないと相手がなんて言ってるか分からなくなるから気をつけないと。
「わかりますが、それが何か?」
「よし、では言語理解を切ってみてくれ。」
「え?それは、、、わかりました。」
「『・・・切りました。』」
「『俺も君の言葉がわかるぞ。これが意味することはわかるか?』」
「『・・・まさか。』」
「『日本語。わかるよな。」』
「『はい。」』
「『じゃあ、踏み込んだことを聞くぞ?青凰中学校に通っていたか?』」
「『ああ。2年4組だよな。』」
やっと見つけた。
前世同じクラスだった仲間だ。
「『で?王子サマの元の名前は?』」
「『雪野洋平。君は?』」
「『はあぁぁぁ?おま、洋平かよ!敬語使って損したわー。』」
急に馴れ馴れしいなこいつ。
「『いや、だから君誰───』」
「『忘れたのか?傷つくわー。』」
ん?なんかこの姿、既視感が、、、
「『沖野。沖野颯太だよ。』」
「『颯太!?』」
転生して6年目。
前世の親友の1人と再会した。
「『颯太、本当に颯太か?』」
「『さっさと認めろや。正真正銘、お前の知ってる沖野颯太でーす。』」
「『だって俺の知ってる颯太はあんな丁寧な挨拶できないし。』」
「『おいおい、舐めんなって。』」
久しぶりに軽口が叩ける。
こんなに楽しいことはない。
「『ん?おーい。何泣いてんだよっ!』」
「『泣いてなんか、、、あれ、いつの間に?泣くつもりなんか、無かったのにな。』」
いつの間にか泣いていた。
安心だろうか。
「『颯太、、、俺、、、』」
「『まあまあ、そんな泣くなって。ほら、いないいないばあ。』」
「『ふざけんな。赤ちゃんじゃねーんだぞ。』」
「『よし、お前は笑っとけ。』」
「『なんだと。』」
「『・・・俺がお前の笑っていられるところを作るからさ。』」
「『なんて言った?よく聞こえなかった。』」
「『いんや。なんでも。』」
俺を俺として見てくれる。
それがこんなに嬉しいなんて、前世じゃ想像もつかなかったな。
「『これからよろしく、颯太。』」
「『ん?おう!』」
これからは、1人じゃない。




