その1 プロローグ
「はぁ」
俺は今日何回目かわからないため息を吐く。
俺の名前は矢島優樹。
どこにでもいる無気力な男子中学生だ。
俺は今人生に飽きている。
将来有望な中学生がそんなことを言うなと言われるかもしれないけど、有望じゃないからな。
勉強もできないし。
コミュ症だし、ぼっちだし。
いや、ぼっちではなかったか。
1人だけ親友と言えるような奴がいた。
親友の名前は岩田翔。
翔曰く、俺は飽き性なことだけ直せば余裕で生きていけるらしい。
それを言われた時、こいつは人を見る目がないなと思った。
翔は生徒会に所属していて、スポーツ万能で、勉強もできるし、教師からの信頼もあるし、陽キャたちからも一目置かれている。俺とは大違いだ。
なんで俺と仲良くしてくれるのかがわからない。
いや、ほんとになんでなんだろ?
思えば、初対面から馴れ馴れしく話しかけてきたし。
ほんとに覚えがない。
まぁそのうち飽きて離れていくんだろう。
少し話がそれたな。話を戻そう。
なぜ俺がため息をついているかと言うと、さっきも同じことを言ったけど、毎日変わり映えのしない人生に飽きていたんだ。
こんな時翔がいてくれたら愚痴でも言って少しはスッキリできたかもしれないけど、今翔はいない。
少しでも気を紛らわせるために、俺は幼馴染の方をチラッと見る。幼馴染は他の女子と話をしていた。
幼馴染の名前は松山愛香。
俺は小学生の頃こいつのことが好きだった。
別に失恋したとかじゃなくて、中学生になってから急に距離が遠くなって、今じゃ半年以上話もしていない。
小学校の時は毎日一緒に登下校していたのに。どうしてこうなった。
もう一度だけ言っておく。振られたわけではない。
俺は愛香の方から視線を元に戻す。会話の内容が気になるけど、さすがに盗み聞きはしない。
もう暇つぶしできるものはないから、翔が帰ってくるまで机で寝てようと思う。
寝てる間に授業が始まってたみたいだ。翔に起こされた。
「優樹、起きろ。そろそろお前当てられるぞ。」
「わかった。ありがと。」
翔は俺がそろそろ当てられることに気づいて起こしてくれたらしい。ありがたすぎる。ほんと俺にはもったいないくらいの気遣いのできる親友だよ。
俺は起き上がって前を見て、異変に気づいた。
景色が歪んでいる。
俺の目がおかしいのか?翔に聞いてみようとすると、体に激痛が走った。
体ごと前から叩きつけられたような激痛だ。
目が見えない、けど、腕が弾け飛んだ気がする。
俺は、あっさりと気を失った。
これで転生するとは、夢にも思わなかった。