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第18話 箱、開放

「やった、やったぞ。本当にレベル2になってる。夢じゃない、夢じゃない!」


 ユニスは喜びを爆発させた。彼のギルドカードには間違いなく『レベル 2』と表示されている。


「ユニスさん、よかったです。」

「ああ、お前・・・いや、プリシラのおかげだ。ありがとう。」


 ユニスはこれまでにない明るい笑顔を浮かべてプリシラに感謝した。

 ユニスの喜びようは、まるで3年分の苦悩や悲しみが鏡に写ってひっくり返って出てきたような、見ているプリシラまで嬉しくなるような、そんなユニスの姿だった。


「よし!じゃあさっそく箱から経験値を取り出すぞ!」


 ユニスは長い間の念願だった経験値取り出しをしようと、ギルドカードを操作し始めた。

 経験値は箱の登録変更もしくは魔力を1使うことで取り出せる。ユニスは魔力を使って取り出すことにした。

 魔力をタップして数値を「0」から「1」に変更する。


「・・・いくぞ。」


 それを合図に、ユニスは頭の中で「箱の経験値をすべて取り出す」と念じた。傍らではプリシラがかたずをのんで見守っていた。


 変化はすぐに訪れた。


「うお、何だ!?」


 ユニスの体には、快感とも掻痒感ともつかない何かが湧き上がり続け、それが終わるまでユニスはただひたすら違和感に耐えながらじっと待っていた。


 それは3分くらい続いただろうか、体の中の騒ぎが収まったユニスがハーッと大きく息を吐いた。


「なんだこの感覚は・・・。」

「それって多分レベルアップのときの感じですよ。」

「そうか、こんな感じだったんだな。」


 ユニスは自分の右手のひらを見ながら、感覚を確かめるように指を閉じたり開いたりした。


「普通はこんなに長く感じることはないと思います。一気にレベルアップしたから相当長かったんじゃないでしょうか?」


 確かに、他人のレベルアップの瞬間に何度か立ち会ったが、これほど長くはなかった。プリシラの言う通り、かなりレベルが上がったのだろう。どれほど上がったのか早速確かめるためにユニスはギルドカードのステータスに目をやった。


「おお・・・!」

「凄い・・・」


 2人は感嘆の声をあげた。


――――――――――――――――――――――――――――――

「ステータス」

名前:ユニス

ランク:E

職業:戦士

レベル:30

SP: 669


体力: 10/10

魔力: 0/1

知力: 19

筋力: 26

敏捷: 18

器用: 10

耐久: 17


能力

 剣術 LV3

 体術 LV2


特殊能力

 箱 LV7: 経験値(0)

――――――――――――――――――――――――――――――


「レベル30!こんなに上がるとは。」

「レベル30なんて、20年以上やっているベテランでようやくたどり着けると言われてますよ。10代でレベル30なんて見たことありません。さすがユニスさん、すごいです!」


 プリシラの誉め言葉に、ユニスは苦笑で返した。


「すごいのは俺じゃない。『箱』だ。俺はまだレベル30の器じゃない。」


 ユニスの言葉は決して謙遜ではない。レベルだけは30になったが、他のレベル30の冒険者に比べ技術と経験が圧倒的に不足していることを知っていた。これからユニスは、レベルの名目と実質の力量差を埋めるべく努力していかなくてはならない。


「だが、まあそれは将来の事だ。今はサイクロプスをぶちのめして、さっさとここから脱出しよう。」

「はい!」


 ユニスのステータスポイントは2人で相談しながら割り振りを決めていった。そして最終的にはこのようなステータスになった。


――――――――――――――――――――――――――――――

「ステータス」

名前:ユニス

ランク:E

職業:戦士

レベル:30

SP: 10


体力: 180/180

魔力: 30/30

知力: 100

筋力: 150

敏捷: 140

器用: 80

耐久: 80


能力

 剣術 LV3

 体術 LV2


特殊能力

 箱 LV7:登録  経験値(0)

――――――――――――――――――――――――――――――


 職業が戦士なので体力と筋力、それと敏捷を中心に割り振った。魔力は今回の事もあり、またプリシラから「初級魔法を覚えておくと何かと便利ですよ」という言葉もあって、30ポイント割り振った。またすべてを割り振らず、10ポイントだけ残した。これはいざという時のために余裕を持たせておくためだ。


 SPの割り振りが終わった後、ユニスとプリシラは顔を見合わせて満足そうににっこりと笑いあった。


「行ってくる。」


 ユニスが万感の思いを込めて力強く言う。


「頑張ってください!」


 プリシラが期待を込めて激励する。

 それに対し、ユニスは言葉で返す代わりに口角をあげて笑みを浮かべ、目で合図した。『まかせとけ』と。


 そしてユニスは2人で長く隠れていたボス部屋の隙間から這い出て、そして広く明るい場所にたどり着くと、顔をあげてゆっくりと立ち上がった。


 ボス戦が開始されてから、すでに半日が経過していた。

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