第一話 饅頭事件〜従者side〜
私は朱蕾。皆さんご存知、泊詠様の従者を務めさせていただいております。
初めてあったときは、なんだ此奴、と思ったのですが、話してみると割と良い方です。仕事さえこなしてくれればの話ですが。
さて、私は数年前から彼に仕えているので、好物などもしっかりと覚えています。
具体的に言うと泊詠様は甘物が大好物で、その中でも饅頭が好きらしく、よく買いに行かされます。
それで、今日も買いに行かされたわけですが、渡す前に働いてもらうために餌として準備しておきました。
そうしたら泊詠様はちゃんと仕事をこなされました。根は扱いやすい単純な方、もとい真面目な方ですのでやるときはきっちりとこなしてくださいます。
一段落ついたので、買ってきた饅頭を取りに暁明さんのところへ行き、食べた瞬間時が止まったかのように停止して動かなくなりました。
毒でもついていたかと思い饅頭を見てみると、赤い粉がついていました。
匂い的にきっと七味でしょう。饅頭に七味をかける方なんてこの世にいらっしゃるのかどうかわかりませんが、まぁ実際かかってますし、誰かがやったのでしょう。
泊詠様の命令で犯人捜索をしていましたが、暁明さんは猫探しに出ていたようですし、月鈴さんや暁華さんは外に出ていたため存在すら知らなかったようです。
残るは翠蘭さんか桜綾さんだけになりました。
どちらを先に探そうと思っていると翠蘭さんが帰ってきたので尋ねてみると案外あっさり自白してくれました。仕事が短くなってよかったです。
翠蘭さんによると、どうやら桜綾さんに「七味唐辛子は七回振るから七味っていうんだよ」とか「甘物は少し辛いほうが美味しいんだよ」とかなんだとか教わったようです。そんなわけ無いでしょう。
後者は否定しにくいですが前者に限っては、全くもって嘘です。
「七味唐辛子は唐辛子・山椒・生姜・麻種・胡麻・陳皮・紫蘇の7つが揃っているため七味唐辛子なのです。」
そう翠蘭さんに伝えると、初めて知ったかのように衝撃を受けていました。
兎に角桜綾さんが黒幕だとわかってからは、泊詠様に命じられ彼を呼びに行くことになりました。
泊詠様は全くもって人使いが荒い方ですので困ります。
さて、桜綾さんの実家である商会にやってきましたが、桜綾さんは見当たりません。
仕方なく門番に頼み桜綾さんを呼んでもらうようにしました。
すると、眠そうな顔をした桜綾さんが出てきました。どうやら昼寝をしていたようです。
桜綾さんが寝ている間、私は泊詠様の命令で動き回らされていたのですが、と言いたいのを堪え泊詠様に呼び出されたことを伝えました。
少し気になっていたので、本人に泊詠様が呼んでいた理由が分かるか聞いたところ、「心当たりが多すぎてわからない」とのこと。
一体何をやってきたらその発言ができるのか気になるところではありますが、泊詠様に八つ当たりされたりするのも面倒なので早めに連れていきましょう。
さて、桜綾さんを連れて泊詠様のところに連れて行ったのですが、泊詠様は目を真っ赤にして激怒されています。
私は慣れていますが、泊詠様の威圧は人間の桜綾さんには酷でしょうね。自業自得なので仕方ないですが。
キレた泊詠様は誰も止めれないので放って置くしかないですし、桜綾さんには犠牲になってもらいましょう。饅頭一つでそこまでキレるなと言いたいところですが、まぁ今更ですし。
結局桜綾さんが高そうな饅頭を買ってきて一応解決にはなりましたが、先程の桜綾さんの発言から考えると他にも怒られる要素はありそうですし、また呼び出されてシメられるでしょうね。
それでもなお反省しないのはすごいと思いますが。