第8話 秘匿事項 と 恒例の遠距離行軍
上級学校国軍科入りが決まった
リーヴァ、マリーネ、アーガスは正直に喜んでよいのか解らなかった。
一緒にやってきたスバルとリルネットは、いけないのだから
表立って喜んではいけないと…。
「「「はぁ!?上級学校に行くぅ!?」」」
「私は魔学科…。」
「僕は職人科の特殊魔導専行に…。」
リルネットはセッカによって赤紙ではなく、青紙と言うものを
渡されていた。
この青紙は、軍人としてより違う分野へと
進む事をセッカが推薦する物で
リルネットは魔学科と言う学科になり、この先にあるのは
研究者で、主に国軍の装備などの頭脳部分を担当する事になる。
スバルは職人科と言い、家具職人や鍛冶職人になる為の学科で
魔導専行とは魔導具職人になる為の学科だ。
そして特殊魔導専行、と言うのはアーマネントや武器。
そして魔導凱や魔導機の組立や、設計を担当する事となる。
実はこのどちらの課も一般募集はされていない。
その上で、セッカが青紙を配った年だけに開かれる科で
生徒1人に対して、多くの教師が付く特別な科だった。
何しろどちらも軍部の研究者や職人の枠に今後入る訳で
それは騎士達を守る装備や、戦う為の魔導具を生み出す
貴重かつ、重要な位置付けに立つ事になる。
リルネットとスバルは、この段階で上級学校の
それぞれ場所が秘匿された校舎へと行き
15歳で2人とも、研究所への配属が決定した事になる。
立ち位置は違うが、それは
アーガス、マリーネ、リーヴァ達がこれから使うかもしれない
装備品や魔導凱、魔導機を作る部門へと行くのだと
2人は伝えられ、それに応じて騎士への夢から
研究職への転進をする事を決めたのだった。
国軍科も魔学科も職人科も校舎が別々の上
魔学科と職人科の特殊魔導専行ともなると
場所すら秘匿されている所へ、それぞれ1人で行く事となる。
それも3年の上級学校が終わったら会えるかと言うと
そうでもない。
国軍の研究職になれば、そうそう出歩く事も出来なければ
気軽に街に行く事も出来ない。
場合によっては、他国に拉致される事も珍しくないからであり
考え方によっては軍人より危険な立場になる事も
セッカからは伝えられていた。
「そんな所にいくのかよ…。」
「うん……でもあの人はこれも軍人なんだって…。」
「皆が使う物を、使う人の事を考えて作るというのも
1つの戦い方だって…。
人を殺したりする武器などにはなるだろう。
でもそれを扱う人の助けになり、それによって人の命が救われる。
だから決して研究職と言うのは軍人からそう遠くは無いんだって……。」
「そうなんだ…。」
「「…………………。」」
「って何マリーネとリーヴァは黙ってるんだ?」
「アーガス、騙されてるわよ?」
「何が?」
「青紙の研究職って卒業と同時に研究所に入るって事よ?」
「だからどうしたんだよ。」
「研究所って同じ軍人だけど、騎士じゃなくて近衛なのよ?」
「……………え?」
「あーあ、マリーネがバラした…。」
「騎士は2軍!近衛は1軍!
つまり卒業と同時にこの2人は1軍入りなの!」
「……………えええええええ!?」
「そうなんだよね…、と言うか仕方ないんだ。
どうしても軍の研究職ってのは秘匿事項が多くなるから
1軍扱いになっちゃうんだって…。」
「秘匿事項……?」
「うん、細かくは言えないけど、卒業試験もその類の
内容だったんだよ…。軍の秘匿事項はもし喋ると…。
僕は殺されちゃうんだ…。
多分今も既に暗部の人がついている筈だよ。
青紙を受け取った時から、僕とリルネットはもう
監視されているんだ。
ああ、悪い意味じゃないよ?
そういう理由もあるけど、一番は僕とリルネットの
命の為なんだって…。
それだけ軍の中でも一番危険な所だって…。
だからこそ4軍からそこに行かせると言うのは
ある程度抗えるだけの能力を持っていなければ
簡単に殺されてしまうんだって…。」
「とりあえず今回は抵触していないけど
あまりベラベラと喋りすぎるのは感心しないわよ?」
「ね…。」
「「「怖っ!?」」」
「あと今日で僕とリルネットはもうここを出るんだ…。」
「今日!?早くないか!?」
「アーガス、文句を言うな。
あまり五月蝿いと、お前のおねしょの回数を皆にバラすぞ?」
「「「暗部怖っ!?」」」
その日の夕方、修練場には4軍全員が集められた。
「おそよう!諸君!
知っているだろうが、ここに居る2人は今日をもって
4軍を卒業となる!行先は明確には言えないが
いずれまた顔を合わせる事もあるかもしれない!
そんな2人の門出を祝って、私がとあるものを用意した!」
セッカが手を上げると、空に大きな黒い渦が3つ出来た。
そしてその中から、1つは魔導列車が。
1つは巨大な空母が、そして最後に巨大な戦艦が現れた。
「空を担当する戦略魔導航空戦艦 キャメロット・マルチハルの一番艦
エアマスター・ヘイルレザー!
海を担当する戦略魔導海上母艦 キャメロット・カタマラン一番艦
シーマスター・ローデンリッヒ
陸を担当する戦略魔導装甲列車 キャメロット・ロコモーティブの一番列車
グランドマスター・エンデバーが2人の門出を祝いにやってきたのだ!」
それは圧倒的であり、圧巻だった。
新生シード王国が誇る、最上級とされる陸海空の一と言う数字を冠する
3つの旗艦が揃って現れる事はまず無い。
さらにエアマスター・ヘイルレザーからは
魔導機が飛び、様々な色のカラースモークを噴き出しながら
空に形を描いていった。
そして出来上がったのは新生シード王国の王紋。
そしてその下に、メッセージが描かれた。
『ごるぁ、ハイネ第一小隊長!
誰もそんな指示はしていないだろうが!
勝手な事をするな!!』
「ハイネ教導官…。」
「ははっ、人の話を聞かないのはいつもの事らしいな…。」
「そうだね…。」
王紋の下には「5人ともおめでとう」と
この世界の言語たるアース語で書かれていた。
『ハイネ!貴様終わったら腕立て100万回と
スクワット100万回だ!終わるまで寝られると思うなよ!?』
『サーイエッサー!』
「「「「「100万回!?」」」」」
指示するセッカも凄いが、それをあっさり飲み込む
ハイネも、自分達の教導官ではあったが
やはり一軍の第一小隊長であり、これが一軍なのかと
5人を驚かせる事になった。
「まぁいい。まだ終わりでは無いぞ!
我が国の1軍2軍全員による出し物だ!
これから上級学校に入る者達の分もある!
たっぷり楽しんでいけぇ!」
カラースモークが終わったと思えば、辺りは夕日が沈みきり
あっという間に暗くなっていった。
それと同時に、今度は光り輝く魔導機や魔導凱が
規則正しく、入り乱れるように光で様々なものを描き出し
そして後ろではグランドマスター・エンデバーから、花火が射出され
夜空を彩っていた。
そして演目は終わり、降りてきたのは
魔導機と魔導凱だった。
「十式魔導機と五式魔導凱だ。
操縦者はハイネ・ベルーガー少佐
マリアンヌ・フォン・デリーター少佐の2人だ。
リルネット、スバル。既に荷物は引き払ってあるな?」
「「はい」」
「その手に乗っていけ。滅多に乗れる物では無いぞ?」
「……………この手にですか?」
いくら4メートル程度のサイズの魔導機と魔導凱とは言え
そこに乗るのには少々躊躇はあったようだが
すぐに手の上に乗った。
すると、十式魔導機と五式魔導凱は空へと急発進し
手で包むように王都の空に飛び上がった。
そしてそれぞれがエアマスター・ヘイルレザーとシーマスター・ローデンリッヒに
分かれる様に着地し、それと同時に前面に巨大な黒い渦がまた現れ、消えていった。
「さて!」
それをボーっと見ていた全員が、セッカの声と同時に
掌をバチンと合わせた音に、驚き振り向いた。
「折角だ。不合格だったものも、空を少しは味わいたいだろう?」
その声に合わせる様に、グランドマスター・エンデバーから次々と
魔導凱が飛び降りてきた。
「今日は久方振りの青札を出したついでだ!
全員、魔導凱の手に乗れ!少しグランドマスター・エンデバーで
王都の空の旅を楽しませてやる!
乗りたい奴はすぐさま魔導凱の手に乗れ!1つにつき1人だ!
怖くて乗りたくない!なんて奴は地上で見てろ!」
その言葉に、子供達は次々と魔導凱の掌の上に乗っていく。
魔導凱が空へと一気に飛び上がり
グランドマスター・エンデバーに子供達を乗せていく。
『覚えておけ!これが皆が憧れているらしい
蔦大隊だ!
そしてこれを自らが操縦出来る様、研鑽せよ!
それではこれからが仕上げだ!!』
セッカが自らの魔導機であるアストロン・ヒッペオスに乗り
そういうと、グランドマスター・エンデバーの屋根上部から
左右に花火を放っていった。
『どうだ!花火と同じ高さから見る機会など、まず無いだろう!』
それと同時に、やはり魔導凱が編隊飛行を行なったりと
子供達にとっては夢のような時間が流れた。
セッカなりの労いであり、流石に規模も大きく
一軍、二軍全てを使った出し物だった事から
きっちり国の許可も取り、国民にはこの日
蔦大隊が夕刻から出し物を行なうと
先触れしていた事から、王都は拍手喝采。
街中は夜空を見上げる人達で溢れていた。
それから1週間後。
アーガス、マリーネ、リーヴァの3人が上級学校の
国軍科へと向かう事になった。
その迎えに来たのも戦略魔導装甲列車 キャメロット・ロコモーティブの一番列車
グランドマスター・エンデバーだった。
普段は連結しない、客車をつけた状態で4軍の修練場へと着陸し
3人を上級学校の教師たちが向かえ、それと同時に王都から
上級学校へ入る者達も乗せ、次々と街や村を周り
上級学校へ行く生徒達を迎えていった。
その光景を見た子供達は恐らく忘れることは無いだろう。
何しろ地を走る筈の魔導列車が、空高くにある筈の
雲の上を、魔導列車が走っているのだ。
それこそ夢のような列車だった。
食事も振舞われるが、そもそもセッカがこんな
大盤振る舞いをする事自体が少々おかしい、と
怪しんでいる者も居る。
「こういうのって大抵、持ち上げて一気に下げるってのが
4軍教導だったよな…。」
「アーガス、持ち上げて下げるも何も国軍科はやる事
決まってるのよ?」
「何の話だ?」
「駄目だこいつ……。
全然覚えてないわね……。国軍科は毎年恒例で
入学と同時に学舎までの遠距離行軍をするのよ?
先日話し合ったじゃない…。」
知っている人は知っている。
ここ新生シード王国でも、開始地点が他国と違い
王都北門では無いだけで、入学と同時に行なわれる最初の篩いとなるイベントだ。
但しディメンタールのような生易しいものではなかった。
グランドマスター・エンデバーが徐々に下降し、付いた場所は立派な駅だった。
「なんだここ……。」
駅舎は凄く立派なのに、駅の前には土で剥きだしの地面に
大量に並んだ天幕が並んでいるだけだった。
「よーし!10列あるから好きな場所から進め!
各天幕の指示に従って先に進め!!」
言われるままに進んで行くと
収納袋などを含めた私物全てを預ける預かり所。
そして次に進むと、身体の計測と共に制服への着替え。
そのまま、馬鹿でかい背嚢を受け取り
面体や盾など、装備を渡される。
そして最後に、謎の天幕が周囲にある場所に
全員が集められた。
「この装備でやるのか?」
「でしょ?軍服とあまり変わらない気がするけどね…。」
「お前達、静かにしろ!今から校長による挨拶がある!
しっかり名前と顔を覚えておけ。
あと決して失礼があってはならない。」
「なぁ。俺、嫌な予感しかしないんだけどさ…。」
「「私も…。」」
そしてガラガラと朝礼台のような
どこかで見た事があるような台が運び込まれる。
4軍だった子供達が、皆思った。
多分あれだ…、と。
その台に登っていくのは非常に小さな若い女性だった。
いや、まだ幼子と言って良い体型だった。
髪は銀色、短いポニーテールを後ろに垂らし
正面を向けば………。
そして4軍だった子供達が、皆思いそのままに口走った。
「「「「「別人だ――――――――――――!?」」」」」
『今、静かにしろと教師から忠告があったのに
いきなり叫ぶとは随分と反骨精神の持ち主がチラホラ居るな…。
私はこの国営シード王国上級学校、国軍科校長のフーカだ。
そこの叫んだ5人、恐らく4軍卒業生だな?
あそこのセッカ総合教導官とでも間違えたか?
5人とも今すぐ倒立腕立て100回、始め!』
「「「「「え?」」」」」
『話が解らないようだな?
今、静かにしろと言われて叫ぶ馬鹿がどこに居る!
100秒以内に倒立腕立て100回だ、始め!!』
「「「「「え?」」」」」
『いいから1分以内に倒立腕立て100回だ!
嫌ならもっと過酷なメニューにするぞ!?始め!!』
「はっ…はい!」
『違う!軍の返事は「サー」か「サーイエスサー」か「サーノーサー」だけだ!』
「「「「「サーイエッサー!!」」」」」
『ではそこの愚物が腕立てをしているあいだに
今から行なう毎年恒例で有名となっている
遠距離行軍について説明する、良く聞いているように。』
フーカ校長からの説明は、以下の通りだった。
・今から6泊7日の長距離行軍を行うが、これを行なうのは
上級学校では国軍科のみである事。
・先導する教導官たる先生についていき、7日目終了までに
ゴール地点に到達すれば終了。
つまり、7日目終了までに相当に特別な事情が無い限りは
7日目終了時点でゴール出来ていない生徒は退学となる。
・先導する教導官たる先生は、3人居る。
どの先生についていっても、ゴールは同じなので
自分の好みで付いていく事。
・学生同士が協力し合う事は良いが1組辺り4人までとする。
5人以上での協力は短時間であれば認めるが、移動中に限り
野営時の協力は一切禁止する。
もし妨害工作、妨害行動、生徒に対して攻撃
生徒の食事に不要なものを投入する等、攻撃と判断されるものを仕掛ける事を禁止する。
正々堂々とこの遠距離行軍に挑む事。
・今装備している制服、背嚢、面体、盾。
この4点は、最後まで持っていかなければならない。
・これから1時間の間に、周囲の天幕にあるものを背嚢に詰め
それをこの長距離行軍の食料等に当ててよい。
但し総重量は背嚢を含めて45キロまでで、背嚢の重さは5キロである。
その際、燃え終わった薪などはその場に廃棄して良いが
非可燃のゴミなどは必ず持ち帰る事。
またスコップなどの道具は必ず持ち帰る事。
・1日毎に野営を行なう場所で先導する先生は立ち止まる。
そこが1日毎のチェックポイントとなる。
必ず到着時に、点呼用の天幕に立ち寄って点呼を受ける事。
忘れた場合、7日目のゴールに辿り着いても失格となる。
・参加している生徒は途中棄権が出来る。
背嚢についている照明弾2つのうち、1つを打ち上げれば
先生が駆けつけるので、その際に途中棄権を宣言する事。
相当の事由で無い場合、そのまま退学となるが
その判断は、校長が行う物とする。
その為に、制服、背嚢、面体には
記録用の魔導具がつけてある。
また災害級魔物に遭遇など、危険だと判断した際にもこの照明弾を利用してよいが
事由次第では、途中棄権となる。
その際の判断はまず先生が行い、最終的には校長が判断する。
・収納袋は私物として一時預かりを行なうが
アイテムボックス、収納魔法が使える者はこの限りでは無い。
・移動に関して乗り物の利用の一切を禁じる。
唯一利用可能なものとして、渡してある盾の利用に限り許可する。
・禁止事項、失格は基本退学である。
相当の事由であった場合はその限りでは無い。
『まぁ、ざっくりとはこの位だろうか。
まぁ先程の元4軍は、やはり4軍の教導をしっかり
やってきているようだな。60秒どころか
30秒も掛かっていない辺り、教導と努力の賜物か。
よし、それでは今回先導する先生方を3人紹介する!
左から謎のローブマンA先生、謎のローブマンB先生、
謎のローブマンC先生の3人だ!』
「なんだよ…謎のローブマン先生って…。」
「しっ、喋るとまたやらされるよ!?」
ボソボソと喋っていたアーガスとマリーネだが
フーカ校長の目線は既に向いていた。
『まぁいい。むしろこのローブが目印だ。
かなり派手な赤、青、黄のローブだからな。
これ以外にローブを着ている上級学校関係者は居ない。
むしろ目立つようにローブにしたのだ。
では1時間、周囲の天幕から6泊7日に必要と思われる
兵站を自ら選び、補充するが良い。』
そして生徒達が一斉に散っていった。
「つか天幕がどこも凄い混んでるな…。」
「そりゃそうでしょ。西オーディンの半分もあって
そこから集まってきてるんだよ!?
大体毎年3000人近くは居るんだから…。」
「そりゃ混むよな…。」
アーガス、マリーネ、リーヴァの3人は3人だけで組む事にしていたが
どの天幕も異常なまでに混んでいた。
しかし、それは兵站と言う限られた資源の争奪戦でもあった。
「しかしどうするよ…。」
「まぁ予定通りに行きましょう」
「そうだね、じゃあ予定通りに!」
3人は前もって、合わせてあった為に一気に散って
必要な物だけを集めた。
1人を除いて……。
「で、集めるものって何だったっけな………?」
「まぁ、あんたがそうなるとは思ってたから
私とリーヴァで集めてあるわよ…。」
「馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、戦闘関連を除くと
やっぱり馬鹿ね…。」
「仕方ねぇだろ!覚えられねぇんだからよ!!」
「これでよく上級学校に来られたと、本当に思うわ…。」
『準備は整ったようだな。
実際ここにある兵站は、参加生徒数の4分の1しか用意していない。
足りないのは当然だろう。
足りない分はどうするか?それを考えるのはお前らの役目だろう?
少ない食料をどうするか、それも軍人が考えねばならない事だ。
飽食のシードとよく言われるが、そんなものは軍人には関係ない。
食える時に食ってきているんだろう?
人は多少食わなくても生きていかれる。
現地調達でも良いのだ。一応どうしても食事が用意出来ないと言った
生徒には、毎日炊き出しがある。
まぁ興亜パンに代用醤油の薄いスープしか用意はしていないがな。』
興亜パンとは、その素材は小麦粉に大豆粉にトウモロコシ粉に海草粉に
野菜に黒砂糖、脂肪を用いて作られたパンで
栄養面はともかく、不味なパンですぐに作られなくなったパンだ。
それこそ実物はKーBrotと比べ
硬さはまだ良く、味は勝るとも劣らないものだとされている。
代用醤油スープは濃い塩水で昆布などを炒り、大豆と共に
しっかり煮込んで作ったもので、出汁の旨味はまず殆ど感じられず
ただの濃い塩水と言う味で、わざわざ作るようなものでは無いのだが
その代用醤油で作った薄味のスープと言う
この世界の今の食事情からすれば、嫌がらせのようなスープだ。
何しろ手間暇掛けて出来るのが薄い塩味のスープなら
最初からそれを作れ、と言う話でもある。
わざわざ昆布と大豆を何に?と突っ込まれても困るが
そういう時代が地球にあった、とだけは覚えておくと良いかもしれない。
『食えるだけ感謝しろ、と言っても無理だろうが
すぐに理解出来るだろう。それでは開始位置に付きなさい。
3人の謎のローブマン先生を決して見失わないように!』
「って言われてもな…。これ何千人居るんだ?」
「絶対5分10分は遅れそうだよね…。」
『それでは長距離行軍、はじめっ!』
ついに国軍科、長距離行軍が始まった。
殆どの生徒が、その行軍がどれだけ過酷かも解らずに………。