第7話 2枚目 の 赤札 の 行方
ハイネ教導官はどちらかと言えば修練場での訓練はそこそこに
毎週末、5人を引き連れて物見遊山へと出かけていた。
「なんでまた毎週のように…。」
「それは意外と簡単な事だ。まず未成年は1人で街を出来る事は出来ない。
親御さんか保護者がついていなければ出る事は出来ない。
また未成年の冒険者も、保護者役の冒険者が付いている場合に限り
薬草採取のみが可能となる。
軍も冒険者も未成年向けの任務と言うものも殆どが街の中だ。
だから外なのだ。」
「つまり普通なら経験を積めないからですか?」
「そうだな。軍の成年向け任務の大半は危険な街の外だ。
そこで物見遊山をすると言うのは
意外と貴重な経験なんだぞ?」
「やはり物見遊山と言う体なのですね…。」
「いや、これは間違いなく物見遊山だよ。
軍人がそれ以外で街の外に出るなど任務以外ではまずありえない。
3軍や2軍なら街道の整備任務や街道の安全確保などもある。
だが1軍は有事に出る事が殆どだ。
その上で新生シード王国は、唯一の隣国となる
ディメンタール王国と、唯一違う点がある。」
「不可侵、ですね…。」
「そうだ、マリーネ。ディメンタール王国は自衛の為に追撃はしないが
新生シード王国は隣国であるディメンタール王国と
同盟国であり、その不可侵を維持するべく
ディメンタール王国まで出張って追撃する事すらある。
物事には限度と言うものはあるが、それによって
この大陸の平穏に貢献している事には間違いは無いし
それによって他国の侵攻を鈍らせる効果もある。
そもそも大陸1つに2国しかない、と言うのも
1000年前の第三次世界大戦が発端ではあるがね。」
「で、ハイネ教導官?」
「なんだね。」
「それを今言いますか?」
ハイネとマリアンヌ、そしてマリーネ達5人の周囲には
魔物達が溢れていた。
「さて、ここで今日は1つ面白い事をしようと思う。」
「それどころじゃねぇだろ!?」
「いや、君達は喜ぶ筈だぞ?そしてこれは物見遊山だと
言った筈だ。これは魔物にその物見遊山の
真っ最中に、低規模スタンピードに遭遇したに過ぎない。」
「それが問題なんだろうが!」
「だがチャンスでもあるのだぞ?
全員使役獣を獲るまたとないチャンスだぞ?」
「この状態でテイミング!?」
「また無茶振りかよ…。」
「いや、したくない人はしなくて良い。
だが多種多様な魔物が居る中で、テイム出来るチャンスなど
そうそう訪れないぞ?
魔物については座学でやった上に、全員に魔物図鑑を
配布した筈だ。だから好きな魔物をテイムするが良い!」
「人の話聞いてるか…?」
「駄目よ、アーガス。こうなったハイネ教導官と
まともに意思疎通出来た事があったかしら?」
「ないな……。」
しかし未成年でテイムされた使役獣を得るチャンスはまず無い。
その上に、テイムされた魔物との付き合いが長くなる程
指示も良く聞く上、連携も取り易い。
5人が5人とも、傷付きながらもテイムしていったが
この結果は、また後の話となる。
そしてとある冬。
ついに4軍に卒業試験というものがやってきた。
春には彼等は上級学校国軍科に自動的に編成される。
しかしこの卒業試験で合格した場合だけだ。
出来なかった場合、そのまま4軍に残る事となり
そのまま15歳で国軍普通試験を受け3軍配属、もしくは
別の部署への配属が決定する。
当然、国軍普通試験に合格して3軍になった場合は
10年間、2軍への試験となる国軍騎士試験を受験出来る。
もう1枚の赤紙はこの卒業試験に合格すると与えられる。
自動的に上級学校へ進めるから2軍になる。
但し一部はこの時点で赤紙を受けなくても2軍になる事が決まっている。
それは下級学校で、優秀な成績を収めた者だ。
彼等は下級学校の推薦枠を使い、上級学校へと通う事が出来る。
それは4軍に限らず、全ての下級学校へと通う人々にとって
目指すべきところだ。
セッカイト下級学校の上級学校国軍科への推薦枠はたった2つ。
しかしアーガス達5人はこの推薦枠を取れなかった。
取得したのは全く別の子供だった。
推薦枠の取得基準は公開されていない。
その為、5人はこれから4軍の卒業試験による
上級学校国軍科の無制限枠へと挑戦することになる。
「久しぶりだな!諸君!この下級学校の落ちこぼれ共めが!」
「ぐっ……、言い返したいが事実だけに言い返せねぇ…。」
台の上から声を掛けていたのはセッカ、セッカ総合教導官だった。
たった3ヶ月、教導を行なった以外は
毎年、4軍には3ヶ月だけ現れては消えていく。
「今日の4軍の卒業試験は私と1対1による模擬戦だ!
しかも観戦はさせない!合格も最後にまとめて発表する!
本日、卒業試験を合格できた場合には
私から2枚目の赤紙、つまり上級学校国軍科への推薦をやろう!
そして卒業すれば、晴れて2軍入りとなる!
しかし本日、不合格だった場合!
これから3年間、もっと厳しい教導を受けた上で
国軍普通試験を受験し、1年間衛兵たる3軍となり
10年以内に国軍騎士試験を合格し、2軍となるか
期間が終了すれば、そのまま3軍となるか!
もしくは技術員や艇官など、様々な道がある!
だが、ここで合格すれば最短コースとなる!
決してここで合格しなければ1軍となれない訳では無い!!」
決してこれが全てでは無いが、最短ではある。
そういうセッカの言葉が終わると、セッカは帰って行き
4軍からは1人1人、名前が呼ばれて順番に
どこかへと連れられていった。
そして次々と連れられていくが、決して誰も戻ってこない。
それが非常に怖く感じる。
もしかして、足腰立たない程にやられたのか。
それともただ純粋に別の場所で待機しているのか。
そしてそれぞれの模擬戦の様子すら解らない。
そんな中、ついに5人の番がやってきた。
「次!スバル!」
「じゃあ行ってくるよ…。」
そしてマリーネ、リーヴァ、リルネットと
次々呼ばれていった。
だが、その次がハーマン、ヤッチと続き
アーガスはそのまま取り残されてしまった。
そして日が傾く頃、一番最後にアーガスの番がやってきた。
連れて来られた場所には1つの武闘台があった。
しかしその光景は酷いものだった。
武闘台の上は、無理矢理土を均した上に
そこら中に血のような黒いものが染みこんでいる様だった。
「何をぼーっとしてる、アーガス。
さっさと武闘台に入れ。」
「あ、ああ……。」
「なんだ、この程度の血の跡を見て怖気づいたか?」
「んな訳あるか!」
「なら良い。ではルールを説明する!
何もない、以上だ。」
「は?」
「だから言ったであろう。ルールなど一切無い!
私を殺す気で掛かってこい!」
「殺す気だと!?」
「そうだ、全員同じルールでやっているんだ。
そして私は少々血塗れているかもしれないが
こうして生きている。
そしてアーガス、お前がする事は私が死のうがなんだろうが
これまで4軍で培ってきた全てを出し切る事だ!
2枚目の赤紙、決して安くは無いのだぞ?」
「アーガス、そこの開始線につけ。
審判はこの私、ハイネ・ベルーガー4軍教導官が行う。」
確かに武闘台には微かに線のようなものがあった。
アーガスはそこに立った。
「これよりセッカ・フォン・エンデバー総合教導官と
アーガスの卒業試験たる、模擬戦を開始する!
使う武器、戦う方法、相手を殺したとしても
決して咎められる事は無い!
終了条件はセッカ・フォン・エンデバー総合教導官が
死んだ場合!もしくは試合を止めた場合に限る!
それ以外の終了条件は一切無い!
それでは始め!!」
終了条件がおかしいと思いながらも、アーガスは
魔導剣を取り出して、構えた。
だが目の前のセッカは違った。
腕を組んだまま、ただ立っていただけだった。
「どうした?もう死合は始まっているぞ?」
セッカがただ腕を組んで立っているだけ。
それだけなのに、アーガスの身体は動かなかった。
「くそっ、なんだこれ……。」
だがセッカもハイネも黙ってそれを見つめていた。
そして次の瞬間だった。
「があああああああああああああああああああ!?」
アーガスの右手が魔導剣と共に、肩口の少し下から
斬られ、そのまま地面へと落ちた。
同時に血が噴き出し、アーガスは痛みから
叫び出した時、始めて膝を付く為に動く事が出来た。
そのまま顔から地面へと倒れこんだ。
「ぐあああああああ!いてぇ!なんだよこれ!?
何が起きてるんだ!?」
その問にも誰かが答えることは無い。
そして終了条件にも達していない。
だからハイネは止めない上、セッカは未だ腕を組んだままだった。
「がぁっ!?はぐぅ!?…こぉ、このばぁい………。
【身体再生】ぃぃぃぃ!!」
アーガスが痛みに耐えながらも、魔力を費やして
失った右腕をそのまま再生させた。
だが、一気に生やすまでには至っておらず、切れた場所から
ボコボコと徐々に肉が増えるかの如く、生えていった。
そしてそのまま腰につけている収納袋から
薬瓶を1本取り出して、一気に飲んだ。
「ぐああああああああ!くっそまじぃ!!!」
「ははははは、そりゃお前の腕が悪いせいだ。
良薬口に苦しなど、腕で補えばなんとかなるものだ。
その調子だと、3日くらいは味が解らないぞ?」
「う……うるせぇ!血が減ったんだ!
今は味より増血剤で血を増やすのが最優先だからな!」
「ふむ…、座学の成績の悪さの割に意外と冷静だな。
ハイネ。」
「火事場のなんとかでしょうかね」
「なんだ、偶然か?」
「そんな訳あるかぁ!これでも毎晩、きっちり座学の復習は
してんだよ!」
「ほぅ、てっきり脳まで筋肉かと思ったが
意外だな。少々の加点はせねばならんな。」
「なっ、なんの話だ…。」
「さっき言ったであろう!終了条件は私を殺すか
私が止めるまでだ。その上でお前がするべき事を
私はきっちり言った筈だ。
これまで4軍で培ってきた全てを出し切る事だと。
お前は、その日焼けした腕を地面に落とした相手を前に
雑談するのが4軍で習ってきた事か?」
「……………。」
「お前は4軍で、何を学んできた。
私は、そんな雑談をする為にお前に1枚目の赤紙をやった訳では無い。
魔力内包量など、ただの目安だ。
そんなものの為に6年もの歳月、飯や寝床の面倒を見たのでは無い。
だから出せ、全てをだ!ここで見ているのは
私とハイネだけだ!いざと言う時に出来ない奴は
どこまでいっても出来ないんだ!だからやれ!
貴様の全力を出し切ってみろ!」
「アーガス、セッカ総合教導官の言う通りです。
今日は使っても良いでしょう。」
「ハイネ教導官、本当に良いのですか?」
「ええ、その程度でセッカ総合教導官の相手になるならですけどね。
ちなみにアーガスの能力を、セッカ総合教導官は知りませんから。」
「へぇ…ならやってやる!
俺の能力はこれだ!【立ち上がる者】!!」
詠唱と同時に、アーガスが魔導剣をばら撒いた。
それが地面に付くと同時に、次々とセッカへと迫っていく。
「ほぅ、これがお前の【能力】だったか…。
だが甘い!○二屋のケーキより甘いぞ!!【魂の種】!
咲き乱れろ!【蔦】!!」
セッカの手だけでなく、軍服の隙間からも蔦が大量に出て
その魔導剣の行く手を阻んだ。
「【火】!」
アーガスが魔導剣に火属性を加えて、魔導剣を投げていく。
剣先が地を這うように、持ち手が上に向くように
次々とセッカへと様々な方向から襲い掛かっていく。
「なんの!氷属性魔法【氷河時代】!」
蔦から次々と氷が発生し、武闘台の上が一気に凍った。
「【立ち上がる消滅】!!」
アーガスは1つの魔導剣を両手で持ち、地面に突き刺すと
その氷が消えていった。
「ふむ…面白い能力だな【立ち上がる者】とは。」
「はい。このように【消滅】など
多くの魔法付与が出来る上に、魔導剣も操れます。」
「地面から離れらないのは条件か?」
「んな訳ねぇだろうが!!」
剣先が地を這っていた魔導剣が、次々と飛び上がった。
いや、見た目はジャンプしたような飛び上がりだった。
飛び上がった剣は、ある程度の距離で地面に着地した。
「ふむ。【風】を使って、完全に飛ばせるなら
わざわざ1本だけ背後から飛ばさずとも、全部を飛ばした方が
効率は良くないか?」
セッカの蔦が、セッカの背後から飛んで来た魔導剣を
きっちりと縛り上げていた。
「ああ、流石にまだまだ多くの物を飛ばせるだけの技量は
まだありません。」
セッカはハイネと会話しながらも、次々と地を這い
飛び上がったり、飛んでくる魔導剣を
次々と蔦で縛り上げていった。
「チッ、全部止めるのかよ……。」
「当たり前だろう?これでも一応名代ながら
軍部のトップなんだからな?
軍人候補生に殺されるようなら、この新生シード王国軍なんぞ
ゴミだと言ってるようなもんだ。
で、これで全てか?」
「まだだ!」
アーガスが今度取り出したのは、無数のナイフだった。
それらを【立ち上がる者】で立たせた上で
【風】を使って、全てセッカへと一直線に飛ばした。
「ふむ、こうか?」
セッカの蔦で縛られていたうちの何本かの魔導剣が
蔦が消えた事で地面に落ちたと思ったら、そのまま飛び上がり
飛んで来たナイフを全部迎撃した。
それだけではなく、アーガスの魔導剣や短剣が
絶えず動いているのに対して、セッカの魔導剣は
そのまま空中に浮かんだまま、次の攻撃を迎撃するかの如く
剣先をアーガスの方に向けて待機したままになっていた。
「意外と簡単だな?」
「はぁ!?んな訳ねぇだろ!!これ使える様になったの3ヶ月くらい前だぞ!?
なんでてめぇはすぐ使えるんだよ!?」
「貴様は馬鹿だな。自分の種を教える馬鹿がどこに居る。
と言うかこれはもうつまらん。
近接の戦闘能力を少し見るか…。」
「ぐふっ!?」
アーガスが少々気を抜いていた所にセッカが懐まで飛び込み
一気に腹に一撃を入れていた。
いや、一撃が入った時点で二撃三撃と次々と拳が叩き込まれていった。
アーガスも腕で防御に入ったが、腕で防いでいる位置を綺麗に避け
次々と拳が叩き込まれていった。
それを目で見て、アーガスはおかしいと思いつつも
身体がついていけなかった。
何しろセッカの腕はゆっくりと動いていて
正直に言えば、アーガスが腹などを殴られる前に
手で捕まえられそうな速度で動いている。
しかし腹が殴られたり、顔が殴られたりしていて
セッカの腕や拳の動きと、殴られているタイミングが全く合っていない。
目で見て反応していたアーガスにとっては、腕を注意して見ていると
それと関係なく殴られるのだから、たまったものではなかった。
それでもセッカが何をしているかが解らない事もあり
対抗策が打ち出せなかった。
顔も腫らし、腹などにも大量の痣を作り
なんとかセッカに一撃を、と思いながら戦うも
セッカの1つ1つの攻撃が解らない上、何故か真後ろからも殴られる。
そしてトドメは本来殴ったりしてはいけない
男性の大事な部分に決まり、そのまま崩れ落ちるように倒れた。
「久しぶりだったから、少々ミスったな。
内出血を起こしているな。」
セッカが掌をアーガスに翳すと
何箇所か、皮膚が切れた。
「これで良いだろう。【身体内癒】
【身体外癒】【身体再生】。
ほら立て!さっさと次の場所へ行け!」
「げほっ!」
セッカに蹴られて、一気に目が覚めたアーガスは
ハイネに連れられ、次の場所ヘと向かった。
それは非常に小さな部屋で、椅子に座ると同時に
アーガスは眠ってしまった。
「はっ!」
アーガスが次に目が覚めた時。
それはいつものベッドだった。
この頃、既に全員が個室になっていて
起きた後、違和感を感じながらも食堂へと行き
食事を取った後、ハイネの下を訪ねた。
「やぁ、起きたかい。」
「俺あの後、どうしたんでしょうか……。
小さい部屋に入ってから何も覚えていなくて…。」
「ああ、あの部屋は君達の総魔力量などを計測する部屋だ。
それによって3日程寝ていただけだ。
魔力欠乏症と言うやつだ。」
「3日!?」
「ああ、起きてから24時間は魔力が回復しないから
今日は教導は無だ。
明日、卒業試験の合格発表があるから
お昼を食べたら、筆記試験場に集まるように」
「はぁ……。」
アーガスはその後、マリーネ達と遭遇し
試験について話し合ったが、内容が似ている者から
そうでないものと分かれてしまった。
アーガスと同じ内容の試験を受けたのはリーヴァだけで
マリーネ、リルネット、スバルは内容が全く別だった。
「卒業試験なのに、あれと戦ったのって
俺とリーヴァだけなのかよ…。」
「私、薬学と錬金術と魔導具学の筆記と実技試験だった。
あと魔法陣学と魔導陣学も…。」
「僕は残念だけど、内容については口外禁止だって…。」
「スバルは口外禁止?変な話ね……。
私なんて魔法行使の試験だったわよ…。
お陰でかなり精神的に疲れたわよ…。」
「なんでこうも違う試験なんだろうな…。」
「一軍って言っても様々だからじゃないかな…。
蔦大隊って一括して呼んでるけど
アーマネント隊とかいくつかに分かれてるらしいし…。」
そして翌日。
筆記試験用の筆記試験場へと4軍の翌年満12歳となる
候補生達が続々と集まった所でセッカがやってきた。
「まずは先日の卒業試験、ご苦労だった!
それでは今から2枚目の赤札を配布する!
但し!全員試験内容が違った事などもあるが
私が見た点はたった1つだけだ。
そして言っておこう!この採点は何も卒業試験だけのものではない!
これまで満5歳としてやってきてからの6年間!
その全てが採点化されたものであり、卒業試験は
どちらかと言えば、その6年間の採点で足りないものへの
サービスみたいなものだ!本来は6年間の教導を通じて
採点される分だけで、足りると言うのが本筋なのだ!
だから1つ1つ配点などは教えてやらん!
合格か!不合格か!それだけで納得しろ!
そして貰えなかった者!それは自分のこれまでに
何が足りなかったかを、これからの3年間で補い!学び!
次の国軍普通試験、そして国軍騎士試験と言うチャンスに生かせ!
それでは発表する!今年も非常に少ない!たった3人だ!」
「たったそれだけですか……?」
「そりゃそうだ。何しろ下級学校で優秀な成績を収めれば
赤紙なんぞ貰う必要は無いんだぞ?
と言うか少なくともこの中に2人は推薦枠を取っているんだ。
つまり赤紙と言うのは、その推薦枠を取れなかった
落ちこぼれを救う為のものだぞ?
ではその3名を発表する!
名前を呼ばれた者からちゃんと出て来るんだぞ?
1人目、リーヴァ!」
「…………………えっ!?」
「えっ、じゃねぇよ!さっさと出てこいコンチクショウ!
出てこないと赤紙破り捨てるぞ!?」
「はっ、はい!」
「全く……。次、マリーネ!」
「はい。」
「そうだ、そうやってさっと出てくれば良いのだ。
最後だ、3人目。セッカ!」
「「「「「「「「「「…………………え?」」」」」」」」」」
「冗談だ!」
「冗談かよ!?」
「そうだ!アーガス。お前が3人目だ。
これで赤札は終了だ。貰えなかった者はこれから3年間。
国軍普通試験、そして更に1年3軍として過ごし
10年以内に国軍騎士試験を経て、2軍入りを目指す事になる!
但し!これからの3年は、上級学校より考え方によっては
苛烈な教導となるであろう!
上級学校に入れたからといって喜んでいるであろう5人には
衝撃の事実を教えておいてやろう。
ここで落ちた4軍生が2軍まで上がってくる割合は
まぁ3割くらいだろうな。」
「3割……。」
「意外と少ない……。」
「何を言っている。上級学校の国軍科を卒業できれば
確かに即2軍だ。ハイネ、国軍科の現役卒業の割合はどのくらいだ?」
「はい、凡そ3パーセントです。」
「解ったか!上級学校を卒業できるのは100人に3人程度だ!
それに比べて4軍生がこのまま3年間生き残れた場合の
2軍まで上がっていく割合は3割だ!
下級学校の推薦枠を取った2名、そして2枚目の赤札を手に入れた3名!
ようこそ!ここからが地獄の二丁目なのだよ!!」
その言葉に、2枚目の赤札を手に入れたと思い喜んだのも束の間。
下級学校の推薦枠を取った2名も同じく、今の4軍以上に
苛烈な教導になるのだろうと考え、早くも意気消沈するのだった。