第4話 我が家 の 家宝
そして翌日の朝6時。
大部屋に行進曲「軍艦」が流れ出す事で起床となる。
これは1軍でも4軍でも基本、朝6時起床だ。
『ま~もるもせむるも『騒音反対!ブツン―。』』
そして新たに行進曲「軍艦」が流れ出す。
誰が歌って、誰が止めたかが皆解っている。
何しろ毎日同じ事をやらかすからだ。
朝になると全員一斉に着替え、食堂へと向かう。
大部屋で過ごすものも居るが、殆どは個室だ。
しかし大部屋でも2人部屋でも4人部屋でも変わりは無い。
ここに男女の差などは一切無い。
恥ずかしいなどとは言っていられない。
何しろここから食事を済ませるまで4軍にはたった30分しかない。
6時半からすぐに教導が始まるからだ。
その為、食堂は4軍専用の列がある。
皆、その事が解っているから文句も出ない。
何しろ遅い人なら勤務は午前10時くらいからだったり
休日の者も食堂を利用する。
「はい、次々チャキチャキ進む!
4軍はこっちの列だよー!
はい、あんたは大盛。あんたも大盛。あんたは細すぎる、特盛り。
あんたは……痩せなさい、普通盛り。」
食堂のタネコさんがチャキチャキと列を捌いて行く。
総勢で3000人以上、1日1万食を超える食事を
バイキング形式で取らせていくが、特に4軍は
好き嫌いをする子供が多い分、タネコさんが面倒を見るのが日課だ。
「ピーマンが嫌いだと!?」
「これ苦い……。」
「ならこっちを食え!パプリカだ!肉厚で苦味なども薄れているのです!
そこ!トマトをちゃんと取りなさい!
何!?ドロっとしたのが嫌だ?なら果物コーナーからスイカを取ってきなさい!
トマトとスイカの赤さは同じリコピン!変わりになるから食べなさい!
あんたはしいたけか!かわりにしめじを食べなさい!
グニュグニュした食感が薄れるが、栄養は煮たようなものです!
無理して食わなくても良い!だが変わりになる物を必ず食べなさい!」
食堂のタネコさんは嫌いなものの理由に合わせて
食べなくて良い、と言うが変わりに同じ栄養などを
持つものを食べさせる。
タネコさんに好き嫌いは一切無い。
あえて言えば松茸が苦手なくらいだろうか。
幼少期、長野の坂城町に居た祖父が
生の松茸に味噌をつけて食べていて
旨いぞ?と言われて食べてから、苦手になったとか。
ただ苦手であって、食べられない訳では無い。
虫もあの黒くて丸くてつるっとしたGが嫌いなだけで
イナゴも食べれば、蜂の子も食べる。
教導でかなり無茶をさせる分、食事などは楽しんで
美味しく食べて欲しいと、無理強いをさせないのがタネコさん流だ。
「4軍の子供達!あと5分だよー!
急ぎつつもしっかり噛んで食べなさい!
その為の多少の遅刻なら許されるよ!」
そして4軍は6時半から瞑想教導に入る。
食休みでもあるが、精緻な魔力操作を行う為の教導で
普通の座禅などとは別物となる。
肩幅に足を開いて、立ちながら瞑想をする。
「おら!足が閉じてる!しっかり足は肩幅だ!
しっかり瞑想しろ!」
瞑想と言いつつ、子供達の足がプルプルしてきている。
ようは肉体を虐めつつ、その中で魔力の操作をさせるというものが
ここで言う瞑想にあたる。
「身体はしっかり虐める!あとで癒しの魔法ですぐに治る!
ここではその身体を虐めている中で、いかに
魔力操作を行うかが肝だ!」
子供達が辛い顔をしながら、座学で習った魔力操作を
次々と実践していく。
「軍人は戦いながら、精緻な魔力操作を行う!魔法を使う!
だが失敗は恐れるな!魔力操作を行う事は魔力の内包量を僅かながら増やす事になる!
どちらになっても、利でしかない!これが出来るのは本当に幼い頃だけだ!
特に魔力内包量は大きくなってからでは手遅れだ!
だから魔力を動かせ!細く動かせ!
それらは必ず身肉となる!無駄な教導などここには一切無い!」
「足が閉じてると言っているだろうが!
しっかり足は肩幅まで広げろ!今、鍛えないでいつ鍛える!
虐めぬいて癒しの魔法で癒すことで足腰が徐々に成長していく!
世間一般ではこの癒しの魔法1つにすら病院へ行って金を取られるんだ!
それがタダで済むなど国軍くらいだ!
だからしっかり立てなくなるまで虐めて癒してもらえ!
今日からお前ら、この後下級学校の入学式だぞ!」
大体の子供達が「そんな日にやらせるな」と思っているが
これでも土日に休みはある。
アーガス、マリーネ、リーヴァ、リルネット、スバルは
教導を終え、王都内にある下級学校へと向かっていた。
着ているのは教導でも着ている軍服に限定されている上
一切の寄り道は認められていない。
しかし数少ない、解放された時間でもあった。
「なんか変な感じだよな…。癒されても
何かそこら中ピリピリした感じがするよ……。」
「それでも終わった直後よりはマシよ…。
アーガスなんて、全く動けなかったじゃない。」
雑談しながら向かうのは、国営である下級学校だ。
この世界では小学校と中学校を合わせたような
下級学校に、満年齢で5歳となった翌年度。
つまり数え年で6歳から通う事になる。
下級学校につくと、アーガス達はジロジロと
周りの子供達に睨まれる。
「なぁ…なんかおかしくねぇか?」
「そう?あんた普段から喧嘩してたからじゃないの?」
「なんでだよ……。おっ、あそこ見ろよ!」
アーガスが指差したのは、同じ国営フーカ・ジーロ孤児院で
共に暮らしていた子供達だった。
「でもみんなおかしくない?
なにか私達睨まれてるんだけど……。
アーガス何かやったの!?」
「そんな訳ねぇだろうが!」
「じゃあなんで私達まで睨まれてるのよ…。
あっ!ジーネ!ジーネー!!」
マリーネが孤児院で仲が良かった年上のジーネに手を振りながら
近づいていった時だった。
「きゃあ!」
近づいていって手を握ろうとしたマリーネが
ジーネに突き飛ばされた。
「ちょっと、ジーネ!何するのよ!!」
「あんた誰?」
マリーネを顔を上げたとき。
それは見下されているような、侮蔑しているような
冷たい目で見るジーネの姿が見えた。
「ジーネ……。」
「悪いけど、近寄らないでくれる?」
「え……。」
「さっ、みんな入学式があるから行きますよ」
そういって、他の孤児院の子の連れながら校舎へと入っていった。
「な……何なの一体……。」
しかしそれもまもなく解る事となる。
入ってすぐの場所で各自のクラスが貼り出されていて
それぞれが分かれたクラスに入った時に全員が感じた。
クラスの中で、同じ軍服を着た者も居るが
彼らもやはり睨まれていたり
場合によっては何故か全身がずぶ濡れになっていたり。
人によっては顔が少し腫れていたりしているだけでなく
自らも入ったと同時に睨まれたからだ。
「なんなんだよこれ……。」
「こら!全員自分の名前が書かれている席につけー」
そして担任の先生と思われる人物が入ってくると
次々と席についたが、アーガスは自分の席を見て
非常に驚いた。
机も椅子も何かで削って書かれていたその言葉。
「死ね」と言う言葉がアーガスを青ざめさせた。
1つ2つではない。
いくつもいくつもの言葉。
それが他の軍服を着た子供の所にも書かれていた。
「おーおー、毎年恒例だなぁ…。
アーガスだな?悪ぃがそのまま座っててくれ。
すぐにカタが付くから。」
アーガスは何を言われているのか解らないが
座れと言われた事で、大人しく座る事にした。
「さて!俺はこのクラスの担任となるライアーだ。
毎年4軍の赤紙が来た奴に対して
こういうくだらない事をする馬鹿が居る訳だ。
そこの……ハーマンもずぶ濡れだし
ヤッチも顔が腫れ上がってる。
そしてアーガスを含めた机や椅子を削って
色々と書いているようだが……。
お前ら、何をしたか解っているか?」
その言葉に反応する子供はいなかった。
「では教えてやろう。軍服と言うのは貸与品であり
それは国のものだ。この学校の備品。
つまり机や椅子も国のものだ。」
アーガスは違う意味で驚いていた。
アーガスに対してやずぶ濡れの子供や
顔が腫れ上がっている子供に対してでは無く
国のもの、と言う言い方から始まったからだ。
「つまりこの2つに関しては国に対する損害賠償が発生する上
法律上で器物損壊罪と言う罪になる。
そして法律上、5歳6歳の子供が責任は親が取る事になる。
この下級学校では、全ての場所に一切の視覚すら存在せず
全てを国軍の訓練の一環として、監視を行っている。
理由は不審者の侵入などを想定したものだが……。
お前らがやった事は全て見られていた、と言う事だ。
ハーマンに水をかけた奴、ヤッチを殴った奴。
それに机や椅子を傷付けた者は全員解っている。
家に帰った頃には、ご両親や院長などに
連絡が既に届いている筈だ。しっかりと怒られてこい。」
全部が監視されている。
それは下級学校に来る者、全ての責任者に前もって通達されている。
昔は無かったが、現在では「セッカ雑貨店」と「蔦大隊」の
協力の下、その全ての費用持ちで監視任務を行なっている。
理由はまだこの世界では犯罪も、戦争も起きている。
子供達を守る為、として設置されているものであり
本来の使い方とはまた別物だ。
しかし4軍の子供がこういう事をされるのは
蔦大隊としては困る訳で
毎年こうしてかなりの子供達が冗談では済まされないと
家に帰ると、両親や院長に怒られる。
まぁ実際弁済をしろとは国は言わない。
だが、次は無いと念は押す。
これも子供を守る為だ、4軍の子供と言う身内を守る為に。
国営フーカ・ジーロ孤児院のジーネの行動も
孤児院の子供達を守る為の行動だった。
もし4軍の子供達と、表立って話しているだけでも
関係者と見做され、それがジーネだけならまだしも
孤児院の子供に飛び火する事がある。
実際にアーガスやマリーネなどが知らないだけで
前からそういう事が起きている。
下級学校の中だけならまだしも
王都の中ですら、そういう事が起きている。
赤紙を貰い、4軍に入ると言うのはいわば
優遇されていると言う事だ。
それに対する妬み嫉みを持つ子供が、少なからず居る。
それが毎年、こうして入学式の日に起こるのだ……。
「そうだ、水をかけた奴と殴った奴。
お前らは傷害罪と軽犯罪が適用される。
こちらは子供だろうと、容赦は無いぞ?連れ出せ!!」
担任のライアーの言葉と共に、何人もの子供が
教室から連れ出されていく。
「さて、入学式は校庭で行なわれる。
全員席順に2列に並んでいくぞ。
ハーマン、お前は職員室へいけ。変わりの制服が用意されている。
ヤッチ、お前は救護室だ。癒しの魔法を掛けてもらってこい。
あと3人の机と椅子は入学式の最中に新しい物に変えられる。
ああ、そうだ。下級学校は誰でも来る事が出来る。
だが悪い事をしていると退学、と言う処分も下る。
皆、努々忘れぬ事だな。よし!いくぞ!」
子供達が校庭に集められていく。
新入生たる1年だけでなく、6年までの全ての学年が集められる。
『それではこれより新生シード王国。
国立王都セッカイト下級学校の入学式を始めます。』
それと同時にやってきたのは、どこかで見た事がある朝礼台だ。
アーガス達は思った。
嫌な予感がする、と……。
『まずはセッカイト下級学校、名誉校長からのお話です。
皆さん静かにして、聞きましょう。』
その台に登っていくのは非常に小さな若い女性だった。
いや、まだ幼子と言って良い体型だった。
「やっぱり……。」
アーガスに限らず、軍服を着た4軍生徒は皆それが
誰なのか、これから何が起きるのかが大体理解出来た。
しかし多くの子供達は訳が解らないから
どうしてもざわめき始める。
但し1年生だけだ。
2年生から6年生までも、アーガス達と変わらず
これから何が起きるのか、そしてこれが誰なのか理解しているからだ。
髪は銀色、短いポニーテールを後ろに垂らし
正面を向けば………。
『ん?これでは届かないではないか!
何か乗るものは無いのか!?』
台には書記台のようなものもあり、彼女は
その台に隠れてしまっていた。
『っていうかいつも用意しているだろうが!
私の身長でこの台があったら顔が出ないと解るだろ!
さっさっと乗るものをもってこい!!』
知らない1年生の子供はクスクス笑っている者も居るが
知っている者は誰も笑っていない。
むしろ笑ってはいけないと理解しているからだ。
『ん?いつものと台が違わないか?
まぁいい。』
そして台に乗り顔が一瞬見えたかと思うと
そのまま一気にドーン!と言う音と共に空高く打ち上げられていった。
流石に全員、予想の斜め上の光景だったからなのか
唖然としていた。
『あーあー、テステス。皆どこを見ているのだ?
余所見はいかんぞ?』
打ち上げられたと思った名誉校長と言う少女が
良く見ると書記台の後ろから顔をしっかり出していた。
「今、空に飛んで行かなかったか?」
「いつのまに落ちてきたんだ?」などとザワザワしているが
なんて事は無い、セッカは実際に空に打ち上げられた。
緊急補助推力を利用して
空に飛んでいった。但し、それは分身体で本体は書記台の裏に
ずっと居ただけの手品だ。
『さて、私が名誉校長のセッカだ。新生シード王国の子供達。
下級学校への入学を歓迎する。』
目の前の事が無かったのように喋りしているが
子供達は驚いたままだった。
『さて、驚きついでにこれも見てもらおう。』
それは今日、朝早く校舎内などで起きていた
様々な出来事の映像と音声だった。
それが校庭の空に表示され、音声まで流され始めた。
ハーマンが校舎の上の階から水をかけられる姿。
ヤッチが殴られている姿。
アーガスの机や椅子が小さな刃物で次々と削られ
「死ね」と言うアース語が刻まれていく姿。
それ以外にも、全て軍人予備軍たる4軍の子供達が
嫌がらせなどをされると言う姿だった。
その映像に出てくる子供も驚いていれば
見ている全員が驚いていた。
『これまでここまで見せた事は無いのだが
今年は特に酷いようでな。
ついつい見せたくなってしまうのだよ……。
当然、これは今日の分だが……。
これまでの分もあるのだが、皆見たいか?』
そういうまでもなく、一気に映像の数がどんどん増えていく。
音声も混ざるように次々と流される。
それだけではなかった。
それらが王都中にまで表示され、流されていた。
『仏の顔も三度まで、と言うが君達は自分達の
しでかした事がこうなる事は予測していなかったのかな?
随分と真っ青な顔をしている子供が多いではないか。
ああ、忘れていた。
私は名誉校長でもあるが、この国の国軍の
1軍から4軍までの総合教導官、つまり教える側の
一番上にも居れば、上級大将。
大元帥たるシード王、その後継者たる王子の次の
存在でもある。そして………。
この国の一軍、蔦大隊総隊長でもある。
4軍とは、まだ軍人ではない軍人候補生ではあるが
私の可愛い子供達だ。彼らが4軍に選ばれた理由は多々ある。
だが一番大きな比率を占めているのは、この映像にもある。
解るかな?』
解る解らないどころではなかった。
青ざめていた者が、それらが露呈して頭を抱える姿に
どうしてこんなものがと慌てている者。
そもそもセッカの話など二の次で、自分達が
色々とこれまで働いてきた悪事が露呈している事自体に
何故!?どうしてと思っていてそれどころでは無い。
『まぁ間違えて欲しくないのは、これらの映像は
君達をこの戦争と言うものが多くある世界において
不審なものなどから守るという観点から
多くの国民に納得してもらった上で設置したものだと言う事だ。
だがそれがどうだ?国の中に
こうして人を虐める、貶めるなどの行為が蔓延している。
だがこの映像や音声に、一切含まれて居ないものがあるが
これは間違っても我々が選別して流している訳では無い。
ここにある映像はこの5年間の映像の中で
問題である、法律に触れるであろう悪事の全てを流している。』
『皆、よくみていただきたい。
この中に、軍服を着た者が悪事をしているかな?
軍人とは偉ぶるものでは無い!
国民を守るべく盾となり、矛になるのが軍人だ!
相手が守るべき国民なのだ!これではディメンタール王国や
ゲーテルエード王国が不可侵を宣言している中で
攻めてこられないからと、一方的に攻めているのと
どういう違いがあるのだ!?
新生シード王国は隣国、ディメンタール王国から生まれた国だ!
その不可侵を利用して、一方的な蹂躙をしてきた国々に
鉄槌を下す為に生まれた国だ!その国の国民が
敵国と同じ事をしていてどうなる!
その国々がどうなったか、君達は知っているのか!?
全て滅んだのだ!この西オーディンにおいて生き残ったのは
ただ1国!ディメンタール王国だけだったのだ!
それから1000年の時を経て、君達はまた同じような愚を
1つの国内で起こすつもりなのか!?
子供だからと許していれば、いずれこれが大人へと伝播する!
そして世界はまた同じ愚を繰り返すのだ!』
「また面白い事をしていますね…。」
「何が面白いですか…。」
「マリアンヌ少佐、君はこれがどういう事なのか解っていないのかな?」
「くだらない。ただの悪事の暴露では無いですか。」
「そうかい?私にはセッカ上級大将が言いたい事も解れば
その為に自らは身を切ってでもやろうとする熱意を感じるけどね。」
「熱意?これが?」
「そうだ。これは左下の表示を見ればこの新生シード王国の
全ての街や村までに流されている事が解る。
つまり魔導通信を使った国内限定放送だ。」
「そのくらい解ります。ハイネ少佐はもしかして私を馬鹿にしているのですか?」
「いや、だが魔導通信の世界放送とも言えば白金貨が1万枚は
利用料だけで吹き飛ぶ。それがこの西オーディン大陸の半分を占める
新生シード王国内で流す。それだけで白金貨がいくら吹き飛ぶかすら
考えたくないけど?」
「金銭的な問題であれば、セッカ上級大将であれば
この国で一番の豪商でもあられるのです。
問題は無いでしょう。」
「違う、違うなぁ…。これは4軍の子供達の為にやった事だろう。
500名程の子供の為に、上級大将は身銭を切った上に
これだけの事を言える立場にもあれば
国内放送なんて王の許可すら必要なものだ。
立場云々を抜いても、これだけの事をしようだなんて
どこの誰が思い付く事やら。それでいて実践までしているんだ。
確かにただの悪事の暴露かもしれない。
だが、これを見た国民はどう思うかな?」
『そして言っておこう!この映像に出てきた子供達に
直接怒ってよい、怒るべきは子供の親だ!
決してこれが露呈したからと、その子供に同じ目に
あわせるなどと思わぬ事だ!
その親に対して何かをしてはならぬ!
それは負の連鎖というものだと心得よ!
これは初代新生シード王国王妃としての命である!
国民達よ!新生シード王国の軍人、そして軍人候補生は
決して皆を見捨てる事は無い!
だから皆もこの子供達を見捨ててはならない!
それこそ大人の責務である!
悪い事をしたなら諭すだけにせよ!
決して報復などしてはならぬ!
彼等はまだ命を奪う程の事はしていない!
新生シード王国の理念を思い出せ!
我等が国は「命より優先するものなど何も無い」のだ!
それが軍人候補生であろうと!
イジメを行なう子供であろうと!
そして行なった子供達に告ぐ!
もしこれで命を殺める事になったとしたら!
この私がその命を刈り取りにいってやる。
覚えておけ!そして反省せよ!自らが行なった愚かな行為を!次は無いと知れ!』
セッカの行なった放送は国内で賛否両論出た。
しかし言う程悪く言う人はいなかった。
そしてセッカの言う通り、実際にそれまでの映像などで
悪事が露呈した子供達は、その日の夜。
両親にこっぴどく怒られる事となった。
そしてまだ授業も受けていないのに、セッカの正体を知り
漏らす子供も居たとか。
流石に初代王妃、蔦大隊創設者、そして現在は蔦大隊の総隊長であり
総合教導官かつ上級大将であり、新生シード王国の大店である
「セッカ雑貨店」の店長たるセッカ・フォン・エンデバーその人と知った上で
彼女は言った事は必ずやると、両親から念を押され
本当に命を奪いに来る、と半ば「なまはげ」のような扱いをされたが
それによって子供達が反省した事に変わりはなかった。
「それで私が正座させられる意味が解りません!」
「どこに下級学校の入学式で緊急補助推力を
使う人がいますか!!」
「ここに!」
そしてセッカはアネスにハリセンで叩かれた。
「そっ…それはウルフの大将がお気に入り?のハリセン!?
つかなんてもので叩くんですか!!痛いに決まってるじゃないですか!!」
「我が家の家宝です!」
「そんなもの家宝にするな!」
セッカ専用ハリセンも、キチンと受け継がれていたようだ……。