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第2話 セッカが 居る 理由


「さて、ここからは大部屋になる。

 孤児院でもそうだったから、慣れているだろう?」

「はい」


 アーガス達がハイネ少佐に案内された大部屋は

 二段ベッドではないものの、全員のベッドがあり

 その下に私物を入れる箱が置いてある。


 まるでフルメタル・ジ○ケ○トかキ○グスマンの世界だ。

「私物を入れる箱がベッドの上に乗っている場所を好きに選びなさい。

 それ以外は既に誰かが場所を確保している。

 選んだら、すぐに私物を入れる箱はベッドの下へ入れなさい。

 そしてこれをベッドの隅に嵌める。君達の名前が書いてある。」


 それぞれが指示に従い、孤児院にあった各自の荷物。

 そして支給品なども配られた。


「この箱に鍵は無い。だがもし君達の誰かが他の人の

 私物箱の中身を盗んだ時。

 その時は世界法とシード王国法に則った罰則がある。

 そしてこの部屋は24時間、誰かしらが監視している。

 だから安心して入れておくが良い。」


「安心?」

「逆もしかりだ。他の人が君達の物に手を出そうとしても

 同じ事だからだ。ここの施設は国庫や宝物庫並の

 厳重警戒区域だ。何故だか解るかな?」


「いえ…解りません……。」

「軍人とはいえ、君達はまだ5歳だ。孤児院と環境が変わり

 夜鳴きする子も居れば、精神的に追い詰められる子も居る。

 その為に大部屋で、何かあった場合の監視をしている。

 むしろその心配が無いと解った時点で

 全員個室が与えられる」


「えっ!?全員ですか!」

「個室って…1人部屋!?」

「そうだ、個室になると監視の目が無くなる。

 だからこそこの大部屋で一旦過ごし、それぞれが

 1人で寝起きしても大丈夫だと判断されれば

 監視も無くなる。だがそれまでは君達はどういった事が理由で

 問題が起こるかも解らない。

 あと2人部屋や4人部屋と言うのもある。

 人によっては2人部屋になる場合もある。

 ここでの過ごし方次第だと言う事だな。」


 その後も翌日の予定などを聞かされ

 5人は就寝する事になった。








 施設内にある上級大将たるセッカ・フォン・エンデバーの執務室では

 各教導官が報告に来ていた。


「ご苦労、そのように。」

「はっ」


「よし、次。ハイネ少佐とマリアンヌ少佐か。

 担当は王都国営フーカ・ジーロ孤児院の5人だったな。どうだ?」

「はい。私には何故あの5人をお選びになったのか。

 さっぱり解りません。」


 次の瞬間にはマリアンヌ少佐の首に、蔦のようなものが巻きついていた。

「マリアンヌ少佐、そんな事は聞いていない。

 報告するべき事だけしろ。47人しか残っていないにせよ

 報告は172人分あるんだ。無駄話は必要ないぞ?」

「はっ、失礼しました。」

「良い。ハイネ少佐、君の忌憚(きたん)なき意見が欲しい。」

「47人に残っただけはあると思います。

 こういうのは憚られますが…。」

「良い、遠慮は要らないと言った筈だ。」


「これがチャンスである事、そして上級大将のあの走りや

 他の教導官を見て、ああなれるチャンスだと

 よく解っているようです。」

「そうか、精神的にはどうだ?」

「多少心配があります。それぞれがまだ独立するには

 時間が掛かりそうです。出来れば8人部屋を用意してあげるのも

 1つの選択肢かと思われます。」

「それは難しいな。8人部屋という事は5人がまとまっていないと

 動けないと言う裏返しなのだろう?」


「はい。1人づつになった時、今のままで満足行く程に

 動けるのは精々2人、もう2人は微妙な所ですが

 1名、発言も乏しく自主性を促す必要性はあると思いますが

 非常に時間が掛かると思われます。」


「そうか…、マリアンヌ少佐。必要な報告と言うのは

 こういうものだ。君の主観的な価値観を求めては居ない。」


「しかし…、毎年そうですがフーカ・ジーロ孤児院に対し

 少々甘いとぐっ!?」


「マリアンヌ少佐。君の主観による価値観は求めていない。

 それとも私の判断が間違っている。

 もしくは君の正義を私に押し付けたいのか?

 今すぐ死ぬか?」


「い……いえ………失礼…しました……。」

 蔦のようなものがギリギリとマリアンヌ少佐の首を締め付けた後

 謝罪と共にスルリとその拘束が解けた。


「ならば問おう。ハイネ少佐、5人の素質についてはどうだ?」

「申し分ないと思います。潤沢な魔力の内包量と

 見た限りでは、2人はすぐにでも頭角を表すと見ています。

 1人少々ギリギリとは思いますが、私的には

 許容範囲だと思います。それらを一瞥しただけで

 見抜いている上級大将の慧眼に恐れ入ります。」


「ハイネ少佐、そういうおべっかもいらない。

 マリアンヌ少佐、私は相手を見ただけでその魔力の内包量が

 すぐに解る。精神や肉体など後からいくらでも成長できる。

 だが魔力の内包量はそうはいかない。

 努力による努力で増やせはしても、それは元々持つ者も

 努力によって増やしてくる。それは結果として

 大きな差になるし、アーマネントに限らず

 魔導凱や魔導機などの扱いにも影響が出る。

 マリアンヌ少佐、君はもう少しそういう点を見るんだ。

 たかが5歳児だぞ?肉体や精神がこの時点で

 成長しきっている方がおかしいというものだ。

 見る点は1点、魔力の内包量だけだ。

 3軍たる衛兵隊なら魔力はむしろあまり要らないが

 2軍より上は、必須事項だ。

 君も苦労したのは覚えているだろう?」


「は、はい…。」

「よし、報告ご苦労だった。

 明日に備えて休むように。次だ!」

「「はっ!」」





「全く、上級大将に真っ向から意見するのは構わないが

 巻き込まないでくれ。」


「……………。」

「蓄魔石弾倉に頼っているから、魔力に対するアンテナが鈍るんだ。

 普段から私のように、模造弾倉(ダミーカートリッジ)を使い

 自らの魔力を流していないからそうなるんだ。」

「………さい…。」

「ん?」

「五月蝿い!お前と私は違うのだ!」

「君はこの新生シード王国において、貴族も孤児も関係ないと

 散々知ったのではないかな?

 かの上級大将も孤児なのだぞ?」


「異人ではないか!」

「そうだな、かつて第三次世界大戦と呼ばれる

 戦いをした1000年前の英雄だ。

 だがそれと貴族と孤児の差なんてものは関係ないだろう?

 むしろそういう考えを上級大将が一番嫌いなのも

 君は嫌と言う程二軍で味わったのだろう?

 それにこの国の貴族の大半は、元平民だ。

 英雄たるヘイルレザー家、ローデンリッヒ家、エンデバー家にヴォルネット家。

 バーニング家はどれもこれも元平民ばかりだ。」


「シルバリオ家にサエヒセルヒ家にマーグ家にガードナー家などは

 元から貴族であろうが!」


「だから君は二軍から上がれなかったんだよ。」

「なんだと!?」


「元一軍たる私が言うのだから間違いない。

 同じ少佐かもしれないが、元一軍と元二軍の差が

 天地ほどある事は君も解っているだろう?

 私はそれを傘に何か言いたくは無いが、あえて言っておこう。

 君の上司は私だ。階級?貴族か平民か?

 そんなものどうでも良いだろう?

 それに君は当主でもなく、現状はただの騎士爵を持つ準貴族だ。

 だから、そんなくだらない貴族だ平民だだのといった

 偏見は早くに捨てるのだね。

 悪いが君よりあの5人の魔力内包量の方が上だ。

 君はそれにも気が付いただろう?

 二軍に入れたんだ、解らない訳が無い。

 上級大将もそれに気が付いている。

 精々これ以上左遷されないように気をつけないと………。

 君の居場所が無くなるよ?」


 ハイネ少佐も言うだけ言って、マリアンヌ少佐の前から去っていった。


「くっ!」

 マリアンヌ少佐は、壁に八つ当たりするように蹴りを入れ

 その場を去った。


 1000年もの時を経ても、貴族や平民と言う特級階級思考と言うものは

 果てる事はなかった。

 それが新生シード王国であってもだ……。









 だからこそ、ここにセッカが居る。

 それは今から830年前、当時の王である

 シード4世が、セッカに直談判した事が要因だった。


曾祖母(おばあ)様!お願いします!!」

「顔を上げろ、あと曾祖母(おばあ)様は辞めてくれ。

 これでも不老でまだピチピチギャル(死語)なんだからな。」


「ではなんとお呼びすれば…。」

「セッカで良い。私は最早王族である事も捨てた身だ。

 ただのセッカだ。」


「ではセッカ様、お願いします!

 軍部を率いていただけないでしょうか!!」


「お前なぁ…良くも悪くも大元帥で王でもあるシード四世が

 何、簡単に頭下げてるんだよ…。

 っていうか軍部くらいカイルの頭の良さくらい引き継いでいるだろうが…。

 そのくらいキッチリ仕切れば良いだろうが…。」


「いえ、しかし私の代では既に【(ザ・シード)】も失われ

 軍部は台頭してきた後発貴族達の好き勝手されている

 状態でして…。」


「お前、それでも私の血を本当に引いているのか?

 ガツンとやってしまえ、ガツンと…。」


「それが魔力内包量もさほど多くなく…。」

「そりゃそうだ。神様曰く、魔力の内包量と言うのは遺伝では無く

 それぞれの魂に宿るものだ。努力で多少のカバーは出来ても

 根本から言えば、私の子だろうと孫だろうと

 魔力の内包量自体は遺伝する訳が無いのだからな。

 それに子には【(ザ・シード)】と言う能力が

 濃く出る可能性はあるが、あれは元々チートすぎる能力だ。

 私としては遺伝が消え失せて、安堵している所だぞ?」


「ですが!最早蔦大隊(アイビー・バタリオン)は伝承レベルで

 それを継ぐような者は居ないのです!

 十式処か五式すら碌に扱えず、今では零式を引っ張り出してきて

 扱うのが精々です!」


「うわぁ、お前ら怠惰でも貪ったか?

 五式が動かせないとか、そもそも蔦大隊(アイビー・バタリオン)としての

 資格すら無いじゃないか………。」


「だから困っているのです…。

 これ以上軍部を好き勝手させておくと、防戦にすら影響が………。」


「防戦にすら影響?」

「はい、実は………。」

「国土が奪われているだと!?」

「はい、このままでは国民の命にすら危険が……。

 その際に、初代王であるシード1世の記録が見つかったのです…。

 もし軍部に何かあった場合は戦闘教義(ドクトリン)の注入に

 セッカ様を頼れと……。」


「カイルめ…、そんなものを残していたのか…。

 ん?しかしお前、良くここが解ったな。

 私がここに来たのはカイルが亡くなった後だぞ?」


「記録には『ここにいる、私にセッカの事で解らぬ事など無い』と

 自信満々に書かれていました。」


「流石だな!あの糞ロリコンが!!良いだろう。

 その代わり条件だ!1つ、大公と上級大将の座を用意する事。

 1つ、私が担当するのは教導官であり

 実戦に関しては、私の自由にさせて貰う事。

 1つ、私のやり方に大元帥たるお前でも口出しは一切無用!

 それが呑めるなら、やってやろうではないか!」


「それで構いません!」

「ほぅ、良い決断力だな。1週間後、王城に行ってやる。

 それまでに受け入れ準備をしておけ。

 私の教導は、地獄だからな?」

「はい!それで構いません!お願いします!!」


 自らのひ孫に懇願され、また軍人へと戻る事になったセッカ。

 それから凡そ830年。

 今の新生シード王国は、セッカの教導により少しづつ

 また初代の頃に戻っていたが、貴族の反発は根強かった。



「私の眼の色が紅蒼(くろ)いうちは、勝手は許さないよ……。」

「上級大将、何かおっしゃられましたか?」

「いや、なんでもない。次の報告を。」

「はっ!」


 だが勘違いしてはいけない。

 本作品の主人公はセッカでは無い。


「マジデッ!?」

「上級大将、何かおっしゃられましたか?」

「いや、なんでもない………私じゃないのか…。」

「??」





 そして翌日の朝10時。

 大部屋に行進曲「軍艦」が流れ出す。

 どうやらこれが起床の音楽らしい。


  『ま~もるもせむるもく~ろがねの~!う~かべるし~ろぞた~のみ~なる~』

  『きゃあああああああ!やっ、やめてください!上級大将!』

  『む?人がせっかく気持ちよく歌っていたのに…。』

  『大部屋の様子を良く見てください!全員倒れているじゃないですか!』

  『あれ?どうして!?』

  『せめて音程くらいまともに取ってください!』

  『あれ?私、ジ○イアンだった??

   ならリクエストにお答えしてヤンキードゥードゥル(アルプス一万尺)を!』

  『やめてください!ブツン……。』



「終わったか……?」

「あのお方(上級大将)は、何故あれ程の破壊力のある歌を歌えるのだろうか…。」

「解らん。それより大部屋が死屍累々だな…。」


 大部屋でセッカ上級大将の歌声?によって

 子供達がそこら中で倒れていたり

 ベッドから起き上がる事もなく卒倒していたりと

 教導官たち四苦八苦している中、放送室では怒られている人物が居た。




「なんか正座させられるとか超久しぶりなんだけど!?」

「セッカ総合教導官………、1週間前にも同じ事をして

 私は怒った筈ですよ!?」

「いやいや、アネス教導官。決して忘れていた訳では無くですね…。」

「問答無用!」


 そして私はハリセンで叩かれた。

 の女性はアネス・フォン・ヴォルネット中佐。

 まぁウルフの大将とマリア中将の子孫さんなんですけど

 ウルフの大将よりは、マリアさん寄りと言うか…。

 超生真面目なんですよね…。


「真面目かどうかではありません!

 そもそも館内放送で歌って人が卒倒するとか

 総合教導官しか持ち合わせない特殊能力です!」

「いや、特にそんな能力は持ってないんだけど…。」

「1週間前にもそうなったと私は言いました!

 そのまま修練所100周です!」

「えー、ブーブー!」

 そう言いつつも私が修練所を100周しに行こうと思った時だ。

 ガッと肩を掴まれ、正座の状態に戻された。


(正座)の・ま・ま・で・す!」

「あんた鬼だよ!!」





「さて、朝から大変な目にあっただろうが…皆、揃っているね?

 一応点呼だ、スバル、マリーネ、アーガス、リーヴァ、リルネット。

 うん、宜しい。まずは軍服に着替えてから食堂に移動だ。

 これから基本着る服は軍服になる。

 休日は私服でも良いが、王都に出る許可が得られた場合、必ず軍服だ。」


「何故でしょう?」


「うん、軍服は新生シード王国でも種類は1つだ。

 つまり軍人にとって、これが正装であると言う事になる。

 どんな相手に遭遇したとしても、失礼に当たらないと言う事だ。

 そして1軍、2軍、3軍、4軍と見て解るからだ。

 左の肩口から肘に向かって、半分になった星の印があるだろう?

 それが4軍の軍服だ。」


「あの…ハイネさんのは形が違いますけど…。」

「ああ、私は教導官でもあるけど一軍だからね。

 蔦大隊(アイビー・バタリオン)の制服は魔導銃に盾と決まっているんだよ。

 2軍は交差した2本の魔導銃、3軍は盾だ。

 そして蔦大隊(アイビー・バタリオン)の隊長格になると

 茨の蔦の中に種が描かれている特殊な印が付く。」


「あの…ハイネさんのは魔導銃に盾と

 茨の蔦と種の2種類あるように見えますが…。」


「そうだ、私は蔦大隊(アイビー・バタリオン)の第一小隊長だから

 一軍の印に隊長の印が1つ付く。中隊長なら2つ、大隊長が3つだ。

 そして総隊長には一軍の印が無くなり、隊長の印が1つだけになる。」


「もしかして総隊長って…。」


「セッカ総合教導官 兼 蔦大隊(アイビー・バタリオン)総隊長だよ。

 彼女は元々教導官だけの予定だったのだけど

 今は蔦大隊(アイビー・バタリオン)全体の指揮をとっているし

 場合によっては現場にすら出る。

 まぁ、滅多に出る事は無いよ。

 それは蔦大隊(アイビー・バタリオン)

 機能していないと言う証拠だからね。」


「ではハイネさんも兼任なのでしょうか?」

「そうだね。この印の下線が普通は紅と蒼なんだけど

 教導官を兼任すると、一番外側に白が追加されるんだ。

 そうは言っても第一小隊の出番はあまり無いんだよ?」


「そうなんですね…。」

「ここは実力主義ではあるけど、隊の数字が序列でもある。

 低い数字の人に多くのチャンスが回るように

 蔦大隊(アイビー・バタリオン)は数字が高い小隊や

 中隊の方が出番は多いのさ。

 なにしろ蔦大隊(アイビー・バタリオン)と言うのは

 大隊が4、中隊が20、小隊になると100もあるんだ。

 戦闘員だけでも425人も居て

 細かい人数も含めれば1000人を余裕で超えるんだ。」


「そんなに居るんですね。」

「言っておくがこれから食事に行く食堂のおばちゃん達も

 軍人であり、蔦大隊(アイビー・バタリオン)を支える

 重要な方々だ。戦闘には実際参加はしないが

 私達の食事を作ってくれる。

 これも初代王の考えであり蔦大隊(アイビー・バタリオン)の一員として

 数えている。それに各魔導凱や魔導機の整備員。

 輸送用の小型魔導飛空艇や中型魔導飛空艇を操縦する艇官も

 全員蔦大隊(アイビー・バタリオン)だ。

 何も戦闘をするだけが蔦大隊(アイビー・バタリオン)ではないのだよ。

 さて、長話をしてしまったね。

 サッと着替えてもらって、食堂へ行こう。」


 ハイネ少佐と5人の会話を見ていた マリアンヌ少佐は

 ギリギリと音が出ない程度に歯噛みしていた。

 表面上は冷静を装いつつ…。





「さて、ここが食堂だ。」

 ハイネ少佐の案内により、まず腹ごしらえとばかりにやってきた大食堂。


「同時に2000人が入れる広さがある上に、24時間やっている。

 さらに1軍から4軍まで勤務日か休日かに係わらず利用出来る。

 3食でなく、4食でも5食でも食べられるが

 食べ過ぎには注意するんだな。ここの食事は旨いからな。」

「あの、ハイネさん。あそこにいるのって…。」


 割烹着を着て、三角巾をつけサングラスにマスクと言う

 実に怪しい食堂のおばちゃんを5人が指差していた。


「あれは食堂のタネコさんだ。」

「タネコ…?」

「あれどうみても「食堂のおばちゃんのタネコさんだ!ベテランなんだぞ!?」……。」

 身の丈140の銀髪の女性など、そう易々と居るものではない。

 皆、気が付いているが本人が「食堂のタネコさん」だと言い切っていて

 国の上の方からも「食堂のタネコさん」だと言い切られ

 決して「セッカという名前では無い」と言われ

 全員がそういう事にしている体だ。


「と、言う事なので食堂であの格好の最中はタネコさんだ。」

「わ…解りました…。」

「何かあるのかな…。」

「変な人……。」

「なんであんな黒い眼鏡を…。」


「お前らそれ以上触れてやるな…、料理が趣味らしいからな。

 ここの料理のメニューもあのタネコさんの持ち込みだ。」


「ところでどうやって食べるのでしょう?」


「ここはバイキング形式と言ってだな。

 こうしてトレーを取って、好きなものを好きなだけ取る訳だ。

 って何してるんですか、タネコさん……。

 勝手に私のトレーに乗せないで貰えますか?

 あとこれは何でしょう?」


 トレーの上にはタネコがトングで乗せた

 山盛りの黒い物体があった。


「なごの佃煮」

「なご??」

「これだ、魔物のロウカスト」

「「「「「「虫ぃぃぃぃぃぃ!?」」」」」」


「馬鹿者!それはイナゴと言ってだな!

 鉄や亜鉛にビタミンEに銅なども含まれ たんぱく質も豊富なのだ!

 キチンと寄生虫(ハリガネムシ)も取り除いてあるぞ!

 昔の長野県では安くて貴重なたんぱく源だったんだぞ!

 ほら食え!やれ食え!もっと食え!」


 5人は、無理矢理口にイナゴの佃煮を放り込まれているハイネ少佐を見て

 セッカに恐怖を感じた。


 あとはセッカが「ほら、食えるだろう?」と

 イナゴの佃煮を食べて見せている姿にも恐怖を感じた。


「チッ、折角小さくてサクサク食べやすいものを用意したのに……。

 お?お前らたんぱく質が足りてなさそうだな?」


 このあと5人は滅茶苦茶、口にイナゴの佃煮を放り込まれた。

 そしてゲテモノを食わせるのがセッカの趣味なのだとも勘違いし

 誤解が解けるまで、5人の食欲は失せたままだった…。


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