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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS太田資正編
42/68

主人公、小田城で上杉輝虎にまみえる


 俺は持ち歩いていたバリカンで頭を丸め、衣装を正すと小田城に向かった。


 小田城にたどり着くと城に入り切らなかった上杉や佐竹などの兵でごった返している。

 『戦いは数だよアニキ』というセリフが何故か脳裏をよぎった。


 大手門に着くと俺は


「小田讃岐守の使者である。」


 と名乗り、あっさりと通された。本殿かと思うとCICに通される。

 CICのドアを上杉の兵がなにかやり方がわかりにくそうに開けると、中には何人かの明らかに位の高そうな武将がいた。


 俺は入るなり土下座して言った。


「この度はお会いいただきありがとうございます。私小田讃岐守の使者として参りました。」

「君が相馬典薬だね。頭を上げたまえ。」


 と言って頭を上げると、兜を脱いだ青年武将がいた。前聞いた話だと天パと言うことだったが、今見るとGacktだ。やばい、これは大河ドラマ『風林火山』で強い方の軍神だ。


「君が酒寄の陣で横穴を並べて我らを押さえこんだのだな。あの戦法だと一気に攻め寄せるのは難しいだろうけど守られると本当に厄介だったな。脱帽したよ。


 とお褒めのお言葉。攻める方だと浸透戦術とか電撃戦とかあるんですぜ、と無駄に語りたくなるけど我慢。輝虎は続けて。


「しかし今回は小田の城はこの様に我等の手に落ちたけど、小田讃岐守は降伏に来たのかい?」

「はい。」


 との俺の答えに周りの将はザワザワと蠢く。


「降伏だと?」

「ありえんだろ?」


「わが主、小田讃岐守は関東管領様に弓を引いたことを心から反省し、今後は関東管領様のために粉骨砕身働きたいと申しております。」

「それは良き心がけ。」

「ただ。」

「ただ?」

「この小田城は我らに返していただきたく。この地を治めるには小田の力が必要なのです。」

「それはいくらなんでも虫がよすぎるだろ…」


 といいかけた輝虎に脇の武将が耳打ちする。衣装の家紋から見るにあれは結城晴朝だな。


「…そうか。結城殿もこの地を攻め取ったことがあるが、村々は逃散し、年貢にも賦役にも応じずやむを得ず手放したという。今日も人をやって調べたがこの近辺に住人の姿が全く見当たらなくてな。どうやって隠しているのやら。」

「ですから小田におまかせいただき、我らは今後大途様(関東管領のこと)に尽くしまする。」


 しばらく輝虎は考えたあと、口を開いた。


「よし、ならば小田讃岐守にこの小田城を返そう。今後は関東の平和のため、北条と戦うのだぞ。」

「はっ」


 と答えながら俺はちょっと心のなかで舌を出していた。だってこの時代この場所で北条と真っ向勝負なんて佐竹と戦うより危険だったからだ。


「しかし弾正少弼様(輝虎の官位)、それではあまりにも甘くはありませんか?」


 と先の結城の反対側に控えていた扇に日の丸の武将が言う。佐竹家、ということはあれが義重か?思ったより老けているけど。


「佐竹山城守殿、それはそのとおりであるな。であるから相馬よ、小田讃岐守に『小田城は本丸を残して残りの郭や土塁、堀などは全て破却せよ。』と伝えよ。」


 ゲーッ。そう来たか。それって…と思い、ちらっと従者の形でついてきてくれていた戦国オタ豊島くんにこそっと聞くと


「上杉輝虎に城を落とされて小田城の防備を破却する代わりに降伏を許されるのは…史実です。」


 と耳打ちされた。俺は『これ納得してくれるかなぁ。』と不安になりつつ、


「承知いたしました。」


 と平伏した。降伏の書状をまとめた後、俺は輝虎に声をかけられた。


「しかしこの部屋は面妖な作りをしてなぁ。」


 物珍しさでこちらに来たのか。


「それにほら、これを押すと…どこからか風が出てきて実に涼しい。」


 とエアコンを動作させて悦に入る上杉輝虎。それでCICにみんないたのか。


「あのややこしい土塁がなくなると思うと攻めがいもなくなるが、小田の力でしっかり破却するのだ。」


 でもいなくなったら適当でいいよね。とまた影で思っていると


「そう、小田のすぐ北の北条城に小田城の破却が進んでいるかの監視を兼ねて梶原政景を入れることにする。佐竹殿、それでよろしいか。」

「お館様(佐竹義重)に伝えますが、異存はありますまい。」


 げぇ。梶原政景がすぐ近くに居座るの。


 ちょっと条件としては厳しいけど…合戦で消耗するよりはマシか、と思い俺は交渉をまとめた。


 帰り際に輝虎は俺に声をかけてきた。


「ところで当家に鬼小島弥太郎という親衛隊長がいてね。親衛隊、って言ったらなんかドクロのマークを付けた『えすえす』とかいう南蛮の文字が書いてある黒い衣装をつけているんだけど彼、越後で頑張っているから。ここにつれてきたら悩むだろうからおいてきたのだけど。」

「鬼小島…小島くんか!元気だったのですね。」


 俺は思わず輝虎の手を取り、涙を流しながら何度も『ありがとう、ありがとう…』と言ってしまい、それを聞きながら輝虎は『うん、うん。』と答えてくれた。いや輝虎様真の義将だわ。


 藤沢城に帰ってからも重臣の皆様の前で土下座はやり通しだったけど、氏治様の


「でも損害もなく小田城を取り返せたのだから良いではないか。」


 という優しい言葉にどうにか皆を宥めることに成功したのである。城の破却が厳しすぎる、と100貫減封されたが、腹を切らないで済んだだけラッキー、と思うことにしよう。


 そうして上杉輝虎率いる大軍は意気揚々と引き上げていった。上杉軍は…まぁいつも関東出兵は領地をえるというよりは『義』の戦なのでおいておいても(とはいっても住民を捕まえて人質と奴隷で儲けるいつものやり方が出来ずちょっと不満そうだったが)、結城には海老ヶ島城が、佐竹には筑波山の麓で小田の直ぐ側の北条城と、その後に控える山城の多気山城が与えられた。


 そして俺たち小田勢は小田城の本郭以外の破却に勤しんだ。梶原政景の鋭い目をごまかすことは出来ず、小田城は古臭い鎌倉以来の居館部を残して外郭はあの稜堡も障子堀も全て埋め立ててまっさらになってしまったのだ。大坂夏の陣の豊臣方ってこんな気分だったんだろうなぁ。


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[気になる点] 武装親衛隊。それで良いのか小島くん。
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