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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS太田資正編
38/68

小田氏治、三村城を攻めるべく布陣する

 土浦城から出撃した小田氏治の軍勢は2000ほどであった。先の上杉との戦いに見たとおり、小田家は全軍を動員すれば5000強は集められるはずである。

 しかし今回の戦は周囲の敵を抱えたままの動員なのだ。岡見治弘様は結局軍議の後


「多賀谷政経に不穏な動きありと豊田城主豊田治親殿から知らせがあった。」


と軍を率いて豊田へ向かってしまった。北の方の海老ヶ島城などの諸城も多賀谷や真壁と睨み合っており、兵をそうそう割くことができない。だいたい俺たちの手子生城も前にあったように多賀谷から攻められる危険があったので、例えばヤンキー軍団や野球軍団などフィジカル強い部隊はそちらの守りを固めていた。


 というわけでホムセン衆でこちらに従軍しているのは俺&飛加藤弟子忍者軍団(本人は手子生に残って元盗賊首領太田氏が率いている。普通は草とか忍びとか乱波とかこの時代では呼ばれているが俺の趣味で『ニンジャ』部隊と名乗らせた。)合わせて30人ほどと、天羽源鉄先生with参謀織部くん豊島くんたち、それともはや薬剤師よりもこちらに来てから偵察に燃え続ける男である稲見薬局長ぐらいであったのだ。


火砲も迫撃砲や手榴弾は忍者部隊が持っているが、先の上杉との戦いで使ったF○G-9などの小銃は真田店長が『壊れたり無くしたりしたら作るのが難しいし、薬莢は回収してもらえないと無理。』と激しく却下されたので持ってこられなかった。

よってまともな銃は忍者部隊(といってもこの時代そういう活動をするというだけで普通の武士の働きもする)に持たせた火縄銃3丁のみなのである。それでもこの時代としては望外な贅沢であるのだが。


それはともあれ、土浦城を出撃した小田勢は木田余城で補給を受けつつ、府中を目指して北上した。


まず目標としたのは常陸府中の南側を流れる恋瀬川の対岸、つまりこちら側の岸に建つ三村城である。


三村城は恋瀬川の南岸の丘陵に築かれていた。北の三方は川と深田に囲まれ、南側のみが土浦から続く大地につながっているが、そこには当然掘割や門が築かれていた。


今の出島にあたる霞ヶ浦に突出した地域は小田家の菅谷氏が支配していたから宍倉城から船を出せば三村城を取り囲めそうなものだが、恋瀬川は府中城主の大掾氏一族がガッチリと支配をしていたからそうも行かない訳であった。


「三村城、一族の大掾常春を城主としているだけはあって結構大きな城ですね。」


 俺は馬上でお館様に話しかけた。今までの経緯その他があってホムセン衆は結構こんな無礼を許されているのだ。これが気さくな小田氏治様でなくて織田信長だったりしたらマジ首が飛んで居るだろうと思う。信長でなくて謙信とか家康の次男の結城秀康なんて本当に斬り捨てていたりするし。


「うむ。しかしこの城を落とせば恋瀬川の南岸は完全にこの小田のものとなる。そうなれば北に進んで大掾をそのまま滅ぼすもよし、西へ向かって太田資正の片野を伺うのもよし、だ。」

「佐竹の援軍が現れれば厄介ですが、その点は大掾と水戸の江戸が諍いを起こしているおかげで大丈夫そうですし。」

「そのとおりだ。佐竹は江戸に味方をしているからこちらには援軍は来ないな。これこそが好機よ!」


 と氏治様は大きく笑って馬を飛ばして進まれた。

 そして三村城をのぞむ南側の大地に小田勢は陣を引いたのである。


 三村城へ降伏勧告の使者が送られたが、城主大掾常春はそれを一蹴した。それを受けて三村城への攻撃は翌日から行うことを決した。


 その夜、俺の宿所に忍者軍団の太田頭領が現れた。スッと音もなく現れるその姿はすっかり一人前のニンジャに見える。さくらさんや五月姫と仲良くした後に現れる飛加藤師匠のマネをするようにはなってほしくないが。


「旦那。」

「どうした?」

「佐竹の援軍についてですが。」

「江戸と大掾が揉めているから来ないのでは?」

「それが旦那、佐竹は来ないのですが…」

「どうした?」


また聞いてしまった。それに太田角兵衛は答えて


「どうも太田資正がこちらの出陣の動きを読んだ様で、江戸や佐竹と話をつけて揉め事を一旦治めてしまったようなのです。」

「なんと。」

「流石に揉め事自体は…いつもの所領争いですが…は保留になったんで江戸重通や佐竹義重が兵を出すことはなかったのですが。ていうか佐竹はなんか別件でどっかに出陣してますぜ。」


 それを聞いて俺はホッとした


「なら良かったじゃないか。」

「それがよくないんで。まず江戸重通に備えていた大掾貞国の兵が全部こっちに向かってきてます。」

「い、いちおう大掾家全軍相手にはするつもりでお館様もいるから…」

「後これで手すきになった太田資正も出陣の動きがありますぜ。」

「それはまずい…」


 俺は急ぎホムセン衆のみんなを集めて相談し、お館様の所に向かうことにしたのだった。


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