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戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS上杉輝虎編
30/68

田ヒヒの旗に突撃せよ

小田の塹壕を攻撃するも攻めあぐねる上杉軍。その時、上杉の側面に赤い軍団が現れた!『最高の頃合いで全力で殴りつけるぜ!』さっそうと現れたヤンキー軍団。小島団長は上杉輝虎にタイマンを挑めるか!

そもそも小島団長の一団、元はと言えば織部君の『同時に正面攻撃を仕掛ける』はずだったのだが、見つからないように筑波山の麓(今の筑紫湖の辺り)を回り込んでいるうちに道に迷ったらしい。


 後で聞いた話だと迷った上かなり大回りをして、ようやく戦場が見える所に出てきたら小田家はすでに塹壕に潜り込んでいてそこに上杉が攻めかかっているところだった。


「団長、俺達って『正面』を殴りつけるために出てきたんですよね?」


 ヤンキー軍団の団員の須藤くんが小島団長に尋ねた。


「これってどこが『正面』になるんすかね?」


 小島団長は戦場を一瞥するとスッと手を上げて指差したと言う。


「あそこだ。あのタヒヒ、とか書いてある旗のところだな。」

「タヒヒ?」

「ほら見えるだろ田んぼの田、にカタカナのヒ。」

「おお、見える見える。」

「あのでかい旗こそ『正面』に違いないッペ?」

「間違いないす!さすが団長!」


 と意気投合したヤンキー軍団は先頭の方で殴り合っている部隊には目もくれずにまっすぐ『田ヒヒ』と書いてある旗の元へ殴り込んだ。


 ブウゥアン!ブアァン!ワン!


 巨大な爆音が戦場に響き渡る。それと同時に『パラリラパラリラ』とけたたましいサイレンの音。


 ヤンキー軍団は『せめて雰囲気だけでも』と背中にアンプとスピーカーをぶら下げ、大音量で懐かしい『走り』を再現したのだ。


 そのけたたましい響きに上杉の兵は一瞬混乱した。


「御実城様(上杉輝虎)、左手に新手でございます!まっすぐこちらに突っ込んできます!」


 特攻服に胴丸を付け、髪を逆立て手には鉄パイプ。背中に刺した旗は…


「旗印は『風林火山!』武田の兵と思われます!」

「馬鹿な!武田が常陸をウロウロしているはずはない!」

「それが爆裂弾を投げつつ大きな音を立てて暴れまわり、こちらは面食らって対応がおくれております!」

「武田のどの手のものだ!」

「奴らは赤い装いで統一しております(チームの特攻服が赤)!『飯富の赤備え』かと!」

「飯富虎昌…そんな重臣がわざわざ?」

「御実城様!奴らには六文銭を掲げているものがおります!また少ないと思いきや背後から無数の鬨の声が!伏兵を伏せているようです!」

「真田弾正もおるというのか!」


 解説しよう。赤備えと思われたのは単にチームの色が赤かったからだ。風林火山も六文銭も団員の趣味である。ちなみに多分勝手に使ったのが本物の武田にバレたら処されると思う。


 秘策は突っ込む時にそのへんに隠してきたスピーカーやプロジェクターにあった。

 スピーカーからは多くの兵がざわめいているような音が流れ、プロジェクターは小雨によく幻影で大軍勢の様子をおぼろげに映し出した。アシ○ールの『まぼへい君作戦』丸パクリである。


 児戯めいた方策ではあったが、上杉勢の集中を一瞬破るのには十分であった。


「お前ら!通常の三倍の速度で突っ込むぞ!」


 と自らが赤く角つきのヘルメット(色塗って角着けて自作した。)を着けていた小島団長、猛然と鉄パイプを掲げて上杉の本陣に突っ込んでいく。


 そう、小島団長がまっすぐ向かった『田ヒヒ』の旗は、すなわち上杉輝虎本陣の『毘』の旗である。そのとんでもない勢いに上杉の兵は一瞬手が緩み、小島団長はまっすぐ突っ込んだ…輝虎のもとに。


 他の団員はあっけにとられて動かないでいるうちにハッと立ち直った上杉勢に行く手を阻まれてしまった。


「団長ぉ!」


 と団員たちは叫ぶが、団長の姿はすでに上杉の軍勢の中に飲み込まれている。そうするうちに上杉兵が


「武田め!今度こそ決着着けてくれるわ!」


 すごい勢いで押し寄せてきた。


「団長!団長を助けないと!」


 と須藤くんは必死に進もうとするが、副団長の田原くんは


「その前にこの敵をなんとかしないと!」


 と体制を立て直し、


「シールドウォール!」


 とポリカーボネート盾を並べて上杉の攻勢をやり過ごし、手持ちの火炎瓶や手榴弾を投げつけて上杉勢が混乱したすきに後退する。


「田原くん!進まないと小島団長が!」

「考えなしに進んだらこれ全滅だよ!悲しいけどこれ、戦争なのよね。」


 と残る団員を指揮しつつ筑波山麓に向かって脱出を図るのであった。


--


その頃、結果的に単騎で突っ込んだ小島団長はその勢いに斬られたり射られたりせずに奇跡的に輝虎の本陣の天幕に突入していた。そこで白銀の鎧に身を固めた小柄な武将を認める。


「お前が大将首か!大将なんだろ、首置いてけ!」


 と襲いかかる。輝虎は一瞬反応がおくれ背中を見せていた、と思ったが、こちらを振り向きもせず太刀の柄で小島団長の鉄パイプを受け止めた!


「ノールックで交わすとはお前ニュータイプか!小僧が!小僧が!」


 『小僧が、小僧が』と言われて輝虎は自らが川中島で武田晴信の本陣に切り込んだときのことを思い出した。『そう言えば僕もあのムサイおっさんに小僧が!、小僧が!っていったなぁ。』


 小島団長は何度も鉄パイプを打ち付けるが、輝虎はするするとかわしてしまう。


「何だお前!絶対頭にピキーン、とか変な稲妻が走っているだろう!」


 …なぜそれを。僕が毘沙門天から受けている天啓をこの男は知っているのか?


「御実城様!下がって!」


 と兵が小島団長を取り囲む。槍が向けられた時に輝虎は


「待て!」


 と言って自ら太刀を奮うと小島団長の頭をぽん、という感じで撃った。


「ぐはぁ!」


 団長は倒れる。頭は真っ二つにはなっていない。


「峰打ちだよ…手加減しないと骨を砕いてしまうのだけど、うまく行ったようだね。」


 と言って輝虎は太刀をしまうと


「この者は生け捕りにせよ。なかなかおもしろい男だ。」


 と命じたのであった。


 上杉家は小田の塹壕陣地を攻めあぐねていた。輝虎が小島団長の相手をしている間も全く進捗がない。小島団長をふんじばって落ち着いたところで輝虎は戦場を俯瞰して状況を分析した。


「…これはいたずらに攻め続けても兵を失うだけだね。ここは一旦引いて佐竹の到着を待つとしよう。」


 輝虎の下知に小田の塹壕に攻めかかっていた上杉勢は兵を収めた。


--


「上杉勢が引いていきます!」


 小田の物見が興奮した様子で報告する。


「本来ならばここで追撃すれば長篠か、手取川か、といった様子で一方的に勝てるのでしょうが…」


 と本陣に戻った俺、相馬翔太郎にすっかり参謀が板についてきた織部くんはいった。


「しかしそれには兵も武具もたりませんな。」

「俺もそう思うわ。」


 と俺は答えた。長篠では元々退く武田はその時点でも山県昌景など名のある武将を失っていて、しかも兵力は織田が武田の3倍近かった。今回は上杉の名のある将は打ち取るどころか負傷したものもいるの?と言う状況で雑兵にはそれなりに被害を与えたとはいっても元々上杉が2倍の兵力があるのだ。一旦退かせただけでも良しとしなければならない。


「上杉は一旦このまま夜営に入るようです。警戒は緩めていませんが。」

「ここは団長を助けに夜襲をしましょう!」


 とヤンキー軍団の田原副団長が訴えてきた。


「…それは困難だと思います。上杉勢はむしろこちらが夜襲に出た所を喰い破る構えです。」


 と冷静沈着に言放つ織部くん。


「それに単騎で突入したとなれば生きているとも…」

「なんでそんな事をいうんだよ!」


 田原くんは織部くんを殴り飛ばした。


「団長なら!団長ならきっと上杉輝虎とやらを討ち取って生きているんだよ!団長は無敵なんだよ!上杉輝虎がやられたから奴らは引いたんだ!」

「…田原くん。それはないと思う。」


 と俺は言った。


「輝虎が討ち取られたなら一目散に越後に戻っていると思うんだ…気持ちはわかるが…」

「…織部の言うこともただしそう、って分かるんです。でも。」

「ここは相手が引いたすきを突いてこの場を脱出したほうがいいでしょう。陣が長くなるとこちらは弾薬が足りなくなってジリ貧です。」

「夜襲!ならやろうぞ!輝虎の首を自ら取ってみせる!」


 とそこにノリノリで現れたのは小田家大将、小田氏治本人である。


「菅谷様、頼みます。」


 と織部くんが指示すると重臣菅谷様は氏治公のスポッとVRゴーグルをかぶせる。


「ぬう。また戦国無敵か?」


 と言い出す氏治様であったが、


「お!目の前に輝虎が!ここは正々堂々と一騎打ちか!素手で戦おうとは男気がある!」


 と言いだした。どうやら今度は鉄拳とかバーチャファイターっぽい格闘ゲームの世界で上杉謙信(輝虎)と戦っているようだ。


 俺たちは氏治様を聖帝サウザーリスペクトな輿に乗せると、まだとどまっているように篝火などは焚いたままで密かに筑波山麓を抜け出し、小田城に撤退成功したのであった。


小島団長のつくった混乱に上杉家は一旦攻撃の手を休めた。そのすきに小田城へと退いた小田勢。上杉は体制を立て直し小田城に襲いかかる。小田は生き残ることができるのか?

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