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戦国ホームセンター  作者: 四郎壱郷
VS上杉輝虎編
3/68

いったい俺たちはどの時代にいるのか。

おばさんの称号を修正しました。(5月6日)

 『争いはせず話し合いましょう!』おばさんを抱えて盗賊は去っていった。


俺たちはあっけにとられていたが、我に戻るとホムセンの中に入って話し合うことにした。


社会科教師の天野先生が言うには


「彼らの言葉や衣装、装備などから見てここは室町時代後期から安土桃山時代にかけての、いわゆる戦国時代の可能性が高いと思います。盗賊の着けていた胴丸の形が室町期以降のものですな。」

「…戦国時代…」


 皆が絶句する。


「戦国自衛隊ならぬ戦国ホームセンターですな。」


 とオタク集団の中でも歴史オタクの長、豊島くんが言い出す。


「…戦国自衛隊か…」

「となると。」


 と薬局長の稲見さんが続ける。


「薬などの使用は最小限にしてなるべく残さないと。やれるならタイムスリップものの定番のペニシリン作成などもしてみたいところですが試薬など現実的なところを考えると厳しい。」

「タイムスリップものだと『歴史の修正力』が怖いですのー。」


 と豊島くん。


 『戦国自衛隊』、それは昭和の時代、1971年に半村良が発表したSFの傑作である。原作では自衛隊の駐屯地ごと転移したため、装備が十分で、リーダーの伊庭義明が長尾景虎(上杉謙信)と手を組んで織田信長に成り代わるけど、最後は明智光秀の代わりになった細川幽斎に討たれてしまう。

 戦国自衛隊はその設定の面白さからなんどか映像化もされており、いちばん有名なのは1979年の千葉真一主演の映画だろう。こちらも長尾景虎と手を組んで内ゲバをしながら武田信玄を倒すけど、やっぱり最後は討たれてしまう。途中の開き直った部下のヒャッハーシーンがエロかった思い出。

 後より緻密なIfSFよりも派手な方向に振った1549とかもあるけど、個人的には2006年のドラマ関ヶ原、が好きなのだ。これは津川兄弟の家康も見事だけど藤原竜也の小早川秀秋が、実に戦は強いけど若すぎて、かつ元来豊臣の後継者として育成されていたところから小早川に体よく追い払われた諦観というか風の谷のナウシカの皇兄ナムリス的な空虚さも感じさせられていて、まあちょっと無謀な本筋とかおいておいて良いのだ。


 閑話休題。


 それはともかく共通しているのは『全滅』である。まぁ供給はないのだから装備や弾薬はいつかは尽きる。しかも俺たちは自衛隊ではなく、民間人だ。そもそもヘリコプターや機関銃どころか拳銃も持っていない。どうするのよ?


「戦国自衛隊と言えば原作だろうが映画だろうがドラマだろうがだいたい全滅エンドですから。それは避けたいですね。」


 と俺は言い出した。


「相馬先生、その通りですな。当面の燃料や食料はありますが、それに頼っていてもいつかはなくなります。」


 と真田店長。さっきまでの『ドクター○トーン計画失敗』の落ち込みから今度は戦国自衛隊ならぬ戦国ホームセンター生き残り、に素早く頭を切り替えたようだ。店長の部下らしいおじさん(部長の後藤さんというらしい)は


「この切替、もっと早く経営判断的に欲しかったっ…!」


 と言っていたけど。


「生き残るためには手持ちの資材や技術を有用に利用しつつ…やはり天下を取るのはどうでしょう!」


 と力強く宣言したのはオタク集団の中で歴ヲタじゃなくて転生を強く主張していた中村氏である。


「だから中村氏、それやると『歴史の修正力』でみんな死んでしまうでござる。」


 と今度は歴ヲタの豊島氏。


「ぐぬぬ。とは言っても『仁』ではまんまと美人の妻ゲットして現代でも子孫とよろしくやっていたではないか!」

「よろしくやっていたのは原作版で叩くやつもいたでしょうが!ドラマの誰とも結ばれず綾瀬はるかの美しい手紙で終わるエンドのほうが拙者は評価が高い!」


 とオタクが激しく論戦を交わす。うん。間違えてはいないけど『仁』の話は今話すことじゃないよね。ペニシリンはそのうち作らないといけないかもしれないけど。


「ひとまず我々は何年かわからないけど戦国時代ぐらいの関東の茨城にいる、ということでよろしいですか?」


 と冷静な稲見薬局長が天野先生に話を振る。


「ええ、ここは筑波山と、川の流れから見ても小貝川の東岸がわ、茨城…常陸で間違いなさそうです。」

「となるとこの辺りを治めているのは。」

「戦国末期、安土桃山時代なら佐竹義重ですね。」


 佐竹義重。それは常陸を代々治めてきた源氏の名門、佐竹氏の当主で『鬼義重』と言われた猛将である。常陸の大半と会津に至るまでの広い範囲を勢力下に治めて佐竹氏の全盛期を作り出した。あの有名な伊達政宗を人取橋の戦いで破ったが、豊臣秀吉の惣無事令(不戦命令)を守っている間に(佐竹氏は小田原の後北条氏との戦いの関係上守らざるを得なかった)復活した伊達政宗は火事場泥棒的に摺上原の戦いで会津を治める蘆名氏を滅ぼして南陸奥を手に入れたのである。

 義重本人も巨大な金砕棒を陣頭で奮う無双の大将であり、そのために『鬼』と呼ばれたのだ。因みにこの時代、常陸にもう一人『鬼』がいるのだが…それは後の話にしよう。


「であれば関東有数の知将、といわれた太田資正も筑波山の裏側の片野城におりますな。太田資正か佐竹一門の佐竹義久あたりに佐竹家に仕える伝手をつけてもらえば生き残れるやもしれません。小田原北条氏では小田原征伐で改易されてしまいますからねぇ…最後は秋田に行かなければ行けないかもしれませんが。」


 と腕を組む郷土史家天野先生。


「場所的には結城氏に仕えるのも手では?家康の息子の結城秀康の時代まで生き延びればなんとかなりそうでござる。福井に行かなければいけないかもしれないけど。」


 と歴ヲタ豊島氏。


「その辺りの話となると、今が1580年代ぐらいということですよね?」


 と俺が口を挟むと天野先生は


「お、相馬センセ詳しいですね。」

「いや、ちょっとすきなものでかじったぐらいで…本能寺の変ってもう起きたんですかね?」


 いずれにせよ今がどこの時代でこの辺りを治めているのが誰かわからないとそもそもホムセンが存在する許しすら得るのが難しい、とのことで先の盗賊に対処しつつ情報を集めよう、ということに決した。


「しかし佐竹義重ならいいけど息子の佐竹義宣だと困りますね…。」


 と天野先生。


「そうそう。義宣だと迂闊に動くと呼びつけられて誅殺されちゃうもんね。行方三十三館みたいに。」

「あれは土佐山内氏の『長宗我部家臣よっといで相撲大会』の虐殺並みに容赦ないですね…」


 と豊島氏の言葉にうなずく天野先生。怖い怖い。


「となるとまずはさっきの盗賊みたいな奴らから自分たちの身を守らないとな。」


 とヤンキーリーダーの小島くんが言った。


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― 新着の感想 ―
[一言] こうなると爆弾取り敢えず黒色火薬か早いところでアルミとホッカイロでテルミットを作り鉄パイプ爆弾でコンプレッサーで擲弾筒モドキ創って信管はマッチを改造で触発信管で敵陣に爆弾の雨を降らして爆発で…
[気になる点] アップロードをミスってませんか? 1話と同じものが2話としてアップされていて 3話にストーリーがつながっていませんが。
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