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戦国ホームセンター  作者: 四郎壱郷
VS上杉輝虎編
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グレートホムセンいずれかの世に流れ着く

すみません。アップロード失敗していました。差し替えます。ご指摘本当にありがとうございました。

※おばさんの称号を修正しました。(5月6日)

 グレートホムセンに朝が来た。シャッターを開けると昨日とはうって変わって外は抜けるような青空である。店内には50−60人ぐらいの人が取り残されて夜を過ごしていた。

相変わらずスマホも圏外でテレビもラジオも全く入らない。


店長の真田さんは男性の店員と俺たち若い男たちに声をかけ、俺達は安全ヘルメットを装着してホムセンの外に出てみた。


 ……グレートホムセンの建物やショッピングセンターのガソリンスタンド、ドラッグストア、100円ショップなどの建物はあれだけの雨風にも関わらず、変わらず建っていた。


「大きな被害がなくてよかった…。」


 と年配の店員が安堵の声を漏らす。


 が、しかし。建物を取り囲むように数十センチはあろうかとうず高く積まれた(店長さんやりすぎだ)土嚢の向こう側、そこにあるはずの駐車場や、その向こうの道が……なかった。


駐車場のあったはずの場所にあるのは松林ばかりだ。一同はぐるっと歩いて店の裏側に回って見たが、そちらもホムセンのある高台の下側に広がっているはずの田んぼや道、電線や民家は全く見えず、沼地が広がっているばかりである。


「……これはどうしたことだ。」


 思わず俺は呻く。すると数人のネルシャツを着たいかにもヲタクという感じの集団が騒ぎ出した。


「これは異世界転生でござるよ!」

「どなたか寝ている間に女神にあってご加護をもらったもの、超能力を得たもの、勇者はおりませんか!」

「異世界無双が始まるでごわす。デュフフ。」

「美少女エルフが小生たちを待っている!」


 俺たちは『何を言い出すんだ…』とばかりに顔を見合わせた。


しかし皆で確認してみてもどうやら誰も女神様には会っていないらしいし、超能力や念じると『ステータスオープン』できたり、召喚できる人もいないらしい。


「残念ながら異世界召喚ではなさそうですな…」


 と真田店長が言うと、オタクのリーダー格の青年は、人差し指で眼鏡をグィッと持ち上げると


「いや、女性陣には確認できてないから『勇者』は女性の可能性もあると思うのだ。」

「でも。」


 と今度は青いチェッカーのネルシャツを着た別のオタクが言う。


「俺歴史ヲタだけとこれ『異世界転生』ではなくて『タイムスリップ』なんじゃね?ホームセンターごとトラックに轢かれた訳でもないし、社畜が燃え尽きてゲームにログインしたまま、というわけでもなさそうだし。」

「豊島氏!君は異世界転生を否定するのか!」


 と最初のオタクが反論する。


「でも中村氏、特に空にドラゴンが飛んでいる、とか変なこともないしこれやっぱり日本なんじゃないかなぁ。」


 と青シャツの豊島氏が答える。


「ぐぬぬ…異世界ならばせっかく鍛え上げたこの体と異世界に役立ちそうな知識で無双する気だったものを…」


 と中村氏。リアルでぐぬぬ、と言う人を始めて見たわ。


すると一人の身なりの良い、額の広い中年男性が声を上げた。


「いや、どうやらタイムスリップのほうが正確なようです。あれを見てください。」


 と男性が指差した先には……昨日見たのと変わらない筑波山の姿があった。


「山の見え方からしてここは元通りのつくばということか。」


 と俺が思わず声を出すと、店の内側から待ちきれなかったのか、女性や子供も出てきた。

皆駐車場が消え失せて松林になっているのを見て絶句している。


「ここはもしかすると未来の世界なのではないでしょうか?」


 とちょっとかわいい女子高生が言い出した。しかし双眼鏡を手にして山の方を見ていた店長さんはそれを聞いて、


「いや、未来ではないようだ。ほら、筑波山の頂上付近にロープウェーの駅やアンテナ、中腹の大鳥居も見えないし右手の宝篋山のアンテナもない。未来ならばいくら文明が滅亡していてもそれらの痕跡ぐらいは残るだろう。」

「すると……ここは過去!」

「だと思われますな。」

「果たしていつの時代に来てしまったのやら……」

「裏手の沼や河川の状況を見たところ、関東平野が開拓されるよりは前、少なくとも江戸時代よりは前でしょうな。」


 と額の広い中年男性。


「あ、高校で日本史を教えていて郷土学の研究が専門の天野といいます。」


 と天野先生が名乗った。


「過去の時代ですか!となると旧石器時代や縄文時代だと面白いですな!我々が様々な技術を用いて文明を発展させ、日本発祥の『科学帝国』を打ち立てるのです!そそるぜ!」


 と嬉しそうなのは真田店長だ。いいのか、店長。どっかの石博士みたいな事を言いだしたが。


「いずれにせよこのままウロウロしていても始まりませんな。みなさん、一旦店内で相談しましょう。」


「さてどうやら我々はとんでもないところに来てしまったようですが、こんなこともあろうかと…は思っていなかったのですが、当グレートホムセン、予期せぬ事態に対しては可能な限りの備えがしてあります。まず、ご覧の通り太陽光発電と蓄電池は故障がなく、店内の電気は保たれております。それに。」


 と真田店長は続ける。


「当店の商品は実に充実してまして、発電機もこの通りホンダ製にヤマハ製!エアコンプレッサーも日立工機製など一流の品が!DIY工房の名目で(名目って言うな、と真田さんの部下っぽい人からツッコミ入っていた)糸鋸電動鋸のみならず、フライス盤などの金属加工工具も一式あります。そして3Dプリンターも充実装備!なんと金属積層加工用の最新製品まで備え付け!(だから金食いすぎで方針見直せって本部から来ているんだよ…とまたツッコミ)」

「太陽光発電である程度供給できるという話はありましたが、発電機などは燃料がないと動かないですよね?そのへんは?」


 と俺が突っ込むと


「いい質問です。併設ガソリンスタンドの施設が動作するか先程チェックしましたが、無事でした!昨日補充されたばかりでガソリンは48klタンク2本と軽油タンク1本、そして灯油も一タンク分があります。」


 『おお』という声が漏れた。


「これだけあれば当座の間は十分とでしょうが、ガソリンなどは劣化しますし、補充も静岡の油田見つけ出して施設を建設、とかフィクションおなじみの流れを達成しないと無理ですから、まずは浪費せず大切に使いましょう!」


 これには皆うなずく。もちろん資材は結構あるし、工具も有るとなると状況がはっきりして米軍か自衛隊が救助に来てくれるまでは粘れそうだ。そもそもそれらが存在している世界なのかはわからないけどぜひ期待したい。


「食料はこの人数ならば2−3週間の備蓄と、園芸コーナーには種芋などの農作物の材料のみならず、種籾もあります。」

「お、種籾が有るのか。トラクターなども?」


 と起き上がったのは日によく焼けたおっちゃんである。


「俺、飯泉っていうんだけどこの辺りで農家やっているんだ。色々揃っているならすぐに救助が来るような感じじゃなければ自給自足も考えたほうがよさそうね。」


 とそのおっちゃん、飯泉さんが話した。


「でも病気になったりしたら…」


 と小さな男の子をつれた母親が話すと


「薬についてはかなりの量があります。実は昨日薬を納入した業者がその後病院にも周る予定で、搬入庫に残されていたトラックを見ると本来病院用の点滴や抗生物質などもありました。とうの本人は外に出られたようで…見当たりませんが。」


 と眼鏡をクィっと上げて30代ぐらいの知性的な男性が話しだした。薬局長の稲見さん、だそうだ。


「それならば少しは役に立てるかも…」


 と俺も言い出す。


「相馬翔太郎といいます。まだ3年目ですが一応医者です。」


 『おお、お医者様がいれば安心…』などと声が上がるが、俺は慌ててそれを打ち消すと


「いえ、まだ研修医なんであまり期待はしないでください。」


 となだめる。


「そうは言っても免許持ちがいるなら一安心だよな。お前ら。」


 と連れ立ったヤンキーの中心から立ち上がったのは金髪のいかにもヤンキーという感じの剃りこみが入った頭をした恰幅のいいお兄さんだ。さすがグンタマチバラキツッチーの名産地、未だにこういう感じの兄さんがいる。


「俺は小島弥太郎、力仕事は俺たちも役に立つぜ。」

「僕たちもなにか出来るかと。澤田といいます。高校で野球部をしています。」


 と皆が協力的な感じになった。


 どうやらすぐに救助が来るような感じではないので、家具コーナーの寝具なども積極的に使用することになった。トイレは…屋上のタンクが空っぽになると店内のトイレは動作が怪しいということで、ひとまず工事用のトイレを外側に設置となった。


「さて問題ですが、ここはどうやらつくばらしい、とわかりましたが、一体どの時代なのか、ということですが…周囲を探索して情報を集めましょう。若手の方々はお手伝いをお願いします。こんな状況ですから、なにに出くわすかわかりませんからみなさん、これを着てください。」


 と真田さんが持ってきたのは…先程も着けた工事用の安全ヘルメット、安全靴(鉄板入り)防刃ベストに防刃アームカバーに防刃手袋。そして『念の為』と皆バールのようなもの…じゃなくてバールやジュラルミン製大型懐中電灯、スコップ。

そして電気は使えるので記録用にデジカメなどを持って出た。


 すると中年の神経質そうな太った女性が言い出した。


「こんなところに閉じ込められていてももう我慢できないわ!私も行く!」


 真田さんたちは残るように説得したが女性は聞き入れず、やむなくヘルメットをかぶってもらって一緒に出ることになった。


そして装備も整え、いざ出撃!と店の外に出たところ…店の前の松林の縁に、20人ほどの槍や刀、弓を手にした男たちがいた。革鎧のようなものや胴丸などの鎧をつけている…見たところなんていうかみすぼらしい。こりゃ鎧武者というより雑兵か盗賊だな、と思っていると一団の中央にいる男が声を張り上げてきた。


「お前ら※★だっぺか?〜めしか金に★※※寄越せ」


 っぽいことを言っている。それを聞いた天野先生が


「やつらは盗賊です!食料や金品を寄越せと言っています!」


 やっぱ盗賊か。


「なんということだ…ここは旧石器時代の未開の地ではないのか…そそらないぜ…」


 とどこかがっかりしている真田店長。しかし盗賊共は刀を抜き出し、槍を構えてこちらに向かって戦闘態勢をとっている!


「店長!なにしてる!ここは動かないと!」


 と俺は前で突っ立っている店長の腕を取ると土嚢の後ろに引き戻そうとした。


 すると盗賊の放った弓がこっちに飛んでくる!


「うがっ!」


 と変な声を出しつつ俺は持っていたシールドを構え、そこに弓が突き刺さった。鏃がちょっぴり盾を抜けて顔を出しているけど、割れたり飛び散ったりはしないですんだ。

あってよかった真田店長謹製急造ポリカーボネート板に取っ手をつけた機動隊風の盾。

俺は弓が刺さったままの透明のシールドから盗賊を見て、警戒しながら真田店長を土嚢の後ろに引っ張り込む。それに先立って小島の兄ちゃんが声を上げる


「シールドウォール!」


 声とともに盗賊共の前に盾を構えたヤンキーの一団が密集して陣を作る。お、兄ちゃんキラーエイプを知ってるのか。いい趣味しているな。アレは名作だ。それまで無理な戦いをした無能なぼんくらに見えたハロルド王がキラーエイプを読んでからは王の器たる英傑に上書きされてしまったもの。


「なんだなんだ、その変な透き通ったのは!」


 と今度は分かる言葉で盗賊が喚く。シールドウォールと槍を構えた盗賊がにらみ合いをしている。


 すると先程無理についてきたぽっちゃりおばさんがいきなり盗賊と俺達の間に割り込んできた。


「みなさ~ん!戦ってはいけません!争いごとは話し合いで解決できるのです!話をしましょ〜!」


 なにを言い出すんだこのおばさん。どうみても話し合いで解決できる相手ではないのは確かだろ。しかし、それを聞いた盗賊の頭目らしい男がひょいっとこちらの方に出てくる。


 まさか話が通じたのか。これぞ話し合い精神の勝利!と勝ち誇ったような顔をするおばさんのところに頭目はスタスタと歩いていく。


「…あれ問答無用で斬られるんじゃね?」

「でもこちらは飛び道具はないから出て助けるのは難しいぞ…」


とシールドウォールのこちらがわで小島くんと仲間たちがヒソヒソしていると、盗賊の頭目はおばさんのところにたどり着いたかと思うとひょいっておばさんを肩に担いでクルッと向きを変えて去っていく。そしてこちらに頭を向けると頭目は言った。


「おなごを差し出すとは殊勝な奴ら。今日はここで帰ったる。」


  うん。今回のも俺でもわかった。なんかおばさんを差し出して許してもらったことになったらしい。


 …盗賊はこちらを警戒しつつ松林の中に消えていった。あっけにとられた俺達を残して。


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― 新着の感想 ―
[一言] 弓が飛び、弓が刺さる……原始人もトリップしてきてね?
[一言] いやあー,行幸々、物語初っ端で悪は自滅ですか? タイムスリップで一番厄介な左翼ババアが勝手に自滅で無駄飯喰いは、盗賊に回収頂いてババ抜きのババは、どうせ厄介しか掛けないので一番必要ないババを…
[気になる点] 1話目と同じ内容の投稿になっていませんか?
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