グレートホムセンと軍役の編成
2000ポイント本当にありがとうございます!励みます。
貫高と石高の換算、簡便化の為に一貫=2石で統一してます。
時期や地方の違いなどなど色々換算法があるのは存じておりますが、その点は諱呼び同様
分かりやすさ優先でご容赦を。
手子生城を拝領した、郷土史学者で高校の社会の先生だった天野先生改め
天羽源鉄さんは帰りの道中
「どうしてこうなった…」
とつぶやきながら手子生城に戻っていった。元天野先生は熱烈な天羽源鉄のファンだったのだが、小田城に結城家臣多賀谷政経撃退の報告に行ったら自らが天羽源鉄として任命されてしまったのだ。
手子生城に到着した俺達はひとまず城の兵や寄騎に着任の挨拶をすると、手子生城のさらなる防備の向上を図るが、法度の変更は(今の所)行わず、年貢や動員は旧来定められた分で良い、と伝えた。
実際には昨年から収穫は数倍に膨れており、野菜やじゃがいもなどの生産もあって相当に豊かになっているはずだが、ここは増収した分はそのまま取り分にしてね、とサービスサービス、なのだ。
それに伴い周辺から聞きつけた人々も流れ込んでいて人口も増え、更に耕作地も飯泉のおっちゃんの指導もあって泥濘地や松林も耕地化を進めたこともあり、実際には動員人数も潜在的には相当増加しているはずなのである。
といってもトラクターなどの機械化を導入したのはホムセン周辺と手子生周辺のごく限られた地域に限定し(とにもかくにも燃料は貴重。)それらも大掛かりな用地整理に最初用いただけでその後の持続的な農業はいわば昭和初期的な人手頼りなスタイルで持続可能な生産の拡大を目指していた。まさにSDGs。
それでも前に話が出た江戸期から昭和初期ぐらいまでに導入された動力を要さない農業器具や肥料の使い方はバンバン導入したので…まあ見かけは人力だよりの伝統的農業だけど専門家が見ると時代が300年ぐらいずれているよなー。という恐ろしい状況となっていた。
とは言え、用水路の建設など実際に江戸時代になってから行われ、耕地面積と収穫を急増させた政策が、この時期取られなかったのには理由がある。それはこの時代が戦乱の時代だからだ。せっかく用水路や田畑を作っても他国の軍勢が攻めてきてお構いなしにぶち壊していくのではろくに工事ができないのである。
そのため、俺達は開墾を行う一方で住人たちのためにより守りを固める必要もあるのだ。
グレートホムセンに戻った俺達は人を集めて報告と、今後についての話し合いを始めることにした。
「…まさか天野先生こそが天羽源鉄だとは。」
と歴史オタ代表になっている豊島氏が目を丸くする。
「我々の存在が小田氏治様に認められたというわけですな…これでホムセンが問答無用で攻められてどこにも味方がない状態は避けられた、と。」
と稲見薬局長。
「逆に小田家が戦に出るときには動員に応じなければならない、ということになりました。」
天野先生の説明に豊島氏は
「所領は何石とされたのでしょうか。」
「石ではなく、2000貫と。」
「2000貫だと4000石相当ですか。昨年のホムセンと手子生城の収穫を合わせますと、石高だと8000石から1万石はありそうでしたが。」
と元々ホムセンで経理をしていた栗田さんが報告する。
「それは随分下に見られたものですなぁ。」
と真田店長が言うと、天羽源鉄さんはそれに答えて
「いやそこはむしろ小田氏治様の温情ですな。」
「といいますと?」
「所領を認める、ということはその分の軍役を果たさなければならない、ということです。ですから与えられた土地の広さに対して石高・貫高が低いということは収入に余裕があっても軍役や普請などに駆り出される分が少なくていいということになります。」
「それはちょうど豊臣秀吉の軍師と言われた黒田如水が九州征伐の恩賞として豊前一国を与えられた際に計算上は30万石近くあったのを12万石と申告したのと一緒ですな。あれよく『如水は秀吉に警戒されて少ない領土しか与えられなかった』とか言われますが、実際は逆に如水が好き勝手にできるよう過少申告して、それを許した秀吉、という図式ですから。」
ほぉ、との声が上がる。やはり何度負けても領民が迎え入れる小田氏治様は人徳の人なのだな。
「ですので8000石(4000貫)だと大体1000石辺り20騎動員ですから、兵を出す時に160騎出さねばなりません。騎、というのは士分の数なので、従士つけるとその3倍ぐらいに。」
「500人駆り出されるとなると大変ですな。」
「そこを半分の2000貫としてもらったので、80騎、ざっと200−300人となります。」
「かなりの温情ですな…もしくは今回の収入がフロックと思われたか。」
「そっちの可能性もありますがとにかく助かります。」
「城に詰めている士分の方と、周囲の領地となっている村から無理なく出してもらったとして…ざっと150人ぐらいはいますな。」
といつの間にか把握していた栗田さん。お主なにものだ。
「いえ、飛加藤さんが暇そうだったので例の盗賊上がりの配下の皆様の試しも兼ねて調査してもらったのです…」
なにげに農業指導の飯泉さんと算段上手の栗田さんが合わされば内政はかなり強力なのやもしれぬ。飯泉さんにこまめにくっついて回って周囲の住人の容貌なども聞いているようだし。
「いえ、暇ですから…」
と謙遜されるが恐るべし。
住人が増えているのでもっと見込める、とはいえ計算上ホムセン改め炎衆からも動員されたときには30人ぐらいは出さなければならない事になった。
真田店長はホムセンに張り付いて色々作り出している上に
「資材がないとなんともならない。」
ので居残り決定、農業の稲見さんと経理の栗田さんも外征して万が一ということがあると先行き真っ暗になるので…後女性と…と出せない人を選んだ上でホムセンの守備をする人数を、と選択していったところ
「やはり私は出なければだめですね。」
と天羽源鉄さん。
「ドローンによる偵察と無線通信は戦の歴史を変える!真田店長の新兵器はレクチャー私が受けているから大丈夫!」
とノリノリの稲見薬局長。それと一字拝領までして知行(知行地でなくて切米だが。)貰っちゃった俺は確定した。
ホムセンの店員さんたちは主にホムセン守備隊に残し、それとヤンキー軍団の半分も守備に残した。そのリーダーは副長の田原くんで、
「押忍!ホムセンの守りは任せてください!」
と団長小島くんに頼まれて気合を入れていた。
それから主に手榴弾投擲で活躍してくれた野球部軍団も外征組に選ばれ、後は盗賊上がりの忍びたちで数を埋めることにしたのであった。
「ところで守備隊の人数はこれぐらいで大丈夫ですか?」
と真田店長に俺が聞くと
「くっくっく。防衛のための兵器はちょっと拡充しましたよ!」
とホムセン砦の外郭を案内してくれる。そこにおいてあったのは
「外郭に設置したのは大型太陽光充電タイプのモバイルバッテリー、230V出せるタイプですな。それに接続したエアコンプレッサー!」
なんか銃の二脚めいた物にコンプレッサーと…ちょっと鉄パイプで銃身みたいになっていてコンプレッサーには見えぬ。
「くっくっく。圧力をゴニョニョして釣具用の鉛錘いじった弾発射しますからネイルガンと違ってこっちは凄いですぞ!」
「すごいのですか!」
「すごいのです!」
どうすごいのかは危険そうだから止めておこう。
「ちなみにソーラーパネル式にしたので外郭にあるものは即応性は高いけど威力と撃てる弾数は少ないのです。その点この内郭に設置したものは!」
うん。見ればわかる。これ電源。
「そう! 電源はホムセンのソーラーパネルと、後そっちは悪天候が続いたりして弱った時用にガソリン式発電機も配備です! 外郭でもかなり手こずらせることはできると思いますが、そこを抜けると段違いの威力で襲いかかる、と。」
おろそしや。
「後、先日お話した迫撃砲もどきは出来ましたので…よろしければ他にも諸々手子生の方にもお持ちください。」




