ついに登場、小田氏治
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さくらさんと仲良くしてしまった翌朝…俺は天井からかけられた声に起こされた。
「旦那。」
見ると天井の梁に飛加藤が腕を組んで立っている。よくあるアニメのオープニングでライバルが岩に立っているようなポーズだ。
「小田城への出発の刻限が近づいてますぜ。そろそろ赤松様の所に行かないと。ホムセンから天野先生たちも到着してますぜ。」
「飛加藤ぉぉ!そこにいたのぉ?」
俺は思わず呼び捨てにしてしまう。
「昨晩は大変お楽しみだったようで。」
「マジ!?」
俺は思わず真っ赤になって布団から起き上がる。あ、裸だ。隣には同じく裸のさくらさんが寝ているのに気づいて布団をかける。
「俺ほどの忍者となれば気配を完全に消し去るのは容易。」
「だからそういう問題じゃなくって…」
ととにかく服を着て準備をし、飛加藤を家から追い出すとさくらさんにも服を着てもらう。
「相馬様!」
と言って抱きついてくるのが可愛い。しかし俺は行かねばならんのだ。
「小田の殿様に会ってきたら戻ってくるから。」
「きっとですよ!さくらいつまでもまってますから。」
お願いだから死亡フラグっぽいことは言わないでおくれ。
「私相馬様が帰ってきたら伝えたいことがあるんです!」
だからフラグを建設するのは止めてくれ。
「相馬様のお料理また食べたいです…だからきっと戻ってきて!」
なんか死亡フラグが量産されている気がする。俺小田城に行ったら死ぬのかな、と
思いつつ表に出てみると、天野先生がいた。
なんか三国志の諸葛亮みたいな着物の着こなしで、それっぽい冠となにより孔明っぽいけど微妙なのは…なんかバブル時代のジュリアナみたいな羽扇子を持っている。
「天野先生、その格好は。」
「いやはや相馬先生、私この日が楽しみでしてな。といいますのも小田氏治公の所には知る人ぞ知る軍師、天羽源鉄という方がいらっしゃるのですよ。私その方に合うのが楽しみで楽しみで。」
「で、その格好、と。」
「軍師に会うにはこちらも軍師の格好をしていれば気も合いやすいだろうかと。」
それから赤松様に連れられて、俺達は小田城に向かったのであった。道中天野先生は天羽源鉄の活躍について熱く語る。
「と、このように佐竹の名将、太田資正を退け小田城を奪還するに至ったのです!」
「太田資正って武蔵岩槻城主じゃなかったっけ?佐竹のはいかに同じ名前の人が?」
と赤松様に突っ込まれる。うん。今現在はまだ岩付城の主だよね、資正。
「げふんげふん、そこはおいておいてですな。天羽源鉄は数々の合戦で小田氏治公に献策し、次々と戦に勝って斜陽の小田家の勢いを取り戻した知将、大軍師なのですぞ。」
と話を続ける。どうやら小田城を落とされたことは…実際今までにあったのでその時に、背後で活躍した人がいる、と赤松様は納得されたらしい。話はしばらく続き…よく天野先生馬上でこれだけ話せるな。俺といえば馬を従者に引いてもらってどうにかしがみついているのに。
「…で、ですな。天羽源鉄の最高の輝きは、その遺言にあるのです!」
どうやら話は終わりに近づいたらしい。
「天羽源鉄は小田氏治公に遺言で、籠城して固く守り、安易に出撃して自ら先頭で突撃するのはやめよ、と言い残すのです。残念ながら氏治公はその後も突撃を続けてしまうのですが…」
天野先生は先の話を知識として話しているのだが、赤松様はどうも今までの経験で実感できてしまったようでうん、うん、と何度もうなずいている。そんなにやばいのか。氏治公。
幸い小田城には道中盗賊に襲われるようなこともなく無事に到着した。城門が開かれると、本丸御殿に通される。御殿と言っても現存する二条城御殿みたいな立派なものどころか川越城御殿などと比べてもずっとシンプルなものだが、一応寝殿造になっていて…庭には曲水も引かれている。これは典雅だな。
俺たちは広間に通されると、平伏してお館様の到着を待つ。
しばらくして人が入ってくるような音がした。上段から声がかけられる。
「そちらが手子生城を多賀谷勢から守ってくれたほむ、ほむせ?の者か。よい、面をあげよ。」
俺が頭を上げると…そこには小田氏治公がいた。
小田氏治といえば法雲寺所蔵の肖像画が有名で、それだと禿げ上がった頭に髭をはやした壮年の男性というイメージである。正装しておらず足元に猫が寝ているその肖像画は戦国を生き抜いた武将、と言うよりは気のいい老人を思わせるものだ。
しかし目の前にいるのは…なかなか眼光がランランと鋭い青年である。真っ黒の総髪に髷をぶら下げているが…俺は思わずつぶやいてしまった。
「さ、サウザー?」
「なんだそのさうざぁといかいうのは?」
サウザー…じゃなくて氏治様が怪訝な声を上げる。それまで俺の横で一人でブツブツ
「あ…なんだ。源鉄さまいないのかよ。どこかで仕事をしているのか…残念無念…」
とか言っていた天野先生が慌てて俺の前に飛び出て平伏すると
「なにやら訳のわからないことを言うのは我ら、西国から流れてきて間もないので当家の流儀も礼儀も分からず!平にご容赦を!」
と言上する。すると氏治様は
「異国から流れてきたと言う。よいよい。」
と寛大な心を見せてくれた。良かったぜ。いきなり聖帝十字陵の建設現場に送られなくて。
考えたら俺たちがいるこの永禄の時代だと小田氏治公まだ20代後半の青年なんだよな。
若い時と歳を取った時に激しく容貌が違うのは、例えば作曲家のブラームスがわかりやすい。よく広まっているのはサンタクロースみたいな髭をはやしたおじいさんだけど、ブラームス、若い時はすんごいスリムな超イケメンだから。マジで。
「はっはっは。殿、このモノらが書状を送りました『ホムセンの民』の中で首領格の天野殿でございます。天野殿の軍略で多賀谷を城にとりつかせた上で爆薬でボカーン!と吹き飛ばして退けたのでございます。さらに彼らのもたらした農業改革で手子生城下の耕地や田畑は広がり、収穫も4倍、いや5倍にもなろうかという勢い。この相馬殿は薬師如来様の顕現たる名医でして、多賀谷との戦の時はわしの命を救ってくださったのです。」
赤松様が俺達をかばってくれた。
「ふーむ。ホムセンの民についてはあの剣聖、塚原卜伝様からもよしなに、と書状を頂いておる…相馬とやら、貴殿がその赤松を救ってくれたのか。この氏治、心から礼をいう。」
家臣のために頭を下げる、氏治様は(見た目は怖いけど)やはり一角の漢なのだ。貴殿、とか言われるとサウザーからギレン・ザビに印象がシフトしてまた怖いけど。それから氏治様は続けて
「そこの天なんとか、そのホムセンとやらはどういう意味なのか?」
「はい。グレートホムセン、すわなち『偉大なる家庭用品の中心施設』という意味の西の最果てにある海洋強国、イギリスの言葉なのですが…」
「かてぇようひんのちゅうしん?なにがなにやら」
「生活に便利な道具を取り揃えている、という意味でございます。」
「さようか。聞いた話では生活だけではなく戦にも役立てているようだが。」
「それはホムセンの主、真田の手によるものでして。」
「真田?あの武田家臣の真田の一族のものなのか?あの晴信が落とせなかった砥石城を謀略で落としたという。」
「おそらく一族ではあると思います…仲間とは言えなんとも想像を絶する知略をもった御仁でして。近い親戚ではないようですが…」
「まぁよい。しかしほむなんとやらは言いにくいな。
そうだ。ホムなんとならも言いづらいし貴殿らは爆炎をよく操るという。
貴殿らを『炎衆』と名付けよう。」
炎衆…カッコいいけどなんか関ヶ原の戦いに出たら赤座隊に突撃されて殺されそうな名前だ。絶対に将来関ヶ原の戦いで大谷吉継の近くにいるのは止めよう、と俺は心に誓ったのであった。
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