風呂は日本人の魂なのだ
俺は一旦ホムセンに戻ると皆に赤松様からの言伝をした。
「ついに小田氏治様と会うのか…」
「これが徳川家康様だったりしたらイージーモードなのに…」
「そうも言ってられないでしょ。」
と皆で話し合う。結局小田城へは郷土学者の天野先生と、俺と小島団長が行くことになった。稲見薬局長は
「私は政治的なところは苦手だ。」
と眼鏡をくいっと上げ、真田店長は
「今作っているものが大事なところなの!」
とやはり行かないと言うのでその三人が行くことに。歴史オタの豊島氏も行きたがったが、真田店長がぼそっと
「氏治様の前で戦国最弱とか口走ったら打首だろうな。」
とつぶやいたので取りやめになったのだ。
殿(お館様)の所に行くのに小汚い格好では行けないだろう、ということで俺はリアカーにドラム缶を積んで手子生の家に持ち帰った。
この時代、風呂といえば蒸し風呂で、一応手子生城にはある。サウナだからそれなりに気持ちは良いが…後は行水になってしまうのだ。
「日本人ならやっぱ風呂でしょ!」
と俺は庭の後ろ側の柵に隠れて周りから見えづらい所にドラム缶風呂を設置すると思わず叫んだ…今いるのは紛う方なき日本なのだが。
ドラム缶風呂の火加減をさくらさんにお願いする。熱々になり茹でられそうになるのを止めて、程よい湯加減にするとザバン!と入る。いや水には困らない場所で良かった。
「ふぅ。極楽極楽。」
と思わず口から出る。外に出るとホムセンから持ってきた石鹸とシャンプーで体を洗ってさっぱりする。戦などで汗臭くなっていたからマジ生き返る。
「そんなに極楽なのですか?」
と見たことのない入浴にさくらさんは、俺の身体からは目を背けながら聞いてくる。
「うん!極楽!さくらさんも後で入りなよ…覗かないからさ!」
「え?」
としばらく遠慮されたあと、結局さくらさんもあとで風呂に入ったのだった。
…俺は周りから覗かれていないことを警戒して確認しつつ…しっかり覗きました。ごめん。
風呂に入ってからは食事である。こんなところでも白米を食べられるのは飯泉のおっちゃん様様である。主食はこれもホムセンから頂いてきた合鴨農法(ってアヒル入っていないただのカモだが)の鴨を塩コショウ(当然この時代だと入手困難だからホムセンからの借り物である)と醤油で味をつけて焼いたものだ。
俺は思わずホムセンの方に向かって拝んでから食べる。風呂の後のご飯は美味い。これでビールがあったら…と実は持ってきたのだ。ドラッグストアの在庫をこっそり。井戸に沈めて冷やしておいたのだ。
これもドラム缶に入れてきた(ホムセンの売り物の)ジョッキに注いでぐはーっ!と飲む。
「ご飯も作っていただいて私なにしに来たんだか…」
と膳を目の前にして恐縮するさくらさん。
「いいのいいの!俺学生時代から自炊してたし!どうか食べてよ。」
と促す。鴨の醤油焼きや(ふえるワカメ使った)ワカメの味噌汁など、さくらさんには想像できなかった味のようだ。
「…美味しいです。」
と目を潤ませてすらいるようだ。
「さぁさぁこのビールも。」
とコップにビールを注いで飲んでもらう。ホムセンのみんな、在庫消費しちゃってごめんね。今回は多賀谷撃退記念ということでいただいてきたけど。
「ところでさくらさんの『さくら』って桜川から?」
「え?桜川ってどこですか?」
あら違ったの?
「え?あの小田城の西側から霞ヶ浦まで流れている川。」
「それは『大川』ですね。」
この時代は呼び名が違ったのか。
「となると花の桜の方から?」
「私が生まれた時に筑波山の山桜がそれは綺麗だったそうで…」
と言ってちょっとふさぎ込む。いかん、亡くなったご家族のことを思い出してしまったらしい。
「…悪かった。」
「いえ。」
と食事はつつがなく進んだ。うん。久しぶりに食べたいもの食べたよ!ちょっと酔ったけど。
後片付けをして明日の準備をして、とやっているとさくらさんが後ろから抱きついてきた。
「相馬様!」
「え、いや、赤松様に言われてたりするなら無理しなくていいよ…?」
「違います。これは私の気持ち。相馬様は優しくしてくださるけど、いなくなってしまう気がして…」
と言いつつ、小刻みに震えている。けど目を見たらそこには覚悟を決めた目があった。
…一応学生時代とか仕事始めてからも彼女はいたりしたので経験はありまして…
…俺はさくらさんの気持ちに答えるべく…というか美少女にお願いされたら我慢なんかできませんって…ハニトラでも満足した後グサッならこの際いいか…とかまで思いまして…
その夜俺は結局初めてだったさくらさんと3回も致してしまったのであった。




