表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国ホームセンター  作者: 白苺
VS上杉輝虎編
13/68

手子生城下でさくらさんと暮らすことに


 赤松様たちの治療を一通り終えた後、俺は経過を見る必要もあってその日は手子生城の御殿(というほどおおきくないが、まあ中心的建物ってことで)の1部屋を与えられて泊まることになった。


「ぐはぁ。久しぶりに仕事らしい仕事したわぁ。」


 と畳にばたん、と倒れ込んで大の字になる。


「相馬様。」


 と俺に付き従ってきたさくらさんが声をかけてきた。赤松様に俺の身の回りを世話するように言われたのだと言う。


「相馬様はお医者様だったのですね。」

「まだ一人前とは全く言えない修行中の身ですが。」

「まぁ相馬様が修行中ならお師匠様は死人しびとでも蘇らせられそう。」

「流石にそれは無理です。あはは。」


 と言って上半身を起こして頭をかく。


「ところで相馬様に伺いたいのですが、お医者様でいらっしゃるのに先程の戦いでは敵を『すこっぷ』とやらでバッタバッタと殴り倒していらっしゃいましたが…それはよろしいので?」


 もっともな疑問である。そしてこの言葉遣い、さくらさん存外生まれは良いのかもしれぬ。俺は答えた。


「さくらさんの言うことはごもっとも、ではあるのですが、俺達は遠いところから流れ着いてきて帰るあてもないのです。ですからとにかく今は生き残りたいのです。

『身にかかる火の粉は振り払わなければならぬ』という所です。」

「でもそれが先程の人を救う姿とは一致しない気もしまして…」

「あなたは素直な人だなぁ。それについては『沈んだ艦も、できれば助けたいのです!』ってところかなぁ。戦いが済んだらノーサイド、ってことで。」


 聞き慣れない言葉の連続にさくらさんは目をくるくるさせているみたいだ。


「の、のーさいど?」

「戦いが済んだら遺恨を忘れてお互い助け合いましょう、という精神です。『沈んだ艦も…』も同じような意味です。戦っていないときなら敵でも治療はしますよ。」

「そんなものなのですか。」

「そのへんは俺が外科系なんで体育会系と言うか目の前のことに集中と言うか。多分綺麗事をいってそれを必死に実現しよう、という医者もたくさんいると思います。」

「たいいくかいけい?」

「体を鍛えるのが好きな人の集まりです。」


 となんとなく噛み合わない会話を続ける。でも俺はさくらさんの反応が新鮮で楽しく、疲れが取れる思いであった。


 飛加藤さんの報告もあって今の所多賀谷政経が再び攻めてくる気配もない、ということでホムセンから来たメンバーのほとんどは一旦ホムセンに戻ることになった。


 ちなみに飛加藤さんには今部下がついているのである。その正体は…最初に捕まえた盗賊一味なのだ。加藤さんは


「俺に部下ができるなんて…使い物になるまで鍛えます!」


 と感激し、盗賊一味は訓練の厳しさに悲鳴を上げつつも、命が助かったことを感謝しつつ…話し合い精神おばさんに尻を叩かれて頑張っていたのだ。

 話を戻すと


「ホムセンのフロアにベッドやテントを並べて避難所めいた生活をするのもキツくなってきた。村長さんが手伝ってくれると申し出もあったので、随風様みたいな部屋で足りない分は駐車場だった所などに小屋を建てようかと思う。真田店長と相談するわ。」


 と稲見薬局長。ヤンキー小島団長とかモテて女の子と人気のない所でイチャイチャしはじめていたので、風紀上も独立した家は必要だな。たしかに。


 村長は飯泉のおっちゃんによる農業指導などのお礼も、と村人を動員してくれたり、大工さんを紹介してくれたりしたので、ホムセンの建物の周囲に小屋や、柵なども配置されるようになった。


物見台も提案されたが、ホムセン(駐車場入れて3階建て)の方が高かったので、屋上の太陽光発電に邪魔にならないようにしつつも周囲を見渡す2層櫓のようなものが作られた。


うん。なんというかホムセンを中核に中世木造建築が立ち並ぶカオスな風景になってきたぜ。


 今挙げたような建築にはもちろん何ヶ月かの時間が必要だった。(ついでに戦国オタクの豊島くんの案で、鉄条網と組み合わせて馬防柵とかも作られたし。)


ちょっと時間を戻して手子生城の戦いのあとに戻る。


 俺は手子生城の赤松様や他の怪我人の治療をするためにグレートホムセンから通うのは手間であろう、ということで手子生城下の空き家に滞在するようにすすめられた。

そこでひとまずさくらさんと暮らすことになった。


「そうそう、センセが助手に使われたさくらですが、アレは両親が亡くなってしまったのを下女として城で使っておるのです…元はそれなりの武士の娘だったのですが、両親や兄弟ともに討ち死にして跡を継ぐものもなく、もとの知行も多賀谷に掠め取られてしまいましてな。あのような醜女では婿養子も取れませんですしな!ガハハ。

よろしければセンセの身の回りの世話をする助手として使っていただけましたら。」


 いえいえ、醜女なんて。さくらさんは美少女です。むしろこの時代の美意識が俺たちの時代に追いついてなくてラッキーなのか。


 手子生城の怪我人たちへの前近代的な処置を徹底的に禁止した結果…一週間後には大部分の人が相当回復していた。。


「いやはや、これだけの怪我をした者共が、こんなに問題なく治るものが多いとは…まさに薬師如来の御弟子、相馬大明神ですな。」


 と赤松様が妙に持ち上げてくる。


 さすがはワイルドな東国武士、赤松様の傷は1週間で癒えて、俺はその日赤松様の傷の抜糸をしていた。


「ハサミ」


 と言って出てきたのが裁縫ハサミのオバケみたいなものだったので、ホムセンからもっと繊細な医療のハサミと鑷子せっし(ピンセットのこと)は持ってきていた。


 糸を抜かれながら赤松様が、


「そういえば今回の件の論功もありましてな、わしと一緒にホムセンの方々でお館様の所にいっていただけませんか?」


 と聞いてきた。お館様…ついに小田氏治様登場か。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] フナサカ級超人の時代かな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ