その名はグレートホムセン
よろしくおねがいします。もう一作とまさかの同時連載中です。
私のいつもの作品どおり軽いです。どうかお気軽にお楽しみいだだけましたら。
※すみません。第二話アップロード失敗してました。直しましたので安心してお楽しみください。
ご指摘本当にありがとうございました。
西暦202x年。その日俺はつくば市に最近できた巨大ホームセンター、『グレートホムセン』にいた。外はものすごい豪雨である。俺は他の客と一緒に店頭のテレビの画面に見入っていた。テレビではアナウンサーが気象予報士と一緒に
『ただいま茨城県南地域で猛烈なゲリラ豪雨が降っています。つくば市で観測された時間あたりの雨量は200mmと観測史上最高でまさに滝の中にいるような状態です。不要不急の外出は避け……』
外出は避け、と言われてもここまでバイクでやって来てとても出られる状況じゃない。店にいる他の客もとても出られないよね、などと話をしている。
『ここで視聴者の方からの映像です。茨城県つくば市付近にゲリラ豪雨をもたらしている巨大な積乱雲の姿を都内からとらえた写真です。雲がそそり立ってまるで巨大な山か城のように見えます。』
『視聴者の方から気象台に『入道雲全体が時々激しく光っている。雷にしても全体が光るのはおかしいのではないか。』と問い合わせが殺到していますが、気象台は異常に発達した低気圧の内側で雷が盛んに発生しているため、としています。』
ふと外を見ると、店の外側は乳白色の光に覆われて、なにも見えない。
「なにあれ。」
「光る霧?」
「いや雨が激しく降る音は続いているぞ…」
と人々が口々に不安そうに話す。
「みなさん!落ち着いてください。」
といって立ち上がったのは背の高い、眼光の鋭い中年男性だ。グレートホムセンのロゴがはいったスタッフ服を来ており、胸のプレートには『店長 真田』と書いてある。
「こんなこともあろうかと。」
と真田さんは続けた。
「このグレートホムセン、先年の震災や竜巻、鬼怒川の洪水などの教訓から様々な備えをしております(本部からは備えも品揃えもやりすぎとか言われてますが…ごにょごにょ)」
と小声になった後気を取り直し続ける
「この豪雨に対してすでに店に雨が侵入しないように土嚢を積んであります!当ホームセンターにはガーデンセンター、ペットショップ、カー用品店などに加え、ガソリンスタンドや調剤薬局を備えたドラッグストアも併設されており、雨が降ろうが槍が降ろうが十分に耐えることが出来ます。万が一数日にわたって出ることができなくなっても食料の備蓄もありますから皆さん、どうか落ち着いて。」
それはすごいっていうか本部の言う通りやりすぎなんじゃないだろうか、真田さん。俺は素直にふんふん、と感心して聞いていたが、中年の体格のいい、人の良さそうなネルシャツを着た男性が立ち上がって叫んだ。
「そんなの信用できるか!」
男は続けて
「いくら備えが有るとかいっても見ろ、外は豪雨どころか変にピカピカ光っているじゃないか。こんなところにいたらおしまいだ!牧子、しずえ、行くぞ!」
と傍らに座っていた奥さんと小さな女の子に声をかけると、入り口を手動で開けると光り輝く滝のようになっている中を駆け出していって、すぐに姿が見えなくなってしまった。
それを見てテレビの前に座っていたメガネを掛けた大学生ぐらいの男がつぶやいた。
「……ミストだな。」
それを聞いて男と一緒にいた相方の男が答える。二人共オタクっぽい感じだ。
「うん。ミストだ。」
ミストというのはホラー映画で、謎の霧に覆われたショッピングセンターから人々が外に出ると次々と怪物に襲われて殺される、という話だ。終盤主役の一人が家族を連れて脱出を図るが、家族を殺されてしまい、ひとり生き残る。そしてショッピングセンターから出ずに耐えていた人々が朝を迎えると、米軍が救助にきて残っていた人々は助かった、という話だ。確かにこれだけ変なことがおきていると下手に動かないほうが正解なんじゃないか、という気がする。
それからほどなく、店全体がガタガタと揺れだした。すわ、地震か、と皆の視線がテレビに集まる。しかしテレビでは地震については全く報道されていなかった。そして
「今入った情報ですが、ゲリラ豪雨をもたらしている積乱雲が激しく発光し、まるで龍の様に見える、と多数の画像が投稿されております。そしてその頂上になにやら建物のような物が見えている、という通報が相次いでおり、『ラピュタは本当にあったのだ』という書き込みがSNS上で……」
と聞こえた所で建物の揺れが収まったかと思うと、テレビは砂嵐しか映さなくなってしまった。店の照明が落ちたかと思うと、外も真っ暗である。スマホをふと見ると圏外になっている。どうやら近くにいる人のスマホも全て圏外なようだ。
「皆さん落ち着いてください。当ホームセンター屋上には大型の太陽光発電と蓄電池が備えられております。」
と真田さんが言い、館内は電気が着いた。
「今晩は毛布や食料も用意しました。また家具コーナーのベッドなども自由に使っていただいて結構ですのでどうか気を強くして朝を待ちましょう。」
スマホ圏外で、テレビもつかず、真田さんはラジオを出してきたがこちらも受信することは出来なかった。外は真っ暗でなにも見えず、ここは焦ってもかえって危ないだろう、ということで
「ミストのように米軍が来てくれることは…大震災のときにはありましたがまぁないでしょうが、最悪自衛隊の救援はあるかもしれません。」
という真田さんの言葉にホッとしたのか、所々から笑いが漏れた。リラックスしてとは行かないものの、俺たちホームセンターに取り残された人々はまんじりともせず、一眠りして朝を迎えたのであった。
参考資料
図説茨城の城郭
図接続茨城の城郭
戦国佐竹氏研究の最前線