付与魔法師は強者と相見える
「付与魔法には大別して二種類ある。物体に新たな属性を付与する【属性付与】と、物体の使用者に齎す効果を付与する【効果付与】だ。グレイ、お前には【属性付与】の才能がある」
昔、師匠が言っていたことを思い出す。
常に白衣を見に纏った学者然とした女性だった。
「生物を除いて、この世に付与魔法を行使できない物体はない」
この言葉を聞いた時、思ったことがある。
「じゃあさ、これにも【属性付与】って使えるのか?」
「ん?何もないじゃないかそこには」
「いや、掴めもしないし、見えもしないけど────」
俺は宙に向けた指の先を見つめた。
「空気がある」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
俺は一次予選の開幕早々バトルフィールド上の空気に付与魔法を行使した。
付与した属性は"固"と"弾"の二つ。
空気を長く太い棒状に"固定"して振り回し、"弾性"を付与することで触れた対戦相手を次々に弾き飛ばす事に成功した。
「ちょっと調子に乗りすぎだね」
しかし最後の一人が剣を振るうと、その威力の高さに空気に付与した魔法が解除されてしまった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「い、い、一体何が起こったのか〜〜〜ッッ!!?開始早々選手が次々と弾き飛ばされ脱落させられてしまいました!!恐らくグレイ選手が何かしたのかと思われますが、どんな手を使ったのか皆目見当がつきません!!ここでグレイ選手のプロフィールをご紹介いたしますと……グレイ選手はどうやらまだ一年生のようです!入学したばかりだというのに凄い活躍ですね!所持スキルは……【付与魔法】だそうです!!……え、【付与魔法】?」
実況を聞いて、観客席がざわつく。
一気に八人を敗退させたグレイはどんなに凄いスキルを持っているのだろうかと思っていた観客達は、それが【付与魔法】だと聞いて疑問符が頭を埋め尽くした。
「確認したところ、ど、どうやらグレイ選手のスキルは【付与魔法】で間違いないようです!しかし、グレイ選手が魔法を使った様子はないように思われましたが一体どんな手を使ったのでしょうか?」
「いえ、彼は確かに魔法を使用していたわ」
「せ、セリカさん!!?」
実況の疑問に答えたのは、生徒会長のセリカ・クレイスタットだった。
「えっと……グレイ選手が魔法を使っていたということですが、魔法陣は確認できなかったように思うのですが……」
実況は、セリカの来訪に驚きながらも自身の仕事を思い出し、セリカに問いかける。
セリカはバトルフィールドに目を落としながら、言葉を紡ぐ。
「グレイ……と言ったかしら。彼の魔法行使の速度が早すぎるのよ。魔法陣が出現するのは、魔法師が魔法を組み上げて効力を発揮するまでの間だけ。彼の魔法はその一連のプロセスが尋常じゃなく早い。だから貴方は見逃したの」
「魔法陣を認識させないほどの行使速度……?わ、私の記憶が正しければ、【付与魔法】はどんなに簡単なものでも三十分以上はかかるものだという認識だったのですが……」
「そうね、その認識で間違い無いと思うわ。だから彼が異常なのよ」
セリカがこの試合を見に来たのは、今グレイと相対している方の選手を見に来たからだ。
その選手が予選で一番強いと思われる人物だったから。
しかし、
────グレイ・フレアガルド……面白いわね。
少しだけ様子を見て去るつもりだったセリカだったが、一人の観客として、この試合を最後まで見ることを決めたのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
幾度となく強い剣士を見てきたグレイは、立ち姿からその男が紛れもない強者であることを理解する。
「……赤い気か」
一定まで武芸スキルを極めた者は、自身の特色に基づき色付いた気を立ち昇らせる。
赤色の場合は攻撃特化。
一撃一撃が重たく、まともに食らったら一発で致命傷となる色だ。
「君、名前は?」
警戒しながら相手を見定めていたグレイに対し、随分リラックスした状態でその男は語りかけた。
「……グレイ・フレアガルドだ。あんたは?」
「グレイか、いい名前だね。俺の名前はギール・アズラン。正直予選は退屈かもと思っていたけれど、君のおかげで楽しめそうだ」
ニコニコと笑うギールに対し、グレイは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
《紅帝》ギール・アズラン。二年首席。
昨年は怪我で【学内選抜戦】に参加していなかったため、今年はシード権がもらえず予選から参加している。
グレイは己のくじ運の悪さを呪った。
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