付与魔法師は勝利する
ぐにゃりと。
まるで粘土かのように握り潰される短剣を見て、勝利を確信し、笑みを浮かべていた金髪の顔色が変わる。
俺が掴み取った部分を引きちぎり投げ捨てると、金髪はあり得ないものを見るような顔で、俺と刀身の無くなった短剣を交互に見比べ、ヒイッと情けなく後ずさった。
「あ、お前……付与魔法師なのに……身体強化も使えねえくせに……何なんだよその力は!!?」
金髪は、俺のことを魔法も使わずに短剣を握りつぶせる怪力の持ち主だと思ったようだ。
まるっきり検討外れなのだが、そう思ってくれた方が都合がいいな。
俺はあえて恐怖心を煽るように、手のひらを見せながらゆっくりと金髪に近づく。
「あ……ああ……」
俺が近づくたびに後ずさっていた金髪だったが、足がもつれて尻餅をついた。
そんな金髪の肩に手を乗せて俺は耳打ちする。
「分かったろ?お前じゃ俺に勝てない。だから降参してくれないか?」
乗せた手にググッと軽く力を込めると、金髪は青ざめた顔でぶんぶん首を縦に振った。
「先生」
はえーっと間抜けな顔をしていたアルちゃん先生だったが、俺の言葉で我に帰ったのか、トコトコと歩いてくる。
「えっと、なにかあったですか?」
俺が金髪の方に視線を送ると、金髪は口を開く。
「……降参だ。この《決闘》は……俺の負けでいい」
「わ、分かりました!ではでは、この《決闘》グレイくんと勝ちなのですよ!」
パチパチパチ!っと擬音を口に出しながら拍手するアルちゃん先生を見て何とも言えない気持ちになりながら、ふと観客席を見やった。
赤髪をした幼馴染みの表情は、観客席までの距離の遠さ故窺えなかったが、恐らく「勝って当然」って顔をしてるんだろうなと思う。
なんとなく俺は、その顔に向かって拳を突き出した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
────これでようやく……って感じね。
観客席からバトルフィールドを見下ろすブルーは、心の中でそう呟いた。
年に一度。
全国に散らばる騎士学園の中から最強の騎士を決定するトーナメント──【騎士祭】──が開催され、そこで優勝した騎士は最大級の栄誉と、国内に存在する全ての騎士団に無条件で入れる権利が与えられる。
グレイ、そしてブルーは各々の目的のため、【騎士祭】で優勝しなければならない。
そのため、グレイとブルーは優勝を欲するライバルであるのだが、こんなところでグレイがこけるのはブルーにとっても本意ではなかった。
だから勝ってくれて、少しホッとしている部分もある。
「……て、何であたしがあの馬鹿の心配しなくちゃならないのよ!」
こちらに拳を突き出す姿を見ながら、ブルーは小さく自分にツッコミを入れた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「とまあこんな感じで《戦闘衣》のダメージカットがなくなる、もしくはどちらかの降参によって勝ち負けが決定するのですよ!」
教室に戻り、アルちゃん先生が先ほどの勝負を使って説明を行う。
「明日からは皆さんも《決闘》を行う機会があるのですよ!なんたって、もうすぐ【騎士祭】に向けた【学内選抜戦】が始まるですからね!」
アルちゃん先生は興奮したように、ブンブン両の拳をふる。
心なしか、周囲の生徒達も前のめりになった。
なんせ、学園……いや、全国的に見ても、【騎士祭】は最大級のイベントだ。
【学内選抜戦】を勝ち残れば本戦に出場でき、テレビでも連日放映される。
誰もが憧れる舞台だ。
────だからこそ、そこで勝って……知らしめる必要がある。
付与魔法の凄さを。
全ての人間に。
そのために俺はここにいるんだから。
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