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付与魔法師は付与魔法を使う

「《決闘》……だと?」


 突然の発言に、グラードは目を瞬かせる。

 そしてすぐに吹き出した。


「クククッ、あー腹痛え。付与魔法師のお前が?俺に?《決闘》だと??おいおい、冗談(ジョーク)のセンスだけは一丁前じゃねえか!……本気で言ってんのか?」


「冗談で《決闘》なんて言わねえよ」


「こいつは本気で分らせないといけねーらしいな。いいぜ、ボコボコにしてやるよ。二度とそんな口叩けねーようにしてやらぁ」


「ちょ、ちょっと待つのですよ!!」


 どんどん話を進める俺たちを見て、アルちゃん先生が待ったをかける。


「入学式初日から《決闘》システムを使うなんて聞いたことないのですよ!そんなの────」


「出来ないんですか?」


「ううう……できなくはないですけど……」


 可愛い唸り声を上げながら、アルちゃん先生が頭に人差し指を当てる。

 やがてパッと顔を上げた。


「……わかりました。どうせいつかはみんなに説明しなきゃでしたし。《決闘》を許可するのです。でもまだ自己紹介が全員分済んでいないので、終わるまで待つですよ」


「ハッ。良かったな、処刑までの時間がちょっと伸びてよ」


 金髪野郎……グラードは己の勝利を1ミリたりとも疑っていない様子だ。

 結構結構。

 見下してくれれば見下してくれるほど……ひっくり返しがいがある。


 俺は必要なことは済んだと机に突っ伏し、春の陽気に誘われて惰眠を貪り、ブルーに叩き起こされるまで寝た。

 そのせいで、俺の後のクラスメイトによる自己紹介は殆ど頭に入っていなかった。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「あんたのやりたいことは分かるけど、ちょっと急ぎすぎじゃない?」


 アルちゃん先生が先導し、《決闘》が行われる通称【決闘場(コロシアム)】に向かう途中、ブルーがこそっと耳打ちしてきた。


「俺が舐められるのは前々から分かってた。でも、それじゃダメなんだ。俺はここにいる全員に力を認めさせなきゃいけない。()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……はぁ、分かったわよ。……負けないでよね」


 ブルーは最後に小さく何かを言うと、俺から距離を取る。

 最後になんて言ったか聞き取れず、ブルーの方を向くと、何故かそっぽを向くその横顔には、僅かに赤みが挿していた。


「なぁ、今なん────


「はぁい、グレイくんとグラードくんはこっちで《戦闘衣》に着替えてくださいねー」


 俺の言葉を遮るように、アルちゃん先生が俺と金髪の名前を呼んだ。


 《戦闘衣》とは、《決闘場》で戦う時のみ効果がある特別な服で、一定以上の肉体的なダメージを肩代わりしてくれるというものだ。


 これがあるおかげで、剣で斬ったり魔法で焼いたりしても死ぬ危険は限りなく少ない。

 そして《決闘》のルール上、《戦闘衣》の許容ダメージを超えた時点で負けとなる。

 簡単に言えば、身体にダメージを負った時点で負けってことだ。分かりやすくていい。


 《戦闘衣》に着替えるため更衣室に入る俺たち二人以外は、アルちゃん先生に連れられて階段を上っていく。

 その先には、今から俺たちが戦う100メートル四方の広いバトルフィールドを、ぐるりと囲む円状の観客席がある。


「うし」


 《戦闘衣》に着替えた俺は、軽く頰を叩き気合を入れた。


「んな気合入れても無駄ってわかんないのかねぇ。あ、分かんないから付与魔法師とかいう雑魚の癖にここにいるんだったな!」


 そんな罵倒を聞き流しながら、俺と金髪はバトルフィールドに入場する。


「ふうーっ」


 一つ深呼吸をし、金髪の装備を確認する。

 金髪の得物は刃渡り三十センチほどの短剣だった。

 それを慣れた手付きでくるくると弄んでいる。


「お前は何の武器も使わねえのか?」


「ああ、俺はこれでいい」


 俺は手につけた何の装飾もないグローブを見せて答えた。


 普通魔法使いと言えど、何かしらの装備はしている。

 杖や短剣、剣を持った魔剣士とかいうのもいる。


 だが俺には不要だ。

 むしろ邪魔と言っていい。

 どうせ武器を手に取ったところで、()()()()()()()()()()()()


「勝つ気あんのかよ。こちとら弱いものいじめの趣味はねーぞ」


「ああ、お前に分かりやすく言い直してやるよ。……お前に勝つのなんてこれで十分だ」


「……カッチーンと来たァ。……ぶっ殺してやる」


 《決闘》は教師の合図がないと始められない。

 そのためアルちゃん先生が観客席からおり、俺と金髪の間までやってきた。


「はいはい、ぶっ殺したら退学ですからね?絶対に《戦闘衣》の保護が無くなったらやめるのですよ。二人とも準備は良さそうですね。それでは……始め!」


「死に晒せやァァ!!!」


 開幕早々怒声と共に金髪が突っ込んできた。

 俺は、逆手に持った短剣の振り下ろしを一歩引いて避ける。

 横からの斬り払いを、正中線を狙った突きを、金髪がやたらめったら振り回す短剣を、俺は最小限の動作で避け続ける。


「どうしたどうしたどうしたァッ!!避けてばっかじゃねえかァッッ!!そんなんじゃ勝てねぇぞッッ!!!」


「いや、もう分かった」


 ────座標指定


「ああ?何が分かったってんだよッ!?」


 ────領域固定


「分かってるのはお前が敗北する未来だろうがよォォ!!」


 金髪が放った突きに対して、俺は掌を向けた。

 金髪の目には、俺の差し出した手が、あたかも自分の身を守るためにとった行動であるかのように映っただろう。

 それを証明するかのように金髪の口元にニンマリと笑みが浮かぶ。


 だが、そうじゃない。


 突きと掌が触れ合う、その刹那、


属性付与(エンチャント)


 俺の手は、短剣の刀身を握り潰した。


面白い、続きが気になると思っていただけたら、

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