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69  冒険者ギルド

 時はルキ達が洞窟に入った直後のころに遡る。


《人間の国、フーロスティア王国にて》




「お一人様、クリス・キャリーさんでよろしいですね? 登録手数料は1500ベンになります」

「はい」


 僕は懐から登録手数料をちょうどカウンターへと差し出した。

 騎士団をやめて、身辺整理をしていたら色々と時間がかかったけど、今僕は王都のギルドにて冒険者登録を行なっていた。


「申し訳ございませんが、その、本当に冒険者になられるんですか?」

「え? あぁ、はい」


 受付のお姉さんは片腕のない僕のことを心配そうに見ている。

 まぁ、無理もない。

 五体満足であっても、冒険者業というのには危険がつきものなのだから。


「大丈夫ですよ! これでも王国騎士団の玄武に所属していましたから」

「そ、そうですか……。わかりました、無理せずに頑張ってくださいね!」


 信じてもらえたのか、受付のお姉さんは笑顔で受け入れてくれた。


 エドガルドさん、僕を拾ってくれたご恩は必ず返します。

 だから待っていてください、弱者の僕が魔を打ち滅ぼすその時まで。


 冒険者ギルドは3階建てで、英雄級の偉業を成したパーティーのエンブレムを描いた旗が至る所に飾られている。

 中には数百年も前の物もあるみたいだ。

 1階には受付窓口やクエスト依頼の掲示板があるが、7割が酒場になっている。

 冒険に行く前、帰った後で一杯できるようになっているようだ。

 2階には冒険に必要な武器防具や、付与効果をもたらすアクセサリー、ポーションなどのアイテムを売るような場所になっている。

 3階は一般の人は立ち入ることができないVIPフロアらしい


 僕には壮大な夢がある。

 それは子供っぽいけど、英雄(ヒーロー)になることだ。

 孤児だった身元不明の僕を拾ってくれた僕にとっての英雄、人のため街のため国のために働くエドガルド総団長のように、たくさんの人を助けられる格好いい男に。

 存在しているだけで魔族は怯み、人族には安寧をもたらす絶対的な平和の象徴に。

 そして夢の中で見たような不思議な世界、平和な世界を作ること。


「こちらがランク証とギルドカードです。無くさないでくださいね」

「はい」


 渡されたランク証は最低等級の”ウッド”だった。

 でもゆくゆくは、ストーン、カッパー、アイアン、シルバー、ゴールド、白金、そして黒金へと上げていく。

 それが夢への最短ルートだから。


 受付のお姉さん曰く、”ストーン”で脱初心者、”カッパー”から熟練、ゴールド以上で英雄級らしい。

 もっとも、今現在最高等級の”黒金”は存在しないみたいだけど。

 ここから、これから始めるんだ。

 僕の第二の人生は。


 僕は木製のランク証を首から下げ、自分のステータスやレベルがわかるギルドカードに目を落とした。

 このカードは偽造は出来ないみたいで、身分の証明や自分が討伐した魔物等が一目でわかる重要なものらしい。

 ステータス自体は毎回ギルドにて更新が必須だが、それはあくまでも数字として見る為であって、更新しなくても成長は感じるとのこと。


 そうして受付のお姉さんの説明が終わった。


「色々ありがとうございました」

「いえいえ、仕事ですので。騎士団にいたからって無理をしてはいけませんよ?」

「は、はい」


 僕は軽く頭を下げ、その場を後にした。


 それにしても美人な受付さんだったな。

 きっと数多の冒険者の人達に言い寄られているんだろうな。


 明るい茶髪に毛先がくるんとカールしていて、唇は小さく淡いピンク。背丈は高からず低からず。

 整ったあの容姿にあの性格ときたら、男なんて引く手数多なんだろう。

 僕は他人事のように考えながら、お世話になる宿を探しに街に出た。




        ※




「なにぃ、あの子が気になるのかにゃ? ミーナが男を意識するなんて、珍しいこともあるんねぇ〜」


 一通りの仕事を終えた受付嬢のミーナの横から声がかかった。

 彼女は同僚で隣の席に座っていた妹のような存在のイムネアだ。


「いや、気になるというより……心配?」

「ふーん、なんで?」


 イムネアはニマニマしながらミーナの顔を覗き込む。

 そんな彼女にじと目を向けながら。


「あの子、”玄武”にいたんだって。しかも、後天的だと思うんだけど右腕無いの。魔物にやられたのかどうかは分からないんだけど……」

「玄武って、あの一件があった玄武?」

「うん……」


 イムネアのからかうような態度が少しだけ変わり、声のトーンを少し落としては口を開いた。


「彼は苦労するだろうね……。しっかり()()()()するんだよ?」

「サポートかぁ」


 イムネアはそう言い残して自分の仕事に戻っていった。

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