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63  友達紹介、古龍さんです。

『あ、あの、ルキ?』


 頭を垂れる俺の後方から野太い声が聞こえてきた。

 レギヌアだ。


「あー、ごめん。今ここにいるのがさっき話した俺の仲間達だよ」


 俺とレギヌアの会話に、しがみつきながら泣きじゃくるツキの耳が反応を見せた。

 俺のサプライズといい、レギヌアの件といい、理解が追いついていないのだろう。


 俺にも非がある、それは認める。

 だって俺とレギヌアの関係を知らないツキ達は、あの時は俺一人で死地に残った様なもんだったし。

 心配させてしまった自覚はある。

 でもそれよりも、俺の後ろにいる世界最強にして最恐の存在である大地の古龍であるレギヌアについて説明しなくてはいけない。


「ルキさん。どういうことっすか?」


 俺とレギヌアを高速で交互に見るゴーが尋ねてきた。


 やっぱりだいぶ困惑している様子だ。

 プッ。

 ゴーの慌てふためく姿は見ていて笑える——…


「ルキよ。何を笑っているのじゃ?」

「あ……」

「何か説明する必要があるじゃろ」

「……はい、すいません」


 ブティーはオコです。

 さすが古より生き続ける吸血鬼(ヴァンパイア)

 その幼い容貌には似つかわしくない貫禄を感じるぜ。


 俺は後ろにいる存在感の塊であるレギヌアを手で差した。


「紹介が遅れました。こちら、俺の友達になってくれました大地の古龍と言われているレギヌア・ピサロさんです」

『どうも』


 レギヌアは口を動かさずに声を発した。

 しかし——




「……は?」




 少しの静寂の後ブティーの一言、一文字だけが洞窟内で響いた。


 なんでまた”は?”って言われなきゃいけないだ?

 俺、また気に障るようなことを言った?

 それとも怒ってる感じじゃなくて、驚いている感じ?

 今の”は?”は理解できていないの”は?”ってことでいいんだよね。

 何言ってんの? って怒っている感じの”は?”じゃないよね?


「友達、じゃと?」

「う、うん」


 よかった、前者っぽいニュアンスだわ。




「ど、どういうことなのじゃ?」


 何百何千年と生きる妾は、基本的に非常識の部類に入る。

 それ故に大抵のことは理解できるし、驚いたとしても飲み込むことができるんじゃが……。


「ん? 話の流れで友達になったんだけど。どういうことって、どういうこと?」


 妾の疑問にルキは首を傾げて尋ね返してきた。

 ルキは妾以上に非常識じゃな。

 何故、頭の回転がそれなりに速いのに、今の質問の意図が理解できんのじゃ。


「よいか? お主(ルキ)の後ろにおるのは純血の龍。大地を自在に操る世界最強にして最恐の三古龍の一体なのじゃぞ!?」

「うん」


 うん——…って何じゃ!?

 妾はルキの非常識っぷりに諦めたようにため息をついた。


「ルキさん。その、レギヌアさんと戦ったってことっすか?」

「いや、戦ってないよ? 少しだけ話をしただけ」


 次にゴーがこの瞬間、好奇心が恐怖を上回った。


「どんな話をしたんっすか? どうやって仲良くなったんっすか? もう一度レギヌアさんの能力の一端を見せて欲しいっす! あと——…」

「待て待て待て!」


 止まらないゴーの質問に俺は後退りながらもゴーを落ち着かせる。

 そして1からレギヌアについて語り出した。


「お前達を逃した後、すぐにレギヌアは姿を見せたんだよ。俺も最初は駄目元で戦うつもりだったんだけど・・・・・」






 俺は俺とレギヌアが友達になるまでの経緯を全て話した。

 レギヌアがどういう(ドラゴン)なのか、本当は魔人になりたかったこととか、孤独だったとかetc…。


「そうだったんっすか」


 話を聞き終えたゴーは納得してくれたみたい。

 ”古龍と友達って”とブツブツ呟くブティーも、一応納得してくれたみたい。


 しかし、唯一の懸念材料であるツキは違った。

 散々泣いて目が赤くなったツキは、レギヌアのことを光沢を失った死んだ魚のような目で睨んでいた。


「ルキ様。レギヌアさんとは本当にお友達ってだけですか?」


 ツキは俺の顔を横目でチラッと見てから口を開いた。


「うん、そうだけど」

「確か、魔族の世界には弱肉強食こそが正義という考えを持つ者もいるみたいですけど。強者を慕うのは本能だと聞いたこともあるんですけど。ルキ様、まさかですよね?」


 ツキはじーっと俺の目から視線を逸さずに言い寄った。

 何を勘違いしているんだか。

 だいたいレギヌアは(オス)であって、俺にそんな趣味は……。

 あぁ、今、俺女だったな。


「ツキ。お前は何か勘違いをしている。レギヌアに似ている性格の人を知っていてな。親近感が湧いて友達になったんだよ、うん」


 俺はツキの誤解を解くべく、決して動揺せずに冷静に弁明した。


「そうですよね!」

「……っ」


 ツキは俺から視線を逸さずに、口元だけをニパッと笑わせてみせた。


 すごく怖い。

 どれくらい怖いかというと、レギヌアと一対一で対峙しようと覚悟を決めた時以上だ。

 ま、顔には出さないポーカーフェイスで誤魔化したけど!

 本当だよ?

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