表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/76

55  折り返し地点

お久しぶりです。

今話より新章に入ります。


 眷属の案内が始まって、かなりの時間が経過した。

 体感で言うと二日くらいかな。


「今ってどの辺?」

「うーん、ちょうど半ば辺りかの」

「少し休憩しない?」


 俺は言わずもがな上位アンデッドのブティーも肉体的疲労は感じないが、他は別。

 無理もない、というか当然の結果だ。


 しかしツキは頑張りすぎる傾向があって、休憩を切り出しても承諾してくれない。

 無理にでも休憩を取らせるべきだろう。

 特にブティーを乗っけている眷属達が色々と大変なことになっていて、見ているこっちが辛い。


 ちなみにだけど、ゴーは体が悲鳴をあげているのに気づいていない様子。

 最初迷ったときみたいに、見るもの全てが新鮮なのかテンションは高いまま。


 転生してから仲間は着々と増えているけど、普通の、ノーマルな感覚を持った本物の知恵者、智謀に優れた人が仲間に欲しい。

 切実に。




 俺たちは休憩を取ることにした。


湧水(アキュエラ ー)


 腰を下ろしてすぐ、俺は自分の両手に水を出現させた。

 第Ⅰ位階の水魔法だ。

 攻撃力は皆無で、ただ水を出すだけのもの。


 俺には水の適性がない。にも関わらず、これが使える理由は詳しくは分からない。

 現に俺はいまだに魔力のコントロールはできていない、はずだ。

 なぜだか気付いたら火の扱いができるようになって、影の手(シャドウハンド)も思い通りに使うことができるようになった気がする。

 そんな良い違和感に気づいてから、どうやら第Ⅰ位階の水魔法等が頭に降ってきた。


 こういった現象を何と言うか。

 そう、ご都合主義である。

 とうとう異世界テンプレっぽくなってきたか。


 ※ルキはゲイルがステータスに干渉したことを知りません。


 はぁ、ゲイルがもっとまともだったら。

 着ていた服とか、それ以前にもっとちゃんとした女神ポジなら。


 ※ルキはゲイルが見守っていることを知りません。


「あ、ルキさん。俺も欲しいっす」

「あいよ」


 俺は自分の手の中の物を飲み干し、ゴーの手にも同じ魔法で水を生成する。


「ツキとブティーはどうす『下さい!!』——…!?」


 ツキは食い気味で、目をキラキラさせて両手を突き出す。

 一方でブティーは眷属をチューチューと吸っていた。


 これは、うん、哀れだ。


 ブティーは吸血鬼なわけだし、別に変なことではない。

 でも、ここまで息切らして主人を運んだ眷属にその仕打ちはあんまりだと思う。


「これがルキ様から分泌、生成された、ルキ様の味の水ですかぁ」


 なんかツキが言ってるけど、聞かなかったことにしよう。

 そうしよう。

 はぁ。


 日に日にツキの思考回路がおかしな方向に進んでいる。

 疲れが原因であって欲しいよ。


 俺はカメ吉に水を与えながら、眷属を咥えるブティーに喋りかけた。


「眷属の血をそんなに吸って大丈夫なの? 居なくなったり、味に飽きたりとか」

「大丈夫じゃぞ? 必要最低限な量しか飲んでおらぬからな。それに個体や血液型、状態に形状、その他諸々でも味は変わるから、飽きることもないのじゃ」

「器用だな」


 眷属って元はブティーの影だよな。

 個体だの状態だの何だの言っているけど、要は自分の分身じゃないのか?

 眷属だから分身じゃない?


 ……


 …………


 ………………ルキは考えるのをやめた。


「ぷはぁ〜。ところでルキ様、いつの間に(これ)を? 確か、ルキ様の適正って闇と火ですよね?」

「あれ、俺ってツキに適正属性言ってたっけ?」

「もう、何言っているんですか! ルキ様のことならなんでも知ってますよ〜」

「あ、はい」


 にこやかに答えるツキに、俺は苦笑いを浮かべる。

 なんの確証もない。けど、地雷臭がする。


「で、ルキ様?」

「あぁ、うん。なんでと聞かれると”分からない”が答えになるな。急にできるようになった。ツキの所のオババ様も第Ⅰ位階の魔法なら全属性誰でも使えるって言ってたし」

「それでもすごいですよ。だって第Ⅰ位階とはいっても、適性の炎とは真逆にある水ですもん」

「そうか?」

「やっぱり、()()()()ルキ様は天才ですね!」


 ツキが感心してくれた。

 褒められるってのは、悪い気はしないな。


 ただ、流れるような手つきで俺の脇に手を入れ持ち上げ、膝の上に座らせ頭を撫で始めるツキに俺は、親代わりとしての威厳が失われていくのを感じた。




 その後、俺たちは交互に睡眠をとった。


 まだ——…否、やっと折り返し地点。

 これでも最短ルートなんだ。

 迂回や登山ルートと比べれば、圧倒的な速さで進んでいる。


 俺の見張り当番中、道の先を見ながら寝ているカメ吉の甲羅を撫でた。


「お前は本当に癒しをくれるな。心が落ち着くよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ