45 新たなルートへ
撤収作業を終え湖を後にした俺達が、ゴーの不幸に注意しつつリンピールに向けて旅を再開してからしばらく経った頃。
「そろそろ疲れたかな?」
俺は足元を歩いているカメ吉をひょいと持ち上げて、頭に乗せた。
カメ吉の表情は結構分かりやすく、甲羅の上に生えている葉っぱを見れば誰でもわかる。
弾むようにピョコピョコ揺れている時は嬉しい時で、しんなりしていたら疲れている時。
そして今は後者だ。
犬猫じゃあるまいし、今まで俺たちと同じペースで亀がかなりの距離を歩いていたってだけでも褒めてやりたい。
そんな俺たちのやりとりを見ていたツキがボソッと呟いた。
「ルキ様……。私がイチバンの仲間で秘書なのに」
妙にイチバンを強調したな。
俺は転生してから、パワーはもちろんだけど聴力も上がっているせいで、結構はっきりと聞こえてるんだよな。
はぁ、それに秘書って何の?
「姉御? もしかして、子亀にヤキモチでも妬いているんっか?」
「ゴ、ゴリラには関係ないじゃないですか!? 黙っていてください! これは、大事なことなんですから」
なるほど。
どうやらツキはカメ吉に妬いているんだな。
てっきり、カメ吉を独占している俺に妬いているのかと思ったけど。
とりあえず俺は穏便に事を済ませるために、頭上にいるカメ吉をツキに渡した。
癒しの存在であるカメ吉を渡せば機嫌も直るだろうし、仲良くなってくれるだろう。
それはそうと。
俺はツキに返り討ちにされていたゴーに声をかけた。
「ゴー?」
「……な、なんっすか」
「山の向こうに行く近道的なの知らない? ゴブリン達の行動範囲の広さは、ゴーの村の連中から聞いて知っているつもりだし、実際見たから」
いや、それ旅出た初日に聞けよ——は言わないで。
忘れてたとかじゃなくて、ド忘れでもなくて。
えーっと、記憶の片隅にしまっていただけだから。
ゴーはツキに叩かれた頭を摩りながら、思い出すように喋りだした。
「はい。えーっと、まぁ、あることにはあるんですけど」
なんだその意味ありげな返答は!
視線は俺から逸らすし、何か隠しているな?
「ちなみにそのルートってどんなルートなの?」
「山の地下を通る洞窟だった気がするっすね。最短距離なら迂回よりかは早いと思うんっすけど……」
「けど?」
「か、かなり入り組んでいるんっすよ。一度迷うと死ぬまで出られないみたいで、超怖いじゃないっすか。おすすめしないっすよ!」
あぁ、そういうこと。
入り組んでいたら、ゴーの不幸じゃ厳しいかもしれないな。
まぁ、ソレが本当の理由ならだけど——…
なんちって。
なんか裏がある雰囲気で考えてみました(≧∇≦)
「ルキ様、私はその洞窟ルートを推奨します!」
渡したカメ吉を撫でるツキが会話に割って入った。
「どうして?」
「はい。どちらもゴリラのスキルに関してなんですけど、主に理由は二つあります。一つは、このまま進んでいたらいつ山を越えられるか分からないからです」
確かに、一理ある。
「もう一つは、洞窟内でのトラブルならある程度は予測できるからです」
うん、百理あるな。
トラブルがある前提で話が進んでいることにゴーが顔をしかめているけど、知ったこっちゃない。
そもそも、迷うってなら分かれ道に印をつけていけばどうにかなるでしょ。
悩むまでもなさそうだな。
「よし、洞窟ルートで行こう!」
「えっ」
「ゴーは洞窟まで案内できるね?」
「マジっすか!?」
「マジっすよ」
驚くゴーに対して、真顔で平然と答える。
ゴーの顔が明らかに嫌そうだけど、もう知らんのです。
早く、冒険者の始まりの街に行きたいのです。
「オススメはしないっすよ? ほ、本当に入り組んでいますし」
「大丈夫だから、案内よろしく!」
「……知らないっすよ」
最初、俺はツキと一緒に山を越えようとした。
しかし、頂上の標高が馬鹿げた数字で即座に断念。
次に迂回ルートを選んだ。
しかし、それもゴーが仲間になってから狂い始めた。
強すぎる不幸、巻き込まれる不幸。
このままじゃ先へ進めない。
ただでさえ距離が異次元な迂回ルートなのに、やってられない。
そして俺達は新たなルートへ。
山を潜る洞窟ルートへと進路変更をした。




