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29  お酒は程々に

 その後も宴会は続き、俺はツキからの餌付けを全部やってのけた。

 終始顔が高潮していたけど、ちゃんとやり遂げている。


 一応、一言付け加えるけどこの行為そのものは嫌ではない。

 嫌なわけがない。


 ツキは俺が異世界を求めた原因であるケモ耳っ子だ。


 色白な肌に、細身の体。

 そこからしなやかに伸びる四肢と発展途上な繊細な体のパーツ。

 肩下まで伸びる真っ直ぐな黒髪と、頭頂部にある角のない丸っこい熊耳。

 俺が食べる度に嬉しそうに微笑む童顔な少女、それが彼女ツキだ。


 夢にまで見たファンタジー美少女からの餌付けなんて、実現できるならお金を払ってでも受けたい。

 しかし、それはケースバイケースでTPOが弁えられている状況下ならの話だ。


 誰が、こんな大勢の前で、冷ややかな視線に晒されながら、赤子のようにヒナ鳥のように餌付けされたいと思うだろうか。


 こんな公開羞恥プレイは俺の望むものではないのだ!




 既に宴が始まってからかなりの時が経過している。

 まだまだ興奮冷めやまぬといった具合だろう。

 そんな時、事件が起こった。


 一人のゴブリンの親切心により、俺達にお酒が差し出されたのだ。


 そのお酒はラクーというりんごのような果実の醸造酒。

 採取した果物を地下に貯蔵していたら偶然発酵してできたらしい、ゴブリンの秘蔵酒。

 ジュースのような味わいの割に、アルコール度数が高い、そんなお酒。

 ※未成年だろうと、ここは異世界で飲酒は大丈夫なのです。そもそも人外ですし。


 そんなお酒を飲みきったツキは、お酒に慣れていないせいかすぐに酔っ払った。


 俺だって前世込みで初めてのお酒だ。飲み慣れているわけがない。

 でも普通、一杯でこうも酔わないだろ?

 もしかして酒に弱いのか?

 お酒にはあまり詳しくないから、よくわからん。


「ルキ様~、ついれますよぉ~」


 呂律が回っていない。

 ツキは頭をフラフラと揺らしながら、トロンとした目で俺の口元を見ている。


「今、拭いてあげますからね〜」


 ツキは布切れを掴み、俺の頰に片手を添える。

 俺はてっきりそのまま食べカスを拭き取ってくれるものだと思っていた。

 というか、誰であってもそう思うだろう。


 しかし——




 ペロッ




 ツキは俺の頰についている食べカスをそのまま舐めとったのだ。


「…………っ!?」


 傍から見れば、ツキが俺の頰に口付けしているようにしか見えない。

 ヒューという冷やかしの声がどこからともなく聞こえてきた。


 頭から湯気が立ち昇るのを感じる。

 クラクラする。

 布切れを掴んだ意味。


 しかし、そんなことお構いなしのツキはまだ続けた。


「えへへ〜、ルキ様は〜ふわふわであったか〜いれすね。はむっ」

「ヒッ!?」


 ツキは何故か俺の耳は甘噛みし始めた。


 はむはむと耳をかじるツキ。

 舐められた頰、そして現在進行形で甘噛みされている耳に熱が集まる。


 ゾクゾクっとするけ——…あっ、もうダメ。


 俺はそのまま思考回路がショートした。


 そして後を追うように、ツキは俺を抱き枕のように扱ってバタッと倒れ眠りについた。


 こうして、宴の主役の2/3が誰よりも早くダウンしたのだった。






 一方で、ゴーはルキ達と別れて真っ先に父親であるパミザの元を訪れていた。


「師匠、じゃなくて親父」

「どうしたのだ?」


 宴の会場から少し離れた木に寄りかかって座るパミザに、ゴーは頭を垂れた。


「今まで育ててくれてありがとうっす! 俺は、ルキさん達と冒険に、旅に出るっす!」

「知っているとも」

「出発は明日の早朝って聞いたから、親父に挨拶……。感謝を伝えにきたんっすよ」


 ゴーにとって、パミザという存在は特別だった。

 無論、親子という関係はある。

 しかし、それだけではない。


 ゴブリンの言い伝えで災いの存在とされてきたアルビノとして生まれたのにも関わらず、投げ出さずにここまで育ててくれた。

 村から追い出されない為に、数少ない呪術の教育を施した。


 あれも、これも、全てはゴーがここで生きていく為に。

 だからこそ、ゴーは一番に感謝を伝えにきたのだ。


「そうか。ルキ様の元でも頑張りなさい。私はいつまでもゴーの味方だし、父親だからな」


 パミザは頭を下げるゴーの背中に手を回し激励した。

 そして——


「話があるのは私だけじゃないのだろう? 早く皆にも挨拶してきなさい」

「……分かったっす」


 パミザの目元はハチマキで覆われているが、少し湿り出す。


「旅に出たら、きっと私の教えた呪術が役に立つ時が来る。ルキ様のトレーニングも欠かさずに、精進しなさい」

「分かってるっすよ!」


 ゴーはニカっと笑顔を作った。


 立派にな育ったな、我が息子よ。自慢の息子よ。


 パミザは最後に背中をバシッと叩き、ゴーを皆の元に走らせた。

 その時にはもう、ハチマキはグショグショだった。






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




〜提示可能ステータス〜



 名前:ルキ・ガリエル

 種族:−−−− / 魔族

 性別:⚥

 称号:−−−−

 属性:火、闇


固有(ユニーク) スキル :【状態異常完全無効】

E X(エクストラ) スキル:【物理攻撃耐性】【炎熱操作】【影操作】

スキル:【精神感応(テレパス)】【魔力感知(小)】【炎熱耐性】【自己再生】【痛覚緩和】

魔 法:−−−−



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

『大森林の騒動編』が思った以上に長くなってしまったので、

見やすくする為に魔と人で章を区切ろうかと思います。


ですので、次話以降からは新章

『大森林の騒動編——(人)』が始まります。

時系列は同じですが、視点が人間側に変わります。

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