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27  二人目の仲間

「お二方に相談がございます」

「なに?」


 俺の返答に、グリノーンが隣で立つゴーの脇腹を突く。


「ほれ」

「ん?」


 グリノーンに倣い、ゴーも膝を立てる。


「ルキ様。一度お誘いを断っておいて痴がましいんっすけど、俺を冒険に連れて行ってはくれないっすか?」


 ゴーの言葉に俺は少し驚いた。

 一度断られたのに、自ら来たいなんて。

 なんか嬉しい。


 俺はツキと顔を合わせる。


「……イヤです」


 顔を歪め、顰めっ面のツキがボソッと呟いた。

 が、俺には聞こえなかったってことで。


「もちろん!」


 俺は心から承諾した。

 ツキはどうやら不服みたいで、頬をぷくーっと膨らませている。

 なんでだろう?


 それはさておき、俺はゴーの隣にいるこの村の長、グリノーンに話かける。


「でも、良いのか? ゴーはこの村の切り札みたいな存在に」

「いいんです」


 俺の言葉を遮り、グリノーンはゴーの旅立ちに賛同する。


「ゴーから話を伺っておりました。今だから言えますが、我々はゴーに対してずっと厄介者として扱っていたのです。それが急に守護者扱いなんて、都合がいいにもほどがありましょう?」

「ま、まぁね」


 否定は、できないかな。

 ってか、今でも言わない方がよくない?

 言葉にしたら、もう確定しちゃうじゃん。


「ルキ様方はそんな時のゴーを誘って頂いただけでなく、励ましの言葉やアドバイスもして下さったのでしょう? 私は勿論、村の連中にも反対する者は居ませんよ」

「そう?」


 ツキは反対しているみたいだけど、旅において人数が増えることは別に悪いことではない。

 むしろメリットの方が多いだろう。


 それに、ゴーは性格が良さそうだし、チートスキル保有者だ。

 戦力としても期待できる。


「じゃあ、今日からよろしくな!」

「はいっす!」


 俺は手を差し出し、ゴーはガッチリと俺の手を両手で握った。


「あの、もう一つよろしいでしょうか?」

「どうしたの?」


 グリノーンはモジモジしながら、口を開いた。


「そのですね。ツキ様のお体の回復の目処が見えてきましたし、ゴーの旅立ちと幹部戦勝利の宴を今宵開こうかなと愚考しているんです」


 ふむ。


「いいね、やろう!」

「了解いたしました」


 なんて素晴らしい意見なんだ!

 やっぱ、人間じゃなくたって勝利の美酒に溺れたいよね。

 今日は宴だー、っとその前に。


「俺も、後でなんか狩りの手伝い行こうか?」

「いえ、大丈夫ですよ。我々の訓練も兼ねていますから」


 なんて逞しくなったんだ。

 よっぽど楽しみなんだろうな。


 グリノーンは嬉しそうな表情でお辞儀をし、部屋から出て行った。


「そこのゴーさん」

「な、なんっすか?」


 この空間に三人だけになってすぐ、ツキがゴーを睨みつけた。


「これだけは言わせてもらいますけど、()()ルキ様の()()の仲間であり秘書ですから! 勝手な真似は許しませんから!」


 ついこの間まで意識がなかったとは思えない声量で、ゴーを指差すツキ。


 色々ツッコミ所はあるんだけど、まずいつから秘書になったんだ?

 いや、違うか。

 そもそも、俺の秘書ってなんの秘書だ?

 その肩書きは何の役にも立たないと思うぞ?


「は、はあ。了解っす」


 ゴーは若干顔を引きつらせながらも一度頷く。

 何を了解したのか後で聞いておこう。


「あっ、それよりも、今後お二人のことをなんて呼べばいいっすか?」

「確かに」


 いつまでも、お二人とか、あなたとかは堅苦しいしな。

 というか、仲間内で”様”付けはやめて欲しいしな。


「今更だけど、あだ名でも決めよっか」

「賛成です!」

「右に同じっす」


「じゃあ私から! ルキ様はルキ様です! それ以外はありえません」


 勢いよく手を上げたツキは、目を輝かせながら先陣を切る。

 反論の余地がないとはこのことだ。


 もう”様”は固定なのか……。


「あー、あとあなたは。『おい』と『お前』どっちがいいですか?」

「どっちもイヤっすよ!」

「じゃあ白ゴリラで」

「なんっすか白ゴリラって! 俺に恨みでもあるんですか!?」


 温度差エグいな。

 他人事だから見ていて面白いけどね。


 しっかし、どうにかならないかな。

 ツキは見た目が清楚なクール系美少女なのに、ここのところは独占欲が強くなったり束縛してきそうな傾向が見え隠れしたりしているんだよな。

 レヴィーラの時なんて結構、うん。


「はぁ。じゃ、次は俺っすかね。ルキさんと姉御でいくっすよ」

「やめてください! 恥ずかしいじゃないですか!」


 食い気味に突っ込むツキ。

 あぁ言っているけど、なんだかんだ言って打ち解けていると解釈してもいいのでは?


「お前ら、仲良いな」




「「仲良くないです(っす)!」」




 息ピッタリですやん。

 俺のちょっとした茶目っ気で、こんなにも面白いなんて。

 プッ……っ!?


 俺を威殺せるレベルで睨んでいるツキに俺は萎縮した。


 なんか、ツキが急成長してから立場が逆転しているような。

 気のせい?

 俺はこれでも親代わりのつもりなんだけど。

 はっ、これはもしや思春期の娘は父親を嫌うって現象か!?


「って、最後は俺だな。言い出しっぺだけど、呼び慣れちゃっているからツキとゴーでいい?」

「はい!」

「無論っす」


 こうして俺たちに新たな仲間が加わった。

 名はゴー。

 突然変異の変色種。アルビノのゴブリンだ。


「これからよろしくな、ゴー」

「私たち、特にルキ様に不幸を移さないでくださいよ、白ゴリラ」

「よろしくっす、ルキさんに姉御。あと、ゴリラじゃねーっすよ」


 そんな二人のやり取りに俺は苦笑した。

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