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外伝  慎平が去ったその後

 オレはすぐに救急車を呼んだ。


 しかし、救急隊が着いた頃には慎平の心肺は停止していて、呼吸もなかった。

 救急車に同伴して病院に行き手は尽くしてもらったものの、慎平が息を吹き返すことはなかった。


 現実を受け止めきれず、待合席から動けなかったオレは、慎平が最後に何かを訴えていたことをふと思い出した。


 確か、あの時慎平は鞄を見て微笑んでいた。

 鞄、慎平の鞄。


 オレは放心状態のまま、慎平の鞄を漁った。

 すると鞄の中から遺書と書かれた封筒が見つかり、あの時の慎平は本気だったと言うことに気付かされた。


 ついさっきまで笑い合っていた親友が、家族が目の前で死んでしまったことに、悔しくて悲しくて涙がボロボロと溢れてくる。




〜遺書〜


 良太、漢に二言はないって言っていたろ? 

 今お前がこれを見つけて読んでいるってことは、俺は転生に成功したってことになる!

 だから俺が居ないからって泣くなよな(笑)

 幼い頃、親を亡くした俺はずっと一人だった。こっぱずかしい話だけど、もしかしたら、愛情というものを知らずに育っていたかもしれない。

 でも、そうはならなかった。


 良太に出会い、おばさんとおじさんに出会い、俺は救われたし幸せだった。

 いきなり居なくなって本当にごめん。

 どんな時でも俺の傍に居てくれた良太、本当の息子の様に接してくれたおじさんとおばさん。口で言うのはなんだか恥ずかしいけど、本当に感謝しています。

 みんなのことが大好きだ。


 そんなみんなにお願いがあります。

 もし、万が一俺が殺される様な死に方だった場合、その人を恨まないでやってほしい。

 俺が望んだことだし、俺はこっちで元気にやっているから。

 最後に、今まで本当にありがとう。そして、さようなら。


 PS:良太よ、追いかけてくるなよ?(笑)

 お前が来たら異世界美少女がみんなお前に流れそうだからな!






 オレは遺書を黙読し、止めどなく溢れる涙で前が見えなくなっていた。


「クッ……誰が、お前なんかを、追いかけてやるかよ……」


 きっと最後の一言は慎平なりに気を使ったつもりなんだろう。


 そして、オレは決心した。

 お前が悔しがるくらい人生を謳歌してやる、と。


 オレはその晩、慎平が眠る部屋に行き、そのまま眠った。

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