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16  集落発見?

 超えるべき山を背に、向かい合って座る俺とツキ。


「やっぱ迂回にしよう。オババ様は標高9000メートルまで行ったんだよね? ってことは、少なくとも山はそれ以上ある。何も考えずに一直線に登って降りるだけで、2万メートル以上だよ?」


 現実的じゃない。

 垂直に登り降りしただけで、少なくとも2万メートル。

 下手したら直線で3万、4万メートルあるかもしれない。


 無謀だ。


「でもでも、世界の中心と言われているこの山から下の景色を見下ろしてみたいんですよ。私の夢の中の一つなんです」

「うっ……」


 その捨てられた子犬みたいな表情は卑怯じゃないか?

 しかも夢を語られると、夢追い人の俺は弱いのだ。


 でも、だからって、山越えは無理だろ。

 俺はともかく、ツキは本当に死にかねない。


「だってすごくないですか! 今まであの山を越え人族魔族はいないとされているんですよ! 実際の高さは不明ですし、ある高さまでいくと呼吸困難になったり目眩にあったり、地面が無くなったり。ザ・冒険ですよ!」


 ツキは頭のネジを複数本、成長と共に落としてきたらしい。


 どう考えても酸素濃度が低かったり、高山病だったり、滑落や雪崩、雪や土砂で隠れた亀裂だったりが原因だろ。

 冒険って言葉には魅力を感じるけど、俺はこれでも一応ツキの保護者のつもりだ。


「迂回決定です。異論は認めん!」

「っ……はい」


 まだ納得のいってない様子のツキに、『もっと強くあって沢山の高位の魔法やスキルが使える様になったら登ろうな』と約束したら納得してくれた。


 きっと、心と体が急成長のせいで不安定なんだ。

 うん、きっとそうだ。




 普通山越えの際はトンネルを使うらしいのだが、当然のように獣人は通れない。

 万が一通れたとしても、法外な通行税がかかる。


 魔人? 言うまでもない。 


 俺は頂上であろう雲の上の方を見ながら、ため息をつき立ち上がった。


「じゃあ行くか」

「……」

「どした?」

「ルキ様。さっきから思っていたんですけど、なんか変じゃないですか?」

「えっ、俺どっか変か?」

「あっ、いえ違います。ルキ様は最高ですよ」

「そ、そう」

「そのですね、今朝からここまで一度も魔物を見ていないなって思って」


 ツキは周囲をキョロキョロと見ながら、眉を八の字に曲げて俺に尋ねた。


「言われてみれば見てない、か?」

「はい。大小問わず、大抵の山は魔物の住処に適した環境です。それなのに一匹も見ていないじゃないですか。昨日はあんなに遭遇したのに、たった一晩でこうも変化しますかね?」

「んー」


 索敵魔法とか、魔力感知的な何かがあればいいんだけど。

 残念ながら、俺達はそんな便利な魔法を習得していない。


 可能性があるとすれば、ツキが風を全方向に飛ばして索敵するって感じだけど。

 草木や岩に当たったら、風は奥に行かないし。


 要は現状はどうしようもないってことだ。


 ツキの言うように、気になる点は多々ある。

 でも、今何か問題が起こっているわけじゃない。


 俺達は何も起こらないことを願って、山の迂回ルートを進み始めた。




        ※




 山も森も大して変わらない。

 そんな中を歩くこと半日、突然人為的位開拓された集落を見つけた。


 遠目から見ても分かる、家々は小さくてボロボロだ。

 まぁ、俺にはちょうどいいかもだけど。

 集落は柵で囲まれてはいるけど、吹けば飛ぶような紙装甲で弱々しい。


「ルキ様、ここは多分ゴブリンの集落じゃないでしょうか?」

「ゴブリン!?」


 ファンタジーの定番、ゴブリン。

 雑魚の代名詞、ゴブリン。

 女の敵、ゴブリン。


 初ゴブリンだ。

 見てみたい、絵の中じゃない本物のゴブリン。


「どうする?」

「ルキ様って高位の魔人ですよね?」


 知らんけど……。

 俺って高位なん?

 自分のことは自分が一番知らないけど?


「た、多分?」

「でしたら、話が聞けるかと。何で山に魔物がいないのか、ここに住むゴブリンなら知ってるかも知れませんよ」

「なんで、俺だったら聞けると思ったの?」

「だって魔族って弱肉強食ですよね?」


 ……そうなのか。

 いや、そうだよな。魔物に権力もクソも無いよな。

 魔王はいるかもだけど、下克上とか普通にありそうだし。


「よし! 行こう!」

「えっ、私もですか!?」

「もち!」


 というか、ここに置いていく方が不安だ。


「大丈夫だって! ツキ一人くらいだったら、ゴブリンからでも守ってあげられるから」


 俺はツキの手を引きゴブリンの集落に向かった。

 ツキは顔を赤く染め、俺に流されるままついてきた。

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