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C1  燃え上がる闘志

 右腕が捥がれた激痛は言葉にならない。


 僕は死地にいた、地獄にいた。

 あんな化け物がいるなんて、見たことも聞いたこともない。


 あれが知能を得た魔物? あれが魔人?

 あんなの人間が敵にしちゃダメだ。勝てるわけがない!


 僕は必死になって馬を走らせた。


 どっちにしろ、早く王都に戻らなきゃ、死ぬのは僕だ。

 死ぬ?

 いやだ、死にたくない!

 こんなことがしたくて騎士になんかなったんじゃないのに。


 丸一日かけた道をフラフラになりながらも馬を全力で走らせ、日付を跨ぐ手前に王都に戻ってこれた。

 僕は王都を護衛している門番い助けを求める。


「お願いします。助けて……くだ…………い………………」

「おいっ! どうした——って、お前腕が!? おい、大丈夫——…」


 王都にたどり着いた安堵のせいか、今までの疲労が一気に襲ってきた僕の意識はプツンと切れた。




        ※




 目を覚ましてすぐ、僕は右腕の違和感に気付いた。


「夢、じゃなかった……」


 自然と大粒の涙が溢れてくる。

 僕は右腕があるはずの空間を無意識に撫でた。


「お、目が覚めたか。まだ痛むか?」


 声をかけてくれたのは、記憶が定かじゃないけどおそらく門番の人だろう。

 僕は涙を拭った。


「何があったんだ? なんで、一人であんな時間に」

「……魔人です。魔人が出たんです」


 僕は顔を伏せたまま、思い出したくもない昨日の出来事を伝えた。

 最後に魔人ルキ・ガリエルが言っていたことも全て。


 それは電光石火の如く王国の各騎士団や近衛、王侯貴族だけでなく一市民にも広まった。


 当然、カーネリア小団長所属の王国直属の北方騎士団”玄武”の総団長、エドガルドの耳にはいち早く届いた。


「魔人!? もしや、先日王都を騒がしたあのちっこい奴のことか? あいつに手も足も出せずに全滅だと!?」


 その噂を聞いた北方騎士団玄武の総団長は部下を失ったことと、その相手がこの間の魔人ということを知り怒りを露にした。


「討伐隊を組め! 俺が直接出向き始末してやる。憎き罪人の一族、獣人に肩入れしやがって」


 それに小団長(あいつ)は性根が腐ってはいたし、生意気な奴だったが俺の部下だ。

 それがどんな理由であれ、忌々しい獣人ごときのせいで失っていい命ではない!




 魔人騒動が大きくなっていることにまだ気付いていない僕は、王城へと呼ばれていた。


 見上げるほど高い扉が開くと、そこには王の間がある。

 右手には凄腕と有名の王直属の近衛隊と、なぜかこの場にいる名の通った腕効きの冒険者が数名。

 左手には見目麗しいメイドたちが一列にズラッと一列に並んでいる。


 僕は極力キョロキョロせずに真っ直ぐ進み、玉座の前で跪いた。


「面を上げよ」

「は、はいっ」


 玉座には王たる威厳が具現化した様な人、バビルド王国当代の王、バビルド・ジャイラース国王が座っていた。


「名はなんと申す」

「はい。ぼく、私はクリス・キャリーと申します」

「そうか。ではクリスよ。其方と玄武騎士団で協力し合い、魔人ルキ・ガリエルの討伐を依頼したい。もちろん報酬は弾む。急な話だが、頼めるか?」


 正直を言うと、もう関わりたくはない。


 しかし名指しでの王命。

 しかも、僕が派遣された小団規模ではなく、王国の四方を守る最強の騎士団の一角。玄武の総戦力に加え、玄武の総騎士団長のエドガルドさんも参加する合同作戦。

 ここまでの名誉は今後訪れないだろう。


「仰せのままに」


 負けたままではいられない。

 もっと強くなりたい。

 誰かを守れる、目の前で人が死なない死なせないくらい強く!


 金髪碧眼の片腕騎士クリスは恐怖を押し殺し、曇っていた目に再び闘志を燃やした。

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