目が覚めたら目の前に女神がいた。
その日は目が覚めたら、朝一番女神だった。
目を開けたら、あのお姉さんの顔が目の前にあったのだ。
「起きたー!ゆーじくん、おきたー!よかったーー!!!」
女神が泣いてる。
大号泣だよ。
「おはようございます。お姉さん。」
「ちゃんと朝の挨拶ができるいい子ーー!!!尊ーい!かわいいーーー!!!」
おれは幼稚園児か。
「昨日は、早く寝ちゃって、その後起きないから心配になったの。」
そう言えば、昨日は両親が蒸発したり、突然女神が目の前に現れたり大変だった。
精神的に疲れると、人間って寝るんだな。
昼寝くらいの時間に寝たと思うけど、そのまま次の日の朝ってことか・・・
「お姉さん、心配かけてごめんなさい。」
女神が口に手を当てて、声を殺して泣いてる!泣いてるから!
「ゆーじくんは、いい子だねー!!!」
ついに、地面にのたうち回ってるよ。
「でも、心配してくれる人がいるって嬉しいもんですね。」
ついに女神が、のけぞって痙攣してるっ!
「ごめんなさい!!!お姉さんチョロいのーーー!!!チョロチョロなのーー!!!」
のけぞりながら、びくん、びくん、って痙攣してる。
何かエロい!!
ほどなく、朝ごはんになるみたいだ。
また女神の力で朝食を一瞬で出してくれるのだろう。
「朝ごはんは和食がいい?それとも洋食?それとも両方?」
「うーん、そうだなぁ。(なんでも嬉しいんだけど・・・)」
「それとも、懐石?フルコース?満漢全席?」
重い重い重い!
料理も、気持ちも、ダブルミーニングで重い!!
とりあえず、軽めの和食にしてもらった。
日本人だからか、ご飯を食べたら安心するんだよねー。
あれ?女神様の分がない。
「お姉さんは食べないの?」
「ゆーじくんの近くにいるだけで胸がいっぱいで何も食べられないのーー!!!心配してくれる、ゆーじくんもかっこいーー!!!」
この人は、見た目的にも女神だし、比喩的な意味じゃなくても女神なのに、俺のことになるとなぜかポンコツ女神だ。
前世で何かあったのか!?
俺はどんなカルマを詰んだんだ!?
今朝の朝食は、ご飯と味噌汁、それに納豆。
メインは魚を焼いたもの、イワナかな。
川魚は正直小骨が多くて食べるのが面倒・・・
ん?骨がない。
既に中国人が骨を取ってくれているタイプの?
いや、切ったりしていない。
外見上は全く変わらないのに、骨が1本もないイワナだ!!
「あの、この魚、骨が・・・」
「あ、骨?ゆーじくんの喉に刺さったら一大事なので、全部抜いておいたよ。」
マジか。
もうすでに朝食からして人の力を超えている。
骨が1本もないなんて、もはやこれは蒲鉾との違いはないのではないだろうか。
でも、うまい。
「朝食美味しいです。」
「ホント!?ホントに!?食べたいものがあったらいくらでも言ってね!太平洋の魚全部でも持ってくるからね。」
世界の食糧危機が目の前に!
ご飯を美味しくて食べていると、お姉さんがこちらを見ている。
あ、目が合った。
ビクッてなって、横を向いた。
あれ?
避けられてる?
ちょっと傷ついたけど。
お姉さんの目線の先に少し移動してみた。
またビクッとなって、違う方向を向かれてしまった。
「お姉さん、もしかして、本当は俺の事嫌ってますか?」
「ちっ、ちがうの!見つめられたら、心臓が持たないと思うの!!!」
お姉さんの顔のそむけと、俺の移動はしばらく続いた。
朝ごはんは美味しいんだし、朝ごはんに集中しよう。
魚もあるし、味噌汁もあるし、のりや明太子の小鉢もあって、旅館の朝食みたい。
おいしいし・・・
は、ここでお姉さん女神さまが見てる?
はー、と聞こえそうなぬれぬれの瞳でこちらを見ている。
目にはハートが浮かんでいて、口元はだらしなく空いていて、少しよだれが垂れていた。
何かエロい。
「おねえさん?」
「はっ」
我に返ったように、お姉さん女神さまが口元のよだれを拭った。
すごく美人なのに、ポンコツで残念美人だなぁ。
そういえば、違和感を感じていた。
俺は、ご飯を食べるから、テーブルの椅子に座っている。
お姉さん女神さまは床に正座していた。
なぜに正座!?
「あのー、お姉さん、なぜに女神さまが床に・・・?」
「いいの!私のことはいいの!!!ゆーじくんみたいに高貴で尊い方がご飯を召し上がっているのに、私なんかが一緒に座るなんて・・・」
両掌で顔を覆って、嫌々しながらお姉さん女神が答えた。
女神でしょ!?
神様でしょ!?
1秒ごとに残念だな、この人・・・この女神さま。
ご飯を食べ終わり、お姉さんに確認しないといけないことがあった。
「あの・・・お姉さん・・・」
「はいっっっ!!!何でしょう!!?世界でも捧げたらいいでしょうか!!!」
俺を何だと思っているんだ・・・(汗)
お姉さん女神さまは相変わらず床に正座中なので、俺も床に降りて目の前に正座した。
「きゃびいぃぃぃ!!!何でございましょうかーーー!!!」
聞いたことない奇声を聞いてしまった。
「あの・・・これからの事を話したいんですが・・・」
「私のような下賤なものと、ゆーじくんの将来についてのオハナシーーー!!!」
お姉さん女神さまが床に転げて、エビぞりでびちびちっとのけ反ったまま痙攣していた。
「ゆーじくんとの未来ー!未来ー!!!」
10分くらいお姉さん女神さまが床の上でのたうち回っていたので、とりあえず見守っていたが、ある瞬間、ぴたりと止まって、すくりと起き上がった。
お姉さん女神さまが凛々しい顔でこちらを向いて言った。
「ゆーじくん、お姉さん下着がとんでもないことになっているので、着替えてきます。」
そう言い残して、お姉さんは風呂場に消えていった。
俺は、両親がいなくなったけれど、突如女神さまが現れた訳だけど、これまで通り学校に通っていいのか聞きたかっただけだけど・・・