女神は突然に
俺が人生の全てを失った瞬間、目の前に女神が立っていた。
手紙を1枚だけ残して蒸発したことを知った朝誰もいなくなった家に女神が現れた。
しかも、女神が爆泣き中。
「ゆーじくんーー!!!急にご両親いなくなったら不安だよねー!!!」
両親の蒸発で呆然と立ち尽くした俺。
その足元にすがって泣く女神。
なんだ、この非現実的な状況。
朝の忙しい時間だったけれど、30分も過ぎたら落ち着いた。
女神も落ち着いた。
ずーっとこっちを見てるし。
「ゆーじくん、かっこいい・・・かわいい・・・好き・・・」
なんだこれ。
一方的に好かれてる。
「あの・・・お姉さん誰ですか?」
状況が全くわからず、読者を置いてけぼりにしているのは重々承知しているが、俺にも全く分からない状況なのだ。
とりあえず、状況を整理してみよう。
朝起きたら、両親ともいなかった。
テーブルの上には、『元気でな』とだけ書かれた手紙があった。
俺の人生が終わった状況は、たった2行で説明終了だ。
そして訳が分からないのはここからだ。
俺が呆然と立ち尽くしていたら、突然目の前にこのお姉さんが出てきたのだ。←いまここ。
とりあえず、このお姉さん、サラサラのロングヘア。
髪は栗色。
目はちょっと茶色。
多分、日本人だけど、もしかしたらハーフ?クオータ?
飛び切り美人で、かわいい感じ。
服装は休日のOLさんって感じで、いかにも『お姉さん』と言う感じ。
『THE・お姉さん』、「クイーン・オブ・お姉さん』と言う感じだ。
「あ、突然出てきて不安だよね!私は女神。ゆーじくんが生まれた直後からずっと見守ってきたの。」
まさかの、ストーカー!?
「あ、ストーカーじゃないからね。ずっと見守っている、守護神的な。」
『ピリリリ』
ここでお姉さんのスマホが鳴った。
「あ、ちょっとごめんなさいね。」
お姉さんは、断りを言ってから後ろを向いて、電話に出た。
「あら、銀河大僧正様!?人間の前に現れたらダメ?え?え?あー、あー、聞こえない、聞こえない、電波・・・が・・・遠いみたい・・・」
『ピ』
「これで良し、と。」
上司みたいな人から!?
電話それでいいの!?
あと、銀河大僧正様って誰!?
やべぇ、ツッコミどころが満載で大渋滞中だ。
「混乱するゆーじくん、かっこいい・・・」
お姉さんは、美人でかわいいけれど、どこかポンコツだ。
でも、このキラキラした目はまぶしすぎる。
しかも、瞳の奥に『ハート』が見える。
本物だ・・・
「あ、大丈夫だよ!これからはお姉さんが養ってあげるからね!私、女神だからなんでもできるから!私に出来ることはなんでもしてあげる!とりあえず、ゆーじんくんのパラメーターを全部カンストさせる!?」
なんか、いっぺんに捲し立てるように言われたけど、このお姉さんがポンコツなのだけは、すごくわかった。
「ご両親が突然いなくなって心配だよね?まずは、お金?お金かな?いくらあったら心配なくなる?お小遣いで100万円あったら足りるかな?」
お姉さんは、どこからか100万円の束を出してきた。
いやいやいやいや、おかしいから!
「お姉さん、何が目的なんですか!?」
「私は、ゆーじくんのそばで、ゆーじくんを養いたい!」
両親がいなくなった今、養ってくれるのは魅力的だけど、どこの誰ともしれないストーカーに・・・
「どうしたら、養われてくれる?とりあえず、ゆーじくんの貯金通帳の残高をカンストさせておいたよ。」
わー!ゆうちょ銀行の残高が12桁まで全部『9』がならんでるー!
「このお家は、オーナーをゆーじくんに変えといたよ。」
ぎゃー!登記簿謄本に俺の名前がー!!
「あとは何がいるかな?ゆーじくんが住むための宮殿を作ったらいい?」
「いやいやいやいや!宮殿とか要らないから!」
「地球の半分くらいをゆーじくんのものにすればいい?」
「いやいやいやいや!地球はそのままで!いや、出来れば、もう少し平和に。」
「いっそのこと銀河系を丸ごとゆーじくんのものに!!!」
「いやいやいやいや!スケールがでかすぎるよ!」
『はあ、はあ、はあ、はあ』
家に居ながらにして、すごく疲れた。
この人タダもんじゃない。
「俺は、今のままの生活が出来たら・・・それで十分です。」
『バターン』
お姉さんが倒れた。
「ゆーじくん、良い子すぎる・・・」
お姉さんは、痙攣しながらうわごとのようにつぶやいた。
こうして、女神のお姉さんと普通高校生の奇妙な生活が始まったのだった。