ギルドに行きます
世界が発展するために創った種族『魔族』が、人から敵視されていた。
しかも、魔物とかいう生命体が誕生していた。
──ワケガワカラナイヨ。
でも、数千年も経てば世界は変わる、かな?
少し調べてみる必要があるな。
「…………わかった。教えてくれてありがとう。えっと」
「俺はハラルドだ。いつもは近くの店で酒場をやっているんだ。よろしくな」
「私は……ティアだよ。お水ありがとう」
「いいってことよ!」
コップを返しながら礼を言うと、ハラルドさんは豪快に笑った。
本当に親切そうな人で良かった。
「それより、ティアは何処から来たんだ? 森から来たって言っていたけどよ、あの奥は何も無かったはずだぜ?」
「……うっ、それは…………」
私は言葉に詰まった。
寝返りを打ったら天界から落ちて来ました。……なんて言っても誰も信じてくれないだろうし、適当な嘘を言ったら怪しく思われてしまう。
「ごめんなさい……詳しく言えないの。でも、危害を加えることは絶対にしない。絶対に」
「ふぅむ……まぁいいさ。こんなご時世だ。人に言えない事情ってのはあるだろうな。気にしねぇよ。……ここの奴らはそういうのには適当なんだ。何かの事情を持っている流れ者も多い。だが、それっで騒ぎを起こさないってんなら気にしない。なんせ、田舎だからな!」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
この人にとっては、本当に適当を言っているだけなのかもしれない。
それでも私は、変に詮索されないことを心から有り難いと思った。
「……あの、ここにしばらく厄介になりたいと思うんだけど、情報を一番効率良く集められる場所って何処?」
「はぁ? ここに住みたいってのか? 何もないつまんねぇ田舎町だぞ?」
「いいの。人が沢山居る所じゃなくて、こういうのんびり暮らせる所が私に合っているから」
「ティア……さては変な奴だな?」
「酷いなぁ、私がここに住むと、きっと良いことあるよ?」
最高神の加護がこの町に付くのだから、絶対に得だ。
御利益って奴だ。
「ま、確かに嬢ちゃんみたいな可愛い子が住んでくれるなら、この町も少しは活気に溢れるだろうさ!」
そういう意味じゃないんだけど……まぁ良いか。
「それで、情報が集まる場所だったか? それなら『ギルド』に行ったらいいぞ。ほら、町の奥に見えるデカい建物だ。そこには大陸中を旅している冒険者が集まっているんだ。難しい性格で顔も怖い奴が多いが、意外と良い奴らだぜ」
ギルド。また私の知らない単語が出てきた。
でも、ハラルドさんの言った通りそこに行けば、色々なことを調べることが出来そうだ。
大陸中を旅している。
それは確かに色々な情報を持っていることだろう。
錬金術に必要な素材や、魔物や魔族についてのこと。聞きたいことは沢山ある。
しばらくはギルドに入り浸るのも、一つの手段として良さそうだ。
「わかった。何から何までありがとう。後で、おじさんの店にも行くね!」
「おう! 待ってるぜ!」
こうして私は、初めて人間達の町に入り、おじさんに教えてもらったギルドへ向かった。
その間、ゆっくりと歩きながら、興味津々に町の中を眺める。
おじさんは田舎町と言っていたけど、人の数はそれなりに居た。
経営していると言っていた酒場、飲み食いが出来る喫茶店、外から来た人用にあるのだろう宿屋、そしてギルド。聞いた感じ腕の良い医者もいるらしい。
最低限の設備は整っているみたいで、ここに住んでも不自由のない生活を送れるのかな?
「まぁ、足りないなら作ればいいか──っと、ここがギルドか」
木組みの三階建て。
町の中では一番大きい施設だから、遠くからでもかなり目立っている。
こんな町にこんなに大きな建物が必要なのかと思ったけれど、どうやらギルドの中には二つの組織があるらしくて、スペースを半分ずつ共有しているみたいだ。
ギルドで登録をすると『ギルドカード』を貰えるらしく、そのカードは本人の身分証でもあり、町で仕事をするのに必要なのだとか。
魔物を討伐した際には、カードに討伐した魔物の詳細が刻まれる。
『魔素』の集合体が魔物らしい。
倒したら形は残らず、魔素となって空中に霧散する。その霧散した魔素を自動的に吸うことで、カードに詳細が刻まれる。というカラクリらしい。
魔物の討伐を専門とする『冒険者ギルド』、商売を専門とする『商業ギルド』とギルドには二種類の組織がある。
二つのギルドカードは共通。
どちらかで登録をすれば、両方で使える。
私もここで生活をする以上、登録をしておいて損はないだろう。
ということでギルドの中に入る。
──ギロッ。
私は、回れ右して外に出た。