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茶吉の日常

中華料理店

作者: 茶吉

茶吉は中華料理店の昼間のキッチンでランチ380円を出すコック長として働いていた。

丸の内のオフィス街で、サラダとスープがつくランチが350円だから人気が高くお昼近くなると行列ができる。1日300食以上多い時には400食出る日もあるほどだ。そんなに安くては儲けなんてないが、ランチで店を知ってもらって知名度を上げて夜にディナーを食べに来てもらえればいいというのがオーナーの考えだ。中華料理店だからなのか、従業員は店長と茶吉のほかは全員、外国人だ。言葉が通じないから身振り手振りでコミュニケーションをとろうとはするが、結局やっぱり通じない。

今日のランチはチャーハンだ。

ひとりしかいないウエイトレスはスープとサラダ も担当している。自分でよそって運んで行く。

レンジの前には鍋振りをする中国人が3人ずらっと並んでとにかく鍋だけずっと振っている。ただもうずっと振っているだけで、味付けはしてくれないので横から茶吉が調味料を振り入れた。盛り付けもしてくれないので、茶吉がおたまでぱかっとまあるく盛り付けていった。でもとにかくずっと鍋を振り続けるのには感心した。マイ鍋を持参しているのであとかたずけも手際よく、鍋をリュックに入れて背負って帰る姿は亀の甲羅のようだ。

チャーハンの横に紅生姜を乗せるフィリピン人がひとりいる。紅生姜を乗せる以外には、何もしない。

味見をするタイ人がひとりいる。味見をする以外には、何もしない。茶吉がこんもりまあるく盛り付けたチャーハンの横をかじった跡をつけてしまう。さすがにこれはダメだろうと、店長に一言味見のタイ人はいらないと伝えた。

翌日、メンバーが一人交代していた。味見のタイ人がいなくなって代わりに韓国人が一人。何をするのかと見ていたら、文句を言っている様子だ。誰一人として韓国語は分かる者がいないのだが言いがかり、いちゃもんばかりつけているらしいのが身振り手振りでわかる。

この文句を言うだけの韓国人はいらないだろうと店長に伝えた。すると、「そんなに注文ばかりつける茶吉さんが辞めてください」と店長が言うので、じゃあ辞めるよと辞めてきた。

翌日、茶吉は横の貸店舗の一角で、たい焼きやを始めた。薄利多売の忙しいのにはもうウンザリなので、高級店としてやっていこうと1匹1000円 でう売ることにした。材料はすべて国内産小麦粉 あずきを買い付けてきた。それを注文を受けてから、1匹ずつ小さい1匹用の鉄板型で焼くのだ。だからちっとも出来上がらなくてどんどん行列ができてしまう。ひっきりなしに人が並んでいて行列がなくならない。儲かって良いのだが、茶吉は、もっとゆとりをもってのんびりと商売をしたかったので、どうしようかと考えた。すると閃いたのが鍋振り中国人トリオだ。時給150円で働かされていることを知っているので、時給300円でどうかな、とスカウトしてみたら、そういう話だけは日本語が通じるようですぐに理解して翌朝には3人揃ってマイ焼き型をリュックに背負って出勤してきた。3人は見事に茶吉よりもよっぽどじょうずにたい焼きの皮を焼くので香ばしい香りが近隣にたなびいて行って店はますます大繁盛した。それを聞きつけて中華料理店の店長がやってきた。是非とも茶吉に戻って来て欲しいそうだ。茶吉の次に雇ったスカンジナビア人のシェフが、仕入原価6千円のランチを350円で提供して800万円の赤字を出した。「おかげでオーナーに怒られちゃったんですよ。茶吉さんが戻ってきてくれさえすれば…」と店長。でも今更あんな忙しい職場に戻る気は全くしないのだった。

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