第393話 二コラチェカの告白
「ん、好き。ボクはおにいちゃんのことが大好き」
「空の上から落ちてるとき、ボクは怖かった。けど、みんなと違うボクのことを誰も知らない、どこでもないどこかに行けそうで、ちょっとホッとしてたところもあった。それは間違いない」
「けど雪山に叩きつけられて全身が痛かったとき、ものすごく怖かったし後悔した。もしもあの時おにいちゃんが助けてくれなかったら、よりそうなってたと思う」
「その後もずっと面倒を見てくれて、うれしかった」
「スプーンを持てないボクに食べさせてくれた。心細くならないよう一緒に遊んでくれた。傷が痛む時は、優しくなでてくれた」
「全部、全部覚えてる。あの温かい思い出があったから、ボクは黒い吹雪の中でも平気だった」
「けど、だからここで再会できたとき、傷ついてるおにいちゃんを見てボクも傷ついたよ。隠してたつもりかもしれないけど、バレバレだった。隠しきれないぐらい、おにいちゃんは傷ついてたから」
「何とかしたいって思った。ボクにできることなら何でもしたいって思った」
「けどゴメンなさい。何もできなかった。何をすればよかったのか、今でもボクはよく分かってない」
「おにいちゃんが傷ついてることは分かるのに、その傷がどうすれば治るのか、難しすぎて分かんなかった」
「それでも何かしてあげたかった。ボクはおにいちゃんのことを家族だと思ってるから。そのとき分かったんだ、ボクは何がしたいのか」
「一緒にまた温泉に入ろう。おいしいごはんをいっぱい食べよう。今度は前にできなかったこともして、また遊んで」
「そうやって、ボクと一生一緒にすごそうよ。好き。大好き。超大好き。そばにいるよ、いつまでも。隣りにいるよ、どこまでも」
「行けるところまで、一緒に行こう。ボクは行きたいと思ったし、おにいちゃんとなら行けるって思えたから」
「ずっと一緒にいよ」
 




