表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

410/420

第390話 ルルル・ホーリー・ヴェルベットの告白



「――思い出しました。私はあの時、和成様と出逢ったその時から、既に一目惚れしていたのです」


「和成様の心の世界を、初めて会った瞬間この目で覗きました。持ち帰れないほどの情報を秘めた、秩序だった混沌の世界。様々な興味と知識であふれた、ひっくり返ったおもちゃ箱のようなわくわくの世界。その魅力に、私は無意識下で最初から惹かれていた」


「この世界で遊びたい。もっと堪能したい。和成様の世界を体験した短くも濃密な時間の中で、私はそんな思いを抱いたのです。そのことを思い出せました」


「多様なものを受け入れる騒がしくも楽しい豊かな世界。私の視界ではこの世界が、強く無意識に焼き付いていた。初めて出会い、この見通す目に寄り添っていただき、共に笑ったあの日々から。ずっと、ずっと和成様に焦がれていたのです」


「たとえあなた様が元の世界に帰られるとしても、せめて子どもだけでも。そう考えるぐらいには、私はあなた様をお慕い申しております」


「――ええ、分かっております。あなた様はそのような誘いを受け入れないと」


「“自分の子は自分で育てる、でないと意味がない”ぐらいのことは言ってのけると、分かっておりますとも。短い付き合いではありません。分かっているつもりです」


「だからこそ、です。和成様の、そういうところが私は大好きですよ」


「あなた様は共に愛し、共に育て、共に命をかけて守ってくれるお方。そう自然と理解していたからこそ、私はそこに恋をしました」


「あの時、純水温泉で私は和成様に言いました。せめて私だからこその唯一無二な理由で断られたいと。でないと、この恋心に決着はつかないと」


「ですが違うのです。本当は少し違うのです」


「唯一無二であればどのような理由でもいい、というのは間違いでした。もしも私が、女神様を理由に拒絶されるのであれば」


「信仰を理由に拒絶されるのであれば」


「それでも私の恋に決着はつかなかった」


「ですがそうはならなかった。それを理由に私を拒絶しない度量の深さが和成様にはあった」


「信仰する神がいたとして、それがたとえどのような存在であったとしても、その神を礎に真っ当に生きる姿は尊ぶ。そんなあなた様の人生哲学は、私にとって目もくらむような眩しさだったのです」


「あの時、裸のおつきあいをした純水温泉で、私は和成様に惚れ直したのです」


「そして、それだけではなかった」


「悪魔の大群を退け、オークションによって復興費用を確保し、音楽祭によってエウレカを励ますことで苦境に抗う意思を示した」


「死霊伯爵の手で人生を終えると、そう覚悟できずに恐怖していた私を、駆けつけ助けてくださった」


「魔獣に食べられ人助けを後悔していた私を、口の中に飛び込んでまで助け慰めてくれた」


「何度も何度も、惚れ直す瞬間は片手では足りません。和成様の行動に魅せられる度、私の胸がどれだけ締め付けられたことか」


「わずか一年、されど一年。その長くも短い間に――私は何度も、あなた様ただ一人に恋に落ちた」


「その度量に、行動に、在り方に。どうしようもなく惹かれてしまったのです」


「だから和成様」


「好きです。焦がれるほどに愛しています。どうにかなりそうなほどに求めています」


「――私はあなたの世界の一員になりたい。叶うのならば、その中でも特に重要な……あなたの世界の一部になりたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ