表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

403/420

第383話 四谷綺羅々の告白


「部長。最初にまず、お礼を言わせてください。ありがとうございました。きっと私は、あなたのおかげで変われたから」


「姫宮さんに告白して、部長に心情を打ち明けて、やっと気づいたんです。私はきっと特別になりたかった。誰でもない誰か、オンリーワンな自分になりたかった」


「男女問わずモテモテな人気者になりたかった」


「だから姫宮さんに告白した。女子なのに女子のことが好きな、特別な存在になりたかったから。受け入れてもらえたら、自分も人気者な姫宮さんのキラキラの一部になれそうだったから」


「そんな自分に気付けたのは、部長がただ話を聞いてくれたから。私を醜悪なものを見る目で見ずに、普通の人間だって、それは当たり前の感情だって言ってくれたから」


「おかげで私は、あそこまで自分を直視できた。醜い自分を、これも人間の普遍的な姿なんだって受け入れられた」


「けど、部長は逆だった。特別な視界の中、普通じゃない世界を生きている。特別な体験をしたからと言って、特別な人間になれる訳じゃない。そう考えてる」


「だからつまり、部長は特別なんて欲しくなかった。普通で居たかった。普通ってことに……していて欲しかった」


「けど、私も医師団で仕事をするようになって思ったんだ。ああ、世の中って意外と変な人ばっかりなんだって」


「部長は知ってると思うけど、実はこっちだと女の子同士の恋愛は推奨されてます。旦那さんがいるっていう前提ありきで。理由は、男女比的にハーレムが当たり前だから。奥さん同士の仲がいい方が都合がいいから」


「逆に男性同士の恋愛は凄く白眼視されてる。理由は、子どもが出来ないから。ステータスの高い人がたくさん産まれないと共同体が成り立たないから、子どもが出来ない恋愛は非難される」


「逆に言うと、子どもを作って社会に何かしらの貢献をしていれば、男性カップルでも普通に見逃してもらえる。この世界で男性カップルが白眼視されるのは、生物として間違っているからではなく、社会人として間違っているから。社会を構成し、支え、次へと繋いでいく大人として、次世代の高ステータス者を産むという果たすべき役割を果たしていないから」


「変だよね。まるで人が家畜か歯車みたい。けど、合理的だとも、一貫してるなとも思う」


「それに、変なのはきっと私たちの世界も同じ。古代ギリシャだと男性カップルこそが純愛、な扱いされてたし、現代社会だって、きっとどこかで何かが変だから、自由恋愛と一緒に少子高齢化が進んじゃってる」


「みんな、みんなどこか変」


「多分、8割の人は恋愛対象なんて環境次第でどうとでも変わるんだって、最近は勝手に思うようにしてる」


「だからきっと、何もかもが普通の人生っていうのはあんまりなくて、普通ってだけで平均以上なんだと思う。普通に大学を卒業して、普通に就職して、普通に結婚して、普通に子どもを育てて、普通に老衰で死ぬ」


「……そんな生き方は、きっと普通に上澄みだ。それはこっちの世界でも一緒」


「一番欲しいものなんてそうそう手に入らない。なのに自分にとってはどうでもいいものばっかり手に入って、それはきっと誰かがどうしても手に入れたかった一番だったりする」


「『死霊術師』の力を使って、戦場で医師団で働いてたら尚更思うよ」


「生きたい人が死んで、死にたがってる人が苦しんでるのに生きてる」


「きっと、世の中全体が普通じゃなくて変なんだよ。だから私たちは、みんな普通じゃなく変なんだ」


「だから特別でない私は、普通じゃないけど普通に変。姫宮さんに告白したのにそれを取り下げて、偶々その場に居合た部長を好きになっちゃったみたいに」


「――うん、私はあなたのことが好き。いつのまにか、好きになっちゃったよ。部長、あの時優しくしてくれて、ありがとう」


「こんな私でよければ付き合ってください。ちょっとずつ変な私たちが一緒にいれば……きっと釣り合いが取れて普通に近づけるから。私はあなたと、普通の恋人になりたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ