表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

401/420

第381話 山井療子の告白

 

「平賀屋。私は――好きよ、アナタのこと」


「……こんなこと、私に言う資格なんてあるのかと、ずっと思ってる」


「私はずっとアナタに敵意を向けていた。一方的かつ理不尽に、私の都合でアナタを嫌っていた。そこにアナタの非は一切ない」


「それはこの世界に召喚されてからも変わらなかった。けどまさか、召喚と『天職』をきっかけにアナタの手で救われるなんて思ってなかった」


「道に迷っていた私に、道を示してくれたのはアナタ。曇っていた私の眼を、晴らしてくれたのもアナタ。コネクションを使って、『国境なき医師団』設立を薦めてくれたのもアナタ」


「今の私は――全部アナタがいなければありえない」


「だから当然……惹かれていった。強いと思った。すごいと思った。敵わないと思った」


「だから――釣り合わないと思ってた」


「そもそも私はどこまで行っても凡人、国境なき医師団を設立したはいいものの、限界は近い。私なんかが国境をまたぐ組織を運営できるはずがなく、今のところは異界から召喚された勇者ってことで、名目上のトップにいるだけ。ただのお飾り」


「いずれ有能な誰かに任せるしかないけれど、その時点で国境なき医師団は国境に縛られる。どこかの国に属する組織になる。だから私は、どこかのタイミングで医師団から離れることになる」


「けれど、そこで積み上げた出会いも別れも経験も、決して無駄ではなかったわ。たくさん死んだ、たくさん見送った、たくさん助けられた。どれも紛れもない真実」


「アナタからしてみれば、それは認識矯正フィルターがもたらしたものかもしれないけれど、それでもこれは紛れもない私の選択なの」


「アナタからアドバイスを受けて、自分で動いて頑張ったの。受験勉強のように、頑張るべき時に頑張り切ったの。たとえ結末がどうなろうと、その過程は決して無駄じゃない」


「アナタが教えてくれたことよ」


「人が死ぬ瞬間に、命が失われる瞬間に極端に弱いアナタ。小人族ハーフリングの隠れ里で子どもを取り上げた後、失敗のプレッシャーから限界まで憔悴していたアナタ。冷や汗にまみれたまま、冷えた指先を振るえさせていたアナタ」


「私はアナタにいちご味の鎮静剤を処方したことを今でも思い出せる。その時に分かった、私でもアナタを支えられるんだって」


「私には出来ないことがアナタにはできる。アナタに出来ないことが私にはできる」


「きっとそれが、一番大事なこと。私が間違えていた時、アナタが正してくれた。それと同じように、もしもアナタが傷ついたのなら、私がそれを癒したい。心が折れ膝をついたのなら、もう一度立ち上がれるまで側にいたい」


「そういう関係に、私はなりたい」


「だから言うわ。例え資格がなくとも、我を通して言わせてもらうわ」


「好きよ、和成。アナタのことが」


「たとえどんなことがあったとしても、もしも傷ついているのなら――何をしてでも癒してあげたいぐらいに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ