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第100話 (間話)エウレカデートと意外な出会い

 

 陽気な歌が歌われていた。気の向くままに発せられる鼻歌である。

 つまりその旋律を口ずさんでいる女性はご機嫌であった。

 かなり高い上背。頭にかぶる三角帽子。

 そこから零れ落ちる、腰まで届く深緑色の髪。

 その胸元が大胆に開けられたホルターネックの衣服を見れば、彼女が女盛りであることは一目瞭然であろう。これで手に杖でも持っていれば、如何にも優れた才能を持つ魔法使いに見える容姿だ。


 実際のところは、彼女は魔法を使えないのであるが。


 そんな黄緑色の瞳を輝かせる妙齢の女性の傍らには、少年と女性がひとりずつ。

 和成とメルである。


 メルは何時もの黒眼鏡に、これまた何時もの目立たない市井に溶け込む無難な婦人服。

 和成も何時もの学生服――を、着ていた。すなわち今は着ていない。脱いで手にかけ、上はシャツ一枚で歩いている。

 そもそも学生服とは、黒の生地でできた厚手の服である。

 そして和成が春にこの世界へ召喚されてから、およそ半年が経過していた。

 つまり季節は既に、火の精霊と水の精霊が去り、植物と風の精霊が活発化するにはもう少しかかりそうな、残暑が未だ厳しい秋へと移り変わろうとしている。


 故に学生服で出歩くのはクソ暑かった。

 幸い『収納』のスキルを活用し、布類を常備しているので流れる汗を拭くには困らない。一枚の布というものはかなり便利だ。ねじれば紐、ほぐせば糸、割いて細かくすることも出来る。用途は実に多様。


 しかしそれはそれとして暑かった。


「別の服を選べばよかったと思うのだがね」

「それは自分が一番実感してますよ」

 ここ最近、炎天下の昼間を出歩くことがなかったが故のミスであった。

 何時もは研究にかかりきりなので、和成は冷房の効いた研究機関の建物から出ない。ジェニーとの商談へ出向くのも、陽が沈みかけて涼しさを取り戻した時間帯になってから。朝の滝行はしばらく前からお役御免になったので行っていない上、早朝に行うのでこれまた涼しい。

 そのため、何時もの学生服を外出着に選んでしまった。

 要は、特に何も考えていなかったのである。


 学術都市エウレカの民間街においては、和成の学生服は特に目立たない。

 頭のぶっとんだ研究員の中には奇抜な格好で出歩く者も多いからだ。


 ちなみにその衣服には、魔法がかけられたものも多い。

 サファイアが着用しているものと同じように。


「ふふーん。ちなみに吾輩はすごーく涼しいのである」

 日差しを遮るつばの広い三角帽子。片から腕まで露出したホルターネック。

 確かにそれなら涼しいだろう。おまけにそのワンピースには、彼女自身の手で冷房の魔導回路が刻まれている。涼しくない筈がない。

 見せびらかすようにしてクルクルと、彼女は子供っぽくその場で回る。普段あまり外に出ない彼女の研究者らしいとも言えるその白腕は、三角帽子の影から飛び出て日の下にさらされていた。

 ズボラな彼女にしては珍しいことに手入れをかかしていないその脇を、幼児のように万歳をして見せつけてれば自然とそうなるであろう。


「…………」

 その姿を無言で見つめる彼の視線に込められているのは、口には出さない抗議の視線だ。自分の短慮が招いたことだとは分かっているが、それでもああも自慢されれば腹が立つ。

 じりじりと日光が黒髪と首筋を焦がした。

 髪が熱をもって地肌が熱い。暑い上に熱い。

 苛々が募って仕方がなかった。


「その、()()()()()()()()()()()()?」

 だからつい感情が昂り、怒りの感情が『ミームワード』によって言葉にこもってしまった。

「う、うむ、すまない。もうすぐなのだよ。ごめんね、調子に乗って」

 その効果により言葉に込められた情報が伝達され、慌ててサファイアは手のひらを返す。

 和成が怒っていることが、ただの言葉よりも雄弁に伝わったためだ。


 (――イカン、失敗した)

 それは疑似的な威圧と同じであった。

 言葉と共に怒りの感情を伝え、相手を怯ませる。本来なら、ステータスの技である『威圧』ではない威圧ならば、それは人が勝手に感じるものでしかない。睨みつけようが怒鳴りつけようが、それでどれだけビビるのかには個人の主観による差がある。

 しかし、もしも和成が『ミームワード』によって、腹の底から湧き上がる怒りの激情を怒鳴り声に込めればどうなるだろうか。

 怒りの情報を込めればどうなるだろうか。


 (個人差は多分なくならない。――ただ怒鳴るよりは、効果あるだろうけど)

 それを利用すれば、いわゆる覇気というものを疑似的に起こせるできるかもしれない。

 虚仮脅しではあるが、もしもそれを狙って起こせれば――

 と考えて、和成は狸の皮算用をやめた。

 ついさっき、その感情のコントロールに失敗したばかりではないか。

 その所為でサファイアが落ち込み、肩を落としている。豊満な胸部ごと張られていた鳩胸が凹み、青空を見上げるほどに反り返っていた背中は猫背に変わっている。


 彼女はすぐに落ち込む。

 そしてすぐに、その落ち込みが底へ底へと向かってしまう。

 このままだと人目もはばからずに泣き出すかもしれない。

 というより既に半泣きである。このままでは帰ると言い出しかねない。


「いえ、俺も言い過ぎました。すいません」

「――うむぅ……」

「早くその、サファイアさんが行きたいという店に案内してください。()()()()()()()()()()()()()

「任せ給え!!」

 そして復活も速いのが彼女だ。

 さっきあった嫌なことを、簡単に忘れてしまったようだ。

 ある意味では、とても健全である。


「こっちなのだよ。和成氏、メル氏!」


 何故この三人がここ――学術都市エウレカの民間街を歩いているのか。

 それは先日のことだ。



 ☆☆☆☆☆



 ――なぁ和成氏。実は吾輩、式典用の服がないのである。

 ――俺の友人たちの凱旋は明後日ですよ? 間に合うんですか?

 ――一着持っているから大丈夫だと思ってたのであるが……確かめてみると胸のサイズが合わなくなっていたのだよ。

 ――ああー……

 ――そこで和成氏よ。今から買いに行きたいのだが、客観的な意見をくれないかね?

 ――スペル先生と

 ――じい様と兄者は凱旋の段取りで忙しいので無理なのだよ!

 ――別に俺がいなくとも……

 ――無理だね! なんせここ数年、民間街で買い物などしたことがない!

 ――えばらないでください。大体んなこと言ったら、俺だってこの国の礼服の買い方なんて知りませんよ。

 ――その辺りは単なる買い物と変わらないから問題ないはずである。

 ――なら1人で大丈夫でしょう。

 ――うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 ――泣くな大の大人がこんなことで! 分かりました行きますよ。

 ――おっしゃぁぁぁぁぁ!!!



 ☆☆☆☆☆



 ということがあったからだ。

 そして訪れた服飾店にて。

「デート、デートぉー」

 そんな子供のようにサファイアは浮かれながら式典用の衣装を物色していた。

 少し離れた場所から、和成はメルと共にそんな様子を見守っている。

「どれがいいと思うかね?」

「メルさん、呼んでますよ」

「平賀屋様、分かってて言ってますよね」

「……いやぁ、こういうアドバイスは同性同士で盛り上がった方がいいかと思いまして――」

 と言い切る前に、メルに背中を押された。


 むろん、サファイアが待つ方向へ、である。

 なので和成は大人しく諦めて、自分なりの助言を行うことにした。

 “女性の買い物に付き合う際はホストに徹し、ひたすら女性を楽しませることに執心すべし”という母の教えが彼の脳裏をよぎる。


 恋愛というものは分からないので、取り敢えず和成はその教えに倣う。



 ☆☆☆☆☆



 そして買い物が終わって。

 男視点で見た場合、女性の買い物はつまらないの一言に尽きる。基本的にホストに徹するか、虚空を見つめながら終了を待つかぐらいしかすることはないだろう。

「~♪」

 しかしほくほくと嬉しそうに袋を抱えているサファイアを見ると、ホストに徹しても悪くなかったと思えるのだから、悪い気分ではない。

 やはり選択肢が2つありそのどちらを選んでも大して結果が変わらないのなら、誰かが笑顔になれる方を選んだ方がいいと和成は思う。その分が自分の利益に上乗せされるのだから。

 それに和成も、戦闘用のアイテムを買う際にアドバイスをもらっている以上、お互い様だ。いつどこで何が役に立つかは分からない。万が一を想定し、用意しておいて損はない。何せ自分は弱いのだから。


 既にスペルから簡易的な魔法を1つ、呪歌を1つ教えてもらったが――それで確実に勝てるほど、和成の弱さは甘くない。

 ただ、勝てる確率が少しは上がるだろう。


「――――――」

 そんなことを考えながら、とある花畑の隣の広場にてベンチに座る和成は、往来を行き来する雑踏へ目を向ける。

 それはまさしく雑という漢字を表している、という印象を覚えた。

 雑。

 “あらい”、だけではなく、“入り乱れている”という意味も有する言葉。

 視線の先の往来は、まさしく入り乱れている光景だ。


 髪の色も瞳の色もそれぞれ異なっている。その衣服もまた多様な色彩である。

 それらが相まって、どちらかと言えば都会ではなく田舎寄りな地元以上にカラフルな印象を受ける。組み合わせは千差万別だ。

 しかしよく見ると似たようなカラーリングで集まる集団を見かける。それはどうやら家族であるらしい。父親らしき男性の周りに子供が集まり、その周辺には顔にその男性の要素を持つ容姿の赤ん坊を抱えた、男性の妻らしき女性がチラホラ見える。

 その中には、あどけなさが抜けていない少女が乳児を抱えている場面があった。隣には女盛りの30台前後に見える夫人が、子供の抱き方をレクチャーしている。


 その少女と乳児が姉妹なのか、或いは親子なのかは分からない。この世界のほとんどの国では結婚が早い上、女神の安産の加護のため多少の無理があっても母子ともに無事で生まれる――生まれてしまう。

 その結果、この世界では産婦人科医の息子としては心配になる年齢で子を成すことが普通にある。多数派ではないが、それで白い目を向けられるほどの少数派でもない。

 そしてそれは下限の増加だけでなく、上限の増加にもつながっている。

 孫より年下な子供がいる女盛りを過ぎた――しかしそれでも元気なお婆ちゃんは一定数いるらしい。モンスターが存在するこの世界では、その年まで生き延びているだけで縁起がいいと好まれる。

 多産を推奨する女神の宗教の影響も大きいのだろう。


 結婚。そして家族。


 この2つの言葉が持つ意味と範囲と器の大きさは、(無論、地域にもよるが)この世界の文化圏では地球とは全く比較にならない。多様性の許容や、平等でなくとも男女が互いに尊重し合うことを至上のものとするなら、この世界は地球上のどの国よりも万歩先を歩んでいる。

 (――まぁ、この国の制度を再現できる国は地球上のどこにもないだろうけどな。過去現在未来から平行世界まで含めても、多分ないと思う)

 女神の加護がない。モンスターがいない。魔法がない。ステータスがない。

 それでどうして同じ社会ができるのだろうか。

 和成がいた世界とこの世界では、辿ってきた歴史が根本的に異なるのだから。


 (しかしそれでも、人の善意――悪意もだが――は、存在している。この世界の人の営みに、何故か愛着というものが湧いてくる)

 それがどことなく神秘的なものに思えて、和成は空を見た。

 遥かなる天を見た。

 その視界の端に、学術都市エウレカが誇る研究棟が移る。棟であり塔でもある、そびえたつ巨大建築だ。そこで日夜、魔導の神髄へ触れようと数多の研究者たちが挑んでいる。

 その素材が何であるかはまるで分らない。

 強いて言うなれば有機的な金属だろうか。

 ただ、ミスリルといったファンタジー金属――この世界にとっては、希少であってもファンタジーではないだろうが――があるこの世界で、無機物と有機物の区別をつける意味があるのかは分からない。


 そんな一瞬と呼ぶには少々長いの時間の中で、しかし熟考と呼ぶにはあまりに短い時間の中で、和成は濃密な物思いにふけていた。


「何を考えているのだね?」

 少なくとも、決心した様子でベンチの隣に座ったサファイアに呼びかけられて、ようやく現実に戻れる程度には集中していた。エウレカでの修行の日々や研究への協力で、和成の頭脳は鍛えられ、その結果『思考』のスキルもランクアップし、集中に伴う体感時間も増加していた。

「いや、この世界にはこの世界の文明があるんだな……と思いまして」


 そして和成が天上を見上げることをやめ、往来に視線を戻した先には、鎧を着込んだ治安維持を担う騎士達がいた。

「例えば、あの騎士の方々。こんな残暑が厳しい中ご苦労様……を通り越して普通に危ないと俺なんかは思うのですが」

「別に問題はないだろう。彼らは鎧の着用に補正がかかるスキルを持っている。猛暑であろうと極寒であろうと、その負担は軽減されている」

「そうなるんですよね。あとは、ああいう人たちもですが――」


 和成が指をさしたその先にいるのは、武具を『装備した』冒険者らしき者たちが歩いている。その武具の形は多様の一言に尽きるが、その組み合わせがこの国の美的センスに合わない者がチラホラいるのだ。

 魔法使いのフードを着込み、しかしフードは被らずに、頭を鉄兜で覆っている者がいた。

 上下で異なる形状・模様の鎧を着込み、明らかに調和がとれておらず浮いている者がいた。

 中には草鞋を履き、下半身の衣装は布製だが、上半身は重厚な鎧を着込んでいる者もいる。

 頭に過剰装飾のアクセサリーをつけている者、強面の顔に全く似合わない桃色の巨大リボンを『装備』している者、どす黒い骸骨スカルと派手派手しいハートと黄金に輝くスターの指輪を同じ手に付けている者もいた。

 中には重厚な鎧を一部だけ着た、所謂ビキニアーマーというものを装着している女冒険者もいた。


 奇抜な格好の大道芸人のような冒険者が、往来の雑踏の中に点在している。 


「実用性を見栄えより優先すれば、ああなることもある、と」

「彼らは命を懸けているからね。たまたま手に入れた強力な『装備品』が自前のものと合わせられないからと言って、あるいは見た目がアレだからと言って、それを装備しないのにはリスクが伴うのだよ。死ななくなる確率を上げる手段としては、『ステータスのパラメータ』を上げるのが一番手っ取り早いというのは、色々と調べている君が一番詳しいだろう」

「まぁ、見栄えを優先して死んだら、死んでも死に切れませんよね」

「逆にどれだけ『装備』を整えようが、どうせ死ぬときは死ぬという考え方もできるがね。だから最期くらいは自分の好きな格好で――という者もいるのだよ。それに見栄えを気にしないと言っても限度はあるのである。流石に男で下着鎧ビキニアーマーを着るような奴は少数派だ。故に結局のところ、個人が自己責任で好きにすればいい、という感じに落ち着くのだよ」

「確かに、それが一番、無難ではあるでしょうね」


 見つめる先の往来は、戦争が近いとは思えないほど賑わっている。

 異界より救世の存在を召喚することに成功したこと。

 本格的な衝突がまだ起こっていないこと。

 そして明日には救世の存在の凱旋が始まること。

 そういった希望が持てる事情が積み重なっているからだろう。


「実は俺は、最初はこの世界に俺の知識を伝えることに抵抗があったんですよね。この世界にどれだけの知識を与えるべきか、分からなかったものですから。もしも俺が伝えた知識のせいで、本来この世界に生まれるはずだった知識が生まれなかったら――みたいな、証明の出来ない仮説を悶々と考えたりしてたんです。俺は所謂、文化とか歴史とかいうのが好きなんですよ。どんな凄い王様でも英雄でも、1人で文化を文化たらしめることは出来ない。1人だけじゃあどれだけ凄くてもマイブームでしかない。それは歴史も同じこと。千年の歴史を積み重ねるには、千年という時間が経つのを待たなくてはならない。そしてそれを待つには、何十人を超える人たちのバトンの積み重ねがないといけない」


 積み重ねられた歴史と個人の意思。どちらを尊重すべきだろうか。

 個人の意思も大事だとは思うが、しかし歴史とは個人の意思が積み重なって初めて、積み重ねることができるものである。

 況や、文化も、制度も、社会も――だ。

 そう和成は考えている


「だから安易に知識を持ち込めば、そういったものを破壊してしまうのでは、と思ったんです」

 だからこそ和成は、その言葉をサファイアに吐露した。


「この世界には、この世界で積み上げられた歴史があるでしょう。俺はそれを尊重したかった。しかし」


 思い起こされるのは、エウレカを訪れた際の景色だ。

 魔力によって動く魔導通路は、行き先を指定して乗るだけで目的地まで送ってくれる。

 魔力が電線のような供給機器により都市中に張り巡らされ、それを利用して多くの魔導製品をその場で活用できる。

 鉄筋コンクリート造の建物もあった。

 ありとあらゆる文字が集められた大図書館の大きさは、想像の十倍を超えている。一生住めるかとも思った。


「当たり前のことですけど、上には上がいるんですよね。どんな時代のどんな国でも、俺より頭がいい御仁は探せば絶対にいる。ここでの日々はその事実を改めて突き付けられたようでした。サファイアさんの研究に関して俺の頭脳はあまり役に立っていない。偶にみんなの話についていけなくなる。言語は分かっても、内容が理解できない」


「当たり前である。じい様は世界最高と謳われる頭脳の持ち主。そうそう同格が出てこられても困るのだよ」

「そうなんですね。所詮、俺は巨人の肩の上の小人です。俺はこの世界の人々にはできないことが出来ますが、それは俺がこの世界の人より偉いからじゃない」

 そもそもが傲慢だったかもしれない。

 早い段階で、天狗の鼻が伸びる前に折れてよかったと心底思う。


「尤も、そしてそのうちに偉大なる巨人の一部になるんです。ならその時に巨人の品位を貶めないような、そんな恥ずかしくない人生を送りたいものです」


 積み重ねられた歴史の重さを、俺はまだ甘く見ていたようで。


 和成の愚痴は、そんな言葉で締めくくられた。



 ☆☆☆☆☆



「――――――」


 どう励ますべきであろうか。

 サファイアは陰鬱で儚げな表情を見せる和成を覗き込みながら考える。

 しかし彼女は人との距離感を図るのは苦手だ。下手に励ませば、心のニキビを潰してしまいかねない。死にはしないが、びくりと肩が上下するような激痛が走るだろう。

 特に今は、和成が相談を持ち掛けてくれたことに舞い上がっているのだ。自分と彼の距離が近づいということを、強く実感している。


「よし和成氏、ゲームをしよう!」

「え?」

 だからか、彼女は何故かそんな提案を行った。和成と見守っていたメルからしてみれば一連の流れにつながりは感じられないが、サファイアにはある。

 何故なら彼女は浮かれ、テンションが上がっているのだから。


「より奇抜な格好をしている冒険者を見つけられれば勝ちなのだよ!」

「別にかまいませんが……判定はどうするんです?」

「メル氏にでもしてもらえばいいではないか! おっと早速発見なのだよ! 和成氏と同じ黒い集団だ! その中に見たことがない変なのがいるのである!!」

「どこですかー?―――って、ぇ」


 その先にいたのは、和成もよく知る集団であった。

 考えてみれば当たり前である。救世の存在の凱旋は明日に迫っているのだから、既に王都を発っていた彼らが集まるのは道理である。


 そこにいたのは、黒髪黒眼で統一されたパーティだった。

 ただしそのうちの1人は、赤で統一されたフルフェイスヘルメットと全身をピッチリ覆う衣装に包まれている。

 その中の顔を和成は知っているが、サファイアは知らない。


 腰に巻かれた金属のベルト。燃えるようなマント。

 固有天職『ヒーロー』を有する、雄山の一党パーティであった。


 なお、『魔法少女』法華院は変身していなかった。



 ☆☆☆☆☆



 問五「この世界にどれだけの知識を与えるべきか」

――――今思えば、そう考えること自体が傲慢であるように思える。


学術都市エウレカ編終了。クラスメイト編part2(別名「悪魔襲撃編」)へ続く。

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[一言] 今思えば--- ってなんだかわかんないけど不安になるよね
[気になる点] 主人公のステータスをもっと見たい。
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