4話 魔法初心者と魔物が語る魔法についての話
魔法に対する世界観について、かなり独自の設定が出てきます。ご了承ください。
「う〜ん、何から話したものかな。」
2人でテーブルを挟み向かい合う中、ネイバーは腕を組んで少し考えるような仕草をする。
何を話すか迷っているようなので、俺は先に自分の聞きたいことを聞いてみることにした。
「そしたら魔法について教えてよ。とくに、さっき森の中で話してた、ネイバーが本当は魔法を使えるけど俺の魔力が足りなくて魔法が使えないとかいう、そこらへんのこと聞きたいんだけど。」
「そうか。それがいいかもしれない。」
そう言うとネイバーは組んでいた腕を解いて、俺がテーブルの上に置いた魔法の本を手に取った。
「ライトは、魔法については詳しくないよな?」
「う、まぁ。」
「ふ〜ん。」
ネイバーが本をペラペラとめくる。
「この本の内容は大体分かるの?」
「え〜と、なんとなく、わかるようなわからないような。」
「どっちだよ。」
「うっ。あんまり、わからないです。」
「ふ〜ん。」
苦し紛れに答える俺に相槌をうちながらネイバーは本をめくり続ける。
というか、逆にネイバーはこの本の内容が理解できるのだろうか?
「ネイバーはその本の内容わかるの?」
「うん?多分わかるよ。」
「どういうこと?」
「この本の文章はよくわからないけど、ここに書いてあるのと同じ魔法は使えるってこと。」
「おお〜。」
なんでもないように答えるネイバーに少し感心してしまった。
「ただまぁ、この本の文章はわかりにくいわ。魔法なんて感覚による部分が多いから、それを文章にしようとするとこんな感じになるのかもしれないけど。」
「あ、やっぱりその本てわかりにくい?実は俺もそう思ってたんだけど、家にある他の本も似たような感じだから、魔法の本てわかりにくいのが普通なのかと思ってたよ。」
「どうかね。まぁ、魔法は実際に経験したことがあるかないかが重要だよ。一度できれば、本の内容がわからなくてもなんとなく感覚が掴めてできるもんだ。」
「おお〜。俺でもできるようになる?」
ネイバーの軽い口ぶりだと俺でも魔法を使うことができるかもしれない。少しワクワクする。
「多分ね。」
「多分かよ。」
「それはライト次第だろう。ただ、色々な魔法を使うことは少し厳しいかもな。」
「えっ、そうなの。」
少し期待したのにがっかりだ。
「逆に言うと、多少の魔法は使えるようになると思うぞ。」
「う、う〜ん。そっか。」
ネイバーが慰めの言葉をかけてくる。
「そういう、その人がどの程度の魔法を使えるようになりそう、っていうことも見てわかるものなの?」
「いや、わからないよ。ただライトの場合、俺を召喚しているっていう要因があるから。」
「どういうこと?」
俺の頭の中に?マークが大量生産される。
ネイバーは魔法の本をペラペラとめくり、火の魔法が載っているページを開いて、俺に見えるようにテーブルに置いた。
「魔法を使うときには、魔力を消費する必要があるんだよな。」
「うん。」
「で、この本に載っている火を出す魔法とかは、その分の魔力を一度消費して、火の魔法を出しているんだな。」
「うん。」
「普通は、そのときに消費した魔力っていうのは時間がたてば回復するのよ。例えば、火を出す魔法を3回使う魔力を持っている人が、一日に3回魔法を使ったとしても、次の日にはまた3回火を出すことができるわけだ。」
「うん。」
「ところが、召喚の場合は違うんだよ。召喚をしている限り魔力は回復しないんだ。」
「そうなの!?」
「あぁ。実際には、召喚をしたならその分の魔力を消費し続けることになると言うべきか。」
ネイバーが少し考え込む様子を見せる。
「う〜ん、伝わりにくいかもしれないけど、火を出す魔法と動物を出す魔法は、何もないところから魔力を消費して何かを出すことには違いがないわけだ。」
「うん。」
「そこで何の違いが出るかというと、魔法を使うときに縛りを入れているかどうかというところなんだよな。」
「縛り?」
「ああ。例えば、単純に火を出すなら縛りもなにもいらない。ただ、火を出した後にその火を自由に動かす場合には、縛りはいらないけど魔力を消費し続ける必要がある。」
「そ、そうなのか。」
「そう。で、火を動かす場合には、火を出した後でも魔力を使えば動かせるわけだけど、動物とかを召喚する場合には、召喚をする前にこれだけ魔力を消費し続けます。ということを決めておく必要があって、その上で召喚を行うわけだ。これが縛りになるんだな。」
「へ、へぇ〜。なるほどね〜。」
「よくわかってないだろ。とにかく、召喚したならその魔力を消費し続けることになるわけよ。で、ライトは俺を召喚したわけだから、その分の魔力を使い続けてるわけ。つまり、いつものライトが持っている魔力から、俺を召喚する魔力を差し引いた残りが今後ライトが使える魔力なわけ。だから、ライトが差し引き分の魔力しか使えない事を考えると、将来的に多少の魔法を使える可能性はあるけど、色々な魔法を使うことができるか、っていうとそれは難しいと考えるわけよ。」
「お、おう。つまり、召喚には魔力をずっと使う必要があって、だから俺は魔法が使いにくいっていうことか。」
「そんなところだよ。」
ううむ、そうなのかもしれない。なんだかわからないが、魔法を使うのには魔力だけでなくて縛りだか何やらもあるのか。
「あれ?けど、俺はネイバーを召喚するときに別にそんな、縛り?何てやってなくない?魔法陣がその役目ってこと?」
質問すると、ネイバーは呆れたような顔をした。
「あ〜、まぁそうだな。魔法陣ていうのは契約書みたいなものだよ。実際、よくわからずに魔法陣を描くなんて危険なことよくやったと思うよ。」
「えっ、けっこう危なかったの?」
「そうだな。最悪の場合、呼び出した動物とか魔物の奴隷になる。魔法陣でそういう契約をして召喚をしたならね。俺ならよくわからない魔法陣なんて使おうと思わないね。」
「まぁ、けっこう焦ってたから。あはは」
やってしまったことは仕方ないので、愛想笑いでお茶を濁す。
「……それで俺を召喚できたんだから、お前意外と大物かもしれないわ。」
「そ、そうかな〜。あはは」
褒められているわけではないがとりあえず笑っておこう。
そんな俺を尻目にネイバーは魔法の本を閉じて脇に避けた。
「さて、とりあえずライトが魔法を使いにくい説明はできたかな。」
「お、おう。」
ネイバーとの契約が一体どうなっているのかは怖いので聞かないことにする。藪蛇になるかもしれないし。
「じゃあ次は、え〜と、俺がどうして魔法を使えないのかの説明をするか。」
ネイバーは次の話に行こうとしているようだ。
「あ、ちょっと待って。その前に何かつまめる物を取ってくるわ。」
話しもまだ続きそうだし、何か食べながら話をしたい。
「ああ、そうだな。」
ネイバーも賛同する。
俺はテーブルから離れて、戸棚に保管している木の実を取り出し、小皿に盛り付けてテーブルへと戻っていった。
次の話に続きます。
お読みいただきありがとうございます。
評価などいただけますと、さらに幸いです。
少しタイトルを変えました。こうして少しずつ修正をしていくのも新鮮な感覚ですね。
1日に5千文字文章を書いている方がいるらしいですが、すごいですね。そんな人を目指して頑張ろう。