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第5話

3人は、慌しく家を出て行ってしまった。


静けさを取り戻した部屋で、


俺は、一人、途方にくれる。


一体この先どうしたらいいんだ?


元に戻る事は出来るのか?


大体ハムスターになった人間なんて、


マンガや小説の中の話だ。


実際にそんなやつ見たことない。


元に戻る方法はあるのか?


元に戻れる保証もないじゃないか。


それに、俺が俺であるということを


どうやって証明すればいい?


人間の言葉すら喋れない俺に、


証明する手立てはないんじゃないか?



考えれば考えるほど、どうしようもできないことに気付く。


頭を振り、その場に倒れこむ。


俺はどうしたらいいんだ・・・。


ぼんやりと答えの出ない問いを繰り返す。


チ・・・コチ・・・コチ・・・コチ


規則的な音に気がつき、ふっと目を上げると、


大きな大きな時計が目に入る。


しまった!!10時半?!会社に行かないとヤバい時間だ!


あわてて起き上がり、会社に行く準備をしようとし、


はた、と自分がハムスターであることに気付く。




あ、俺、もう会社に行かなくていいんだ。


「ははは・・・そっか・・・」


ふっと気が抜けて、また座り込む。


ハムスターの俺が会社へ行ったって、


何にも出来ない。そう、ペンさえ持てないんだ。


それに、俺がいなくても、会社は回る。


このまま俺がずっと元に戻れなくても、


そのうちに新しい人が来て、


何事もなかったように穴を埋めてくれるだろう。



俺は、今までの人生を省みる。


ただ、毎日朝起きて、飯食って、会社行って、


仕事して、帰って、また飯食って、風呂入って、寝る。


彼女もいないし、休日は、だらだらと家で過ごすだけ。


そんなつまらない人生を送るよりも、


ハムスターとして、好きな時に寝て、


好きな時に、好きなだけ美味しいものを食べて、


好きなだけ回し車を回す。


こっちのほうが数倍よくないか?


いや、その暮らしはむしろ、今まで俺が憧れてやまなかった、


王様暮らしそのものじゃないか?


なんと素晴らしい生活じゃないか。


そうだ、俺はこのままハムスターとして生きるほうが


幸せなんだ。


半ばヤケクソな結論を出した俺は、


フカフカの綿の布団に、ヒマワリの種を抱えて


もぐりこむ。


「そうだよな!人生前向きに生きなきゃ!」

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