第4話
バッと外を見る。
「お兄ちゃん!何やってるのーーー!」
妹のモモの声だ。会社に行く時間になっても
起きてこない俺を心配して、
部屋を覗きに来てくれたらしい。
「モモ!助けてくれ!俺ハムスターになっちまったんだ!」
やった!これで外に出られる!
「お兄ちゃん!やめてー!」
ん?
モモは何を言っているんだ?
檻の外に、よく目を凝らしてみると、
遠くのほうに、二つの人影が見えた。
一つはモモのようだ。
もう一つは・・・・
俺ーーー?!
なんと、そこには、四つんばいで部屋を駆け回る俺の姿が!!
そうか・・・俺は自分の身に起こったことをやっと理解した。
俺はハムスターと、中身が入れ替わっちまったんだ・・・。
いや、そんなマンガみたいなことが起こるわけがないじゃないか。
しかし現実的には、小さなハムスターになってしまった俺が
ここに存在する。
とにかく妹に気付いてもらうことが先だ。
何とかなるはずだ。
病院?!NASA?!どっかの研究所?!
よく分からないが、どこかへ行けば治してもらえるかもしれない。
俺は、必死で妹を呼ぶ。
「オーイ!オーイ!モモ!お兄ちゃんはここだーー!」
「きーがーつーいーてーくーれー!」
ガタガタと扉を揺らしてアピールするが、
妹は、部屋をバタバタと走り回る俺を
止めようと必死で、こちらを見ようとすらしねえ。
「どうしたの?」
母さんの声だ。異変に気付いて、部屋に入ってきたようだ。
「何ふざけてるの!」
四つんばいで走り回る俺を見て、
ふざけて遊んでると思ったようだ。
あんまり、四つんばいで走り回って遊ぶ
社会人っていないよな・・・。
「もーいい加減にしなさい!」
「お母さん、お兄ちゃんが変になっちゃったよー!」
違うんだ!そいつはハムスターなんだ!
本物の俺はこっちだ。気付いてくれ。
「おーい 俺はこっちだー!」
必死で呼ぶが、ちっとも気付かない。
そして、走り回る俺の姿をしたハムスターは、
二人にガッチリ捕まえられてしまった。
「病院に連れて行ったほうがいいわね!」
あわただしく、部屋を出て行く3人。
両脇を抱えて、連れて行かれる俺の姿は、
何かで見た記憶がある。
そうだ・・・思い出したぞ。
昔、写真で見た、NASAに捕らわれた宇宙人に
そっくりじゃないか・・・。