第3話
檻から出ようにも出られない。
そうだ、誰かが気付いてくれれば、
この状況を何とかできるかもしれない。
大声で、家族を呼んでみる。
「かあさーん!モモー!」
「おーい!誰かー!」
しかし、ハムスターのか細い声では、
家族には届かないようだ。
叫びながら、扉をガタガタと揺らす。
「誰かー!たすけてー!」
誰かに気付いてもらおうと暴れまくるが、
ダメだ・・・家族の寝ている部屋には、
届かないようだ・・・。
諦めて、座り込むと、
急に抗いがたい睡魔が襲って来た。
「寝てる場合じゃないんだ。でも・・・」
俺は深い眠りに落ちて行った。
そして俺は夢を見る。
暖かい日差しの中、草原をかける夢だ。
全身で、風を感じる。
なんて清々しい気分なんだ。
カラカラカラカラカラカラ
妙な音で目が覚める。
「ん?なんだ?この音は」
カラカラカラカラカラカラ
「うわーーー!!」
自分が回し車を4本足で、必死に回していたことに気付く。
俺は何をしているんだーーー!!
自分の行動に強い疑問を感じながらも、
とめられない!!何て気持ちがいいんだーー!!
いつもハムスターがカラカラと回し車を回す姿を見て、
こいつは一体何が楽しくてやってるんだろうなあと
常々思っていたのだが、
まさかこんなに楽しいものだったとは!
どおりで回すはずだ!
「うおーー!とめられねー!」
・・・ひとしきり回った後、
疲れと、ショックで、その場に倒れこんでしまう俺。
俺は・・・人間なんだ・・・。
カリカリカリカリカリ
呆然とした頭に、妙な音が響く。
カリカリカリカリカリ
・・・ん?何だ?この音は。
そして口中に、味わったことのない、
クリーミーで濃厚な甘みが広がる。
今まで食べた、どんな食べ物よりもうまい。
なんだこれは!?ハッと気が付いて目を開けると、
自分の手が、しっかりとヒマワリの種を
掴んでいた事に気付き、俺は愕然とする。
俺はいつの間に、ヒマワリを食っていたんだ?!
しかも、足元に落ちているカラを見るに、
どうやら、無意識のうちに、
歯でカラを割って中身を取り出したようだ。
というか、ヒマワリの種ってこんなにうまいもんだったのか?!
ヒマワリの種のうまさに驚く俺。
いや、驚いてる場合じゃねえ・・・。
これじゃ俺、完全にハムスターじゃないか・・・。
ひどい自己嫌悪に陥る。
でも、ヒマワリの種はうますぎる。
落胆しつつも、食べるのをやめられない。
必死で、ヒマワリの種をたべていると、
檻の外から、ドドドドドという轟音と、
「キャアアアアアアアア!」という女の悲鳴が
響き渡った。
「今度は一体何だ?!」